新たな黒船“Facebook”に備えるmixi(後編)
新たな黒船“Facebook”に備えるmixi(後編)
2010年9月24日TEXT:小川 浩(株式会社モディファイ CEO 兼クリエイティブディレクター)
mixiは世界最大のSNSであるFacebookの本格的な日本上陸に向けて、急ピッチで対策を講じ始めている。前編で述べたように、mixiは臆面もなくFacebookの戦略をコピーしている。名称までも恥ずかしげもなく模倣しているところをみると、完全に開き直っていると言っていいだろう(言い方がキツいからといって、筆者がそれを非難しているとは思わないでほしい。mixiにとってはそれ以外の対処法はあり得ず、恥も外聞も捨てて取り組むしかない。mixiの経営陣はその勇気を持っているという点で評価されるべきだと考える)。
mixiが模倣しているのは、2010年4月21日(米国時間)にf8と名付けられた開発者向けカンファレンスでFacebookが発表した3つのコンセプトだ。それは、SocialPlugin、Open Graph、Open Graph APIの3つである。
まず、SocialPluginを説明する。これはTwitterの@anywhere(Twitterのタイムラインを自分のサイトに表示するために生成されたタグ)に非常に近いアイデアで、簡単なタグを貼付けるだけで自分のサイトをFacebookと連携させることができるというものだ。
次にOpen Graphだが、これはFacebook Connectとして公開されていた機能のブラッシュアップであると言っていい。要はFacebook以外のどんなサイトの情報でもFacebookのソーシャルグラフと連携させることができるというものだ。たとえば好きな映画やレストランの情報や、好きな芸能人などの情報を掲載しているページを、Facebook内の自分の情報とひもづけることでソーシャルグラフを拡大するというものだ。そしてOpen Graph APIを使うことによって、サイトの運営者がOpen Graphを自社サイトに適用することができるようになる。
これらのコンセプトが普及すれば、インターネットのユーザーはどんなサイトを訪問しても、自分の(Facebook内の)ソーシャルグラフを利用して、その訪問先のサイトの情報を自分好みに無意識にカスタマイズすることが可能となる。
そして、mixiが2010年9月に発表した主な戦略は、以下のふたつの技術仕様の公開である。
●mixi Plugin
外部サイトからmixiの機能を呼び出す組み込みタグ。外部のサイトからmixiの各種ソーシャル機能を呼び出すために利用
●mixi Graph API
デジタル家電などにソーシャル性を取り込むためのAPI。マイミクのデータなどを外部のサービスに接続するためのもの
どうだろう?まさしくFacebookのパクリとしかいいようがない。しかし、何度も言うようにこれはミートゥー戦略と呼ぶべきもので、胸を張って誇れるようなものではないにせよ、Facebookの侵略を跳ね返すにはこれしかない。それだけFacebookは強大な敵なのである。プライドを捨ててまで、mixiがこのような戦略を表明していることこそが、Facebookがいよいよ日本市場を手中に収めようと牙を研いでいる証拠なのだ。
mixi Developer Center
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[筆者プロフィール]
おがわ・ひろし●株式会社モディファイ CEO兼クリエイティブディレクター。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)、『仕事で使える!「Twitter」超入門』(青春出版社)、『ソーシャルメディアマーケティング』(ソフトバンククリエイティブ/共著)などがある。