ソシオメディア UX戦略フォーラム 2015 Fall イベントレポート

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ソシオメディア UX戦略フォーラム 2015 Fall イベントレポート


ソシオメディア UX戦略フォーラム 2015 Fall イベントレポート



2015年10月22日
TEXT:ソシオメディア株式会社


ユーザーエクスペリエンス(UX)コンサルティングを行うソシオメディアは、2015年10月7~8日に「UX戦略フォーラム 2015 Fall」を開催した。今回のテーマは「メトリクスの探求」。ジェフ・サウロ氏やチョイ・ジェーヒュン氏をはじめ、国内外から同分野のスペシャリスト7名を迎え、各者の豊富な経験にもとづく事例紹介や課題提起などを展開。昨年から始まったフォーラムのテーマ「UXの最新動向とUX戦略の実践(2014年3月)」、「メトリクスの基本と応用(2014年12月)」、「イノベーションのためのUXマネジメント(2015年5月)」「メソッドの基盤(2015年7月)」に続く5回目として、より実践的な内容にフォーカスしたものとなった。

「ユーザーエクスペリエンスの定量化:メソッド、ROI、そしてNPS」 ジェフ・サウロ氏

「UXの定量化」における世界的な第一人者サウロ氏は初日の講演で、UXメトリクスを測定してその先の活動につなげるプロセスとして、調査したい事象やその要因を数値化して「その"因果関係を実証する"ことが重要である」と強調。ユーザーが実際に行う行動に伴う「アクションに関する指標(例:エラー発生率、タスク達成率など)」だけでなく、その背景にある「アティテュード(態度)に関する指標(例:顧客満足度やNPS(ネット・プロモータ・スコア)など)」に着目した分析を行い、そこからROIを導出する考え方の枠組みを示した。

2日目の講演では、その枠組みを「ベンチマーキング」する観点から詳細に解説。ユーザーに協力を得てメトリクスを計測する際の計画策定や、条件設定、数値分析上の注意点のほか、結果分析に必要なツールなどについて、実際の分析事例を交えながら話した。

ジェフ・サウロ氏
ジェフ・サウロ氏

「顧客ロイヤルティ定量化の考え方」 遠藤直紀氏

遠藤氏は、企業側の論理ではなく顧客を中心とした「カスタマーエクスペリエンス」「CEM(カスタマーエクスペリエンス・マネジメント)」を実践していくことが真の競争優位性を生み、ひいては企業が取り組むべき抜本的施策も導出できるとの考察を示した。また、「測定できないものは管理・改善できない」との前提のもと、顧客ロイヤルティを指標化・定量化する方法論を事例やビデオを交えながら解説。一連の取り組みの先にこそ「ロイヤルカスタマーの創出」があると話した。

「エクスペリエンス最終案内 ~エクスペリエンスの測定とマネジメント」 朝岡崇史氏

朝岡崇史氏は、自身のブランドマネジメント経験や海外事例を複数紹介しながら、「UXを経営事業戦略の柱に据える」考え方について説明した。顧客視点になりきるためのソリューションとしてカスタマージャーニーマップを作成する取り組みを挙げ、マップを通じて「UXを構成する要素を因数分解し、可視化していく」方法論を解説。その結果に基づいてUX指標(KPI)を設定し、さらにゴールとしてUXの経済効果を測るまでのプロセスを紹介した。

「日本における利用品質メトリクスの過去、現在、そして未来」 伊藤潤氏

伊藤氏は、メーカーでの実務経験のほかアカデミック分野で「ユーザビリティ」「製品品質」「利用品質メトリクス」といった研究に深く関わってきた経験を紹介しながら、多数のメトリクスの構造やその事例を解説した。また、現在進行中の取り組みとして、UXと経営指標との関係性を体系化する試みについて説明。今後は、さらに「アクセス解析」「ビッグデータの活用」「リーンスタートアップ」といった分野とのコラボレーションも視野に置くとするビジョンを示した。

