Webとアルゴリズムの密接な関係(前編)
Webとアルゴリズムの密接な関係(前編)
2011年11月21日TEXT:小川 浩(株式会社モディファイ CEO 兼クリエイティブディレクター)
TED(Technology Entertainment Design)をご存じだろうか。米国カリフォルニア州モントレーで年に一回の講演会(TED Conference)を主催している団体だ。2006年以降、講演内容の動画をインターネットで無料配信している。
2011年7月に行われたTEC Conferenceで、非常に興味深い話が紹介されているので紹介したい。
●ケヴィン・スラヴィン 「アルゴリズムが形作る世界」
http://www.ted.com/talks/lang/ja/kevin_slavin_how_algorithms_shape_our_world.html
TEC Conferenceではアルゴリズムへの過度な依存に対する警告がなされているが、ここでは単にアルゴリズムの重要性に対する説明にとどめる。
アルゴリズム。それはテクノロジー業界にいるものならば、もっとも重要な言葉であり概念だ。簡単に直訳すれば計算式、となるが、数学、コンピューティング、言語学などのさまざまなジャンルにおける問題への最適な解答を導くための手順のことであり、単純な計算とはわけが違う。
映画「ソーシャル・ネットワーク」でも、Facebookの開発に先立ってつくった、女性の美醜の比較サイト「フェイスマッチ」のアルゴリズムを、マーク・ザッカーバーグが友人のエドゥアルトにつくってもらうシーンがあるので、アルゴリズムという言葉をそこで知った人も多いかもしれない。
インターネットは巨大な分散型のコンピュータネットワークだが、そのうえで動作する、人間にとってもっとも身近なプログラムであるWebには、現在多くのアルゴリズムが存在している。たとえば、Googleはクエリー(検索したいテキスト)に対する最適な解答を返すアルゴリズムを持つ検索エンジンだ。ただし、現時点でのGoogleは完璧ではない。解答とは質問に対してひとつであるべきだが、現時点のGoogleで検索しても返ってくるのは複数の回答だ。すなわち、検索結果は単なる選択肢にすぎない。Googleのアルゴリズムが行っているのは、その検索結果に優先順位を与えて、検索者の意図になるべく合っているであろう内容を順番に並べることだ。
TED Conferenceでの講演では、金融工学におけるアルゴリズムが完璧であると“誤解”されている、もしくはその検証さえできないことによって、大きな金融危機がもたらされたことについて触れている。その点、Googleが現状検索に対する唯一の解答ではなく、複数の回答の列挙にとどめている“自制”は、彼らが邪悪ではないというひとつの証左であると言えるかもしれない(笑)。
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[筆者プロフィール]
おがわ・ひろし●株式会社モディファイ CEO兼クリエイティブディレクター。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)、『仕事で使える!「Twitter」超入門』(青春出版社)、『ソーシャルメディアマーケティング』(ソフトバンククリエイティブ/共著)などがある。
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