iPad Proは出すべきではなかったとAppleは数年後に後悔する
iPad Proは出すべきではなかったとAppleは数年後に後悔する
2015年11月24日
TEXT:小川 浩(シリアルアントレプレナー)
TEXT:小川 浩(シリアルアントレプレナー)
Appleが発売したiPad Proを皆さんはどう思うだろうか。
MicrosoftのSurface Bookキラー? タブレットとノートブックのいいとこどり?
iPad Proという単体の製品の良し悪しはまずおいて(もちろんiPad Proは良い製品だが)、僕はAppleという企業にとって、この製品を加えたことは、これまでの強みや戦略をぶち壊していく、いくつかの大きな間違いのひとつであると考える。
まず、iPadという製品ラインアップをみてみよう。
iPad Pro
iPad Air 2
iPad Air
iPad mini 4
iPad mini 2
どうだろう?
iPad AirとiPad miniが、どちらが薄くて軽いのか、小さいのか、即座に分かる人はいるだろうか?
スティーブ・ジョブズが復帰する前のAppleの製品ラインナップは100を超えていた。それがユーザーを混乱させ、購入する際にいたずらに迷わせ、決断を鈍らせていた。また、広告やセールスプロモーションでも製品が多すぎて、効果が分散してしまっていた。だからジョブズは消費者向けのノート(iBook)プロ向けのノート(PowerBook)消費者向けのデスクトップ(iMac)プロ向けのデスクトップ(PowerMac)の4に絞り込み、シンプルなラインナップを消費者に提示した。
もちろんその後、iPodやiPhoneなどの製品が増えるに従って、製品ラインナップは複雑に増えてくるのだが、それでも商品の特性がかぶったり曖昧になる商品を出すことは、ジョブズ時代にはなかったことだ。
少なくともジョブズ時代のAppleは、自らの創造性から生み出した製品のみ商品化してきたが、ここ数年のAppleは反射的、つまりマーケティング戦略上、ライバル会社の製品の対抗上の商品リリース、というのが非常に多く、AppleをAppleたらしめている強みをスポイルし始めていることは否めない。
例えば7インチのiPad miniについては僕は以前、こう書いた。
「iPad miniはジョブズの遺志に添うものか?」(2012年10月29日公開)
「僕にはこの7インチタブレット市場がそれほど大きくなるとは思えない。4インチのiPhoneと9.7インチのiPadの間の市場は、相当にニッチであると僕は考える。Appleの狙いは大きな売上というよりは、SamsungやGoogle潰しであり、マーケティング戦略上生まれた製品であるのだろう。それはジョブズならば、やはり決して実行しなかった製品投入の手法のように思う」
「Appleはフォーカスを失ってiPhone miniを発売するか?」(2013年1月7日公開)
「Appleの不幸は、iPad miniがそれなりによい筐体であり、なまじ成功してしまっていることだ。それがAppleをしてフォーカスを失わせ、ブランド拡張の罠にみずからを落とし込む。短期的な成功が長期的な成功の可能性を蝕むのである」
ティム・クックがどう説明しようと、iPad ProはMicrosoftのSurface Book潰しの商品であり、キーボードとスタイラスを使うことを推奨した時点で、それはiPadではない。iPad Pro自体が良い製品かどうかは関係なく、製品ラインナップの混乱と、競合他社の製品への対抗商品を作るという、凡庸な企業戦略に囚われた時点でAppleは緩やかな衰退に向かっていると考えるべきである。
思うにAppleは一刻も早く、再びクリエイションに情熱を持つパワフルなCEOを向いいれるべきだろう。ティム・クックはスカリーやスピンドラーらと同じ、マーケティングや流通に長けていたとしても、クリエイターではない。Appleに求められているのは創造性であって効率的な経営や、競合企業の刺激に対する反射神経ではないのだ。
MicrosoftのSurface Bookキラー? タブレットとノートブックのいいとこどり?
iPad Proという単体の製品の良し悪しはまずおいて(もちろんiPad Proは良い製品だが)、僕はAppleという企業にとって、この製品を加えたことは、これまでの強みや戦略をぶち壊していく、いくつかの大きな間違いのひとつであると考える。
まず、iPadという製品ラインアップをみてみよう。
iPad Pro
iPad Air 2
iPad Air
iPad mini 4
iPad mini 2
どうだろう?
iPad AirとiPad miniが、どちらが薄くて軽いのか、小さいのか、即座に分かる人はいるだろうか?
スティーブ・ジョブズが復帰する前のAppleの製品ラインナップは100を超えていた。それがユーザーを混乱させ、購入する際にいたずらに迷わせ、決断を鈍らせていた。また、広告やセールスプロモーションでも製品が多すぎて、効果が分散してしまっていた。だからジョブズは消費者向けのノート(iBook)プロ向けのノート(PowerBook)消費者向けのデスクトップ(iMac)プロ向けのデスクトップ(PowerMac)の4に絞り込み、シンプルなラインナップを消費者に提示した。
もちろんその後、iPodやiPhoneなどの製品が増えるに従って、製品ラインナップは複雑に増えてくるのだが、それでも商品の特性がかぶったり曖昧になる商品を出すことは、ジョブズ時代にはなかったことだ。
少なくともジョブズ時代のAppleは、自らの創造性から生み出した製品のみ商品化してきたが、ここ数年のAppleは反射的、つまりマーケティング戦略上、ライバル会社の製品の対抗上の商品リリース、というのが非常に多く、AppleをAppleたらしめている強みをスポイルし始めていることは否めない。
例えば7インチのiPad miniについては僕は以前、こう書いた。
「iPad miniはジョブズの遺志に添うものか?」(2012年10月29日公開)
「僕にはこの7インチタブレット市場がそれほど大きくなるとは思えない。4インチのiPhoneと9.7インチのiPadの間の市場は、相当にニッチであると僕は考える。Appleの狙いは大きな売上というよりは、SamsungやGoogle潰しであり、マーケティング戦略上生まれた製品であるのだろう。それはジョブズならば、やはり決して実行しなかった製品投入の手法のように思う」
「Appleはフォーカスを失ってiPhone miniを発売するか?」(2013年1月7日公開)
「Appleの不幸は、iPad miniがそれなりによい筐体であり、なまじ成功してしまっていることだ。それがAppleをしてフォーカスを失わせ、ブランド拡張の罠にみずからを落とし込む。短期的な成功が長期的な成功の可能性を蝕むのである」
ティム・クックがどう説明しようと、iPad ProはMicrosoftのSurface Book潰しの商品であり、キーボードとスタイラスを使うことを推奨した時点で、それはiPadではない。iPad Pro自体が良い製品かどうかは関係なく、製品ラインナップの混乱と、競合他社の製品への対抗商品を作るという、凡庸な企業戦略に囚われた時点でAppleは緩やかな衰退に向かっていると考えるべきである。
思うにAppleは一刻も早く、再びクリエイションに情熱を持つパワフルなCEOを向いいれるべきだろう。ティム・クックはスカリーやスピンドラーらと同じ、マーケティングや流通に長けていたとしても、クリエイターではない。Appleに求められているのは創造性であって効率的な経営や、競合企業の刺激に対する反射神経ではないのだ。
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[筆者プロフィール]
おがわ・ひろ●シリアルアントレプレナー。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)、『仕事で使える!「Twitter」超入門』(青春出版社)、『ソーシャルメディアマーケティング』(ソフトバンククリエイティブ/共著)などがある。
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