「UXインサイト、グローバルユーザーの行動観察から」 チョイ・ジェーヒュン氏

韓国から来日したジェーヒュン氏は、人間工学やデザインに関する知見を活かして実際に取り組んだ国際プロジェクトの事例を中心に講演を進行した。「楽しくなければUXではない」との考えのもと、複数のビデオやイラスト、会場との対話も交えながら、UXを発掘する方法論やその定量化に伴う分析プロセスを説明。ワークショップを活用したアイデア収集や、UX専門家の見解を通じた「イシューリスト」の作成、そこからジャーニーマップを導出する例などを挙げながら、情報分析のからコンセプトメイキングまでの流れを追った。

「行動から態度変容へ:コンセプトダイアグラムで始めるカスタマーアナリティクス」 清水誠氏

データ分析を広く手掛ける清水氏は、自身が提唱する「コンセプトダイアグラム」の方法論を中心に、顧客視点でUXを分析していく手法を解説した。ここで重視されるのは、「どんな人にどうなってほしいかを、ビジネス視点を踏まえてユーザー視点でストーリー化していく」ことであると強調。また、自身が実際に手掛けたプロジェクト内容を紐解きながら、データ取得やExcelなど日常的なツールを使ったデータの可視化、膨大な量のデータをわかりやすく表現するための切り口の見つけ方など、実践上に役立つポイントを多数紹介した。

「ウェブ解析の民主化が社会を変える」 江尻俊章氏

江尻氏は、ビジネスとウェブに関わる網羅的なデータの測定、収集、分析を行う「ウェブ解析士」の役割やそこで用いられる手法を中心に語った。そこで目的とされるのは、ユーザーのふるまいや態度を理解するだけでなく「ビジネスの最適化」につなげること。ワークショップ形式でウェブ解析のスキルアップを行うプロジェクトの紹介をはじめ、例えば「日本ではウェブ解析業務がマーケティング担当者に委ねられる傾向がある一方で、海外では起業家がまずウェブ解析手法を学ぶことも多い」といった国際比較も紹介。今後はUX解析カリキュラムの構築が必要となっていく、とする見解も示した。

パネルディスカッション「UXメトリクスの探求: エクスペリエンス測定手法とデータ解析とのクロスポイント」

フォーラムの最後は、ソシオメディア代表・篠原稔和がモデレーターとなり、登壇者7名全員によるディスカッションが行われた。登壇者同士のQ&Aのなかでサウロ氏は、米国の企業におけるUXメトリクスの業務管轄について言及。「米国では、CXO(チーフ・エクスペリエンス・オフィサー)といった役割を持つ組織も確かに増えてきているが、一方で、異なる領域・異なるスキルに応じた複数チームによる協働が必要になるケースも多い」と解説した。

また、「UXアナリストには行動パターンの分析能力が必要」とし、たとえばGoogleアナリティクスなどの定量分析で「何が起きているか」を把握することと合わせてUX分析を行い、「"なぜ"そのような行動が発生したか」を把握する必要があるとの見解を改めて強調した。

左から篠原稔和(モデレーター)、江尻俊章氏、清水誠氏、伊藤潤氏、朝岡崇史氏、チョイ・ジェーヒュン氏、遠藤直紀氏、ジェフ・サウロ氏
左から篠原稔和(モデレーター)、江尻俊章氏、清水誠氏、伊藤潤氏、朝岡崇史氏、チョイ・ジェーヒュン氏、遠藤直紀氏、ジェフ・サウロ氏

 関連情報:
・次回のフォーラム参加申し込み https://www.sociomedia.co.jp/6545
・UXSFについて https://www.sociomedia.co.jp/uxsf


[筆者プロフィール]
ソシオメディア株式会社●2001年に設立されたUXデザイン・コンサルティングファーム。ユーザーインターフェース設計やユーザビリティ評価を専門に実施。同時に、企業組織やチームへのコンサルティング活動やITスタートアップにおけるリーンアプローチの経験などを活かし、ITとエクスペリエンスデザインに関わる包括的な専門性を用いながら、企業のイノベーションに向けた「UX戦略コンサルティング」の諸活動に注力している。
URL:https://www.sociomedia.co.jp/

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