最高益に隠れるiPhoneの失速、iPhone販売台数回復の方策は何か?(後編)

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最高益に隠れるiPhoneの失速、iPhone販売台数回復の方策は何か?(後編)


最高益に隠れるiPhoneの失速、iPhone販売台数回復の方策は何か?(後編)

2016年4月15日
TEXT:大谷和利(テクノロジーライター、原宿AssistOnアドバイザー)


●最高益に隠れるiPhoneの失速、
 iPhone販売台数回復の方策は何か?(前編)はこちら

【前回のあらすじ】
このところのiPhoneの販売と、それに直結した生産が低迷しているとの報道が相次いでいる。減速傾向にある中国経済の影響もさることながら、いかに革新的で市場を切り拓いてきた製品といえど、ある程度行き渡ってしまえば、いつまでも新規需要を頼りにして上り調子を続けるわけにはいかない。また、モデルチェンジのたびに話題性のある機能を付加するにも限界がある。そこでアップルが打ち出した戦略はユーザー体験を重視するという同社の原点に立ち返り、前例のある機能でも3D Touchのような操作方法を組み合わせて新たな価値を生み出すことにあった。後編ではさらに掘り下げて言及していこう。



アップルとしては、標準でLive Photosを撮影できるiPhone 6s/6s Plusを販売したいのはやまやまだが、それと並行してLive Photosという体験を、旧機種も含めて普及させたい意向を持っていると考えられる。

6秒動画共有サービスのVineが、ショートビデオコミュニケーションを急速に浸透させ、様々な「映像トリック」を生み出すきっかけとなったり、企業の「広告戦略」にまで影響を与えたことは記憶に新しい。静止画+3秒動画のLive Photosも、新しい映像表現やWebコマーシャルのアイデアを生み出す可能性は大いにあろう。

新機種のマーケティングを考えると、旧機種でもLive Photosの撮影や再生に対応できることには、諸刃の剣的な危険も感じられる。しかし、すでにTumblrやFacebookもLive Phorosのアップロードや再生に対応しており、ストックメディアサービス最大手のゲッティ イメージズも取り扱いを始めた。こうした流れの中でLive Photosに魅力を感じる個人や法人が増えるなら、その撮影デバイスとしてのiPhoneに興味を持つ潜在層も増加させられるかもしれない。

アップルは、多かれ少なかれ以前からそういう傾向にあったが、機能そのものよりも、それによって得られる体験を重視するメーカーである。そして、機能が飽和するにつれて、相対的に体験を深化させる方向性が強まった。

iPhoneの次世代モデルでは、デュアルカメラを搭載し、3Dイメージのキャプチャや後からフォーカスを変更できる機能を追加するのではとも噂されている。だが、どちらもすでにデジタルカメラや他社のスマートフォンで実現済みの機能であり、今後は、完全に新しい機能性を付加し続けることがますます難しくなっていくと予想される。

だからこそアップルは、自社製品が作り出すトータルな体験の中に消費者が加わりたくなるような環境を、エンターテイメントはもちろん医療、教育など多方面に渡って整えることで、売り上げの維持(あるいは拡大)を図ろうとするはずだ。

CEOのティム・クックが打ち出したiPhoneの最重点市場の中国からインドへのシフトも、スマートフォン人口が爆発的に増えつつあることに加えて、レガシー的な技術や環境が普及してこなかった新興国のほうが、こうした体験を浸透させやすいからとも思える。

インドの経済の中心地であるムンバイのビルボード広告では、ホンダもハイブリッドのようなエコ技術ではなくスマートフォンとつながることをアピールし、急速に進行するモバイル化を睨んでアマゾンもブラウザではなくアプリを介したeコマースの普及に注力している
インドの経済の中心地であるムンバイのビルボード広告では、ホンダもハイブリッドのようなエコ技術ではなくスマートフォンとつながることをアピールし、急速に進行するモバイル化を睨んでアマゾンもブラウザではなくアプリを介したeコマースの普及に注力している

先に触れた性能や機能の飽和状態を考えるならば、iPhoneの販売台数が、(新機種発売当初の瞬間最大風速的な数字を除けば)過去のピーク時を超えることは、もうないかもしれない。だとしても、総じて言えるのは、アップルは多少時間をかけてもトータルなユーザー体験を軸にして新興国を含めた需要の掘り起こしに努め、一定以上の販売数を維持できるような体制を整えるために知恵を絞り、有効と思える手段を講じることだ。

インドのITやデザイン分野の現状に関しては、個別の記事としてもう少し掘り下げるつもりだが、アップルにとっては、市場のみならず研究開発の拠点としても、これからとても重要な役割を果たすことは間違いないと考えている。



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[筆者プロフィール]
おおたに・かずとし●テクノロジーライター、原宿AssistOn(http://www.assiston.co.jp/) アドバイザー。アップル製品を中心とするデジタル製品、デザイン、自転車などの分野で執筆活動を続ける。近著に『iPodをつくった男 スティーブ・ ジョブズの現場介入型ビジネス』『iPhoneをつくった会社 ケータイ業界を揺るがすアップル社の企業文化』(以上、アスキー新書)、 『Macintosh名機図鑑』(エイ出版社)、『成功する会社はなぜ「写真」を大事にするのか』(講談社現代ビジネス刊)。

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