第2回「SVG女子」 - WEBクリエイティブの舞台裏

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新しく生まれるプロジェクトには、多くの人が見る「完成図」の裏側に、そこに至るまでの多くの人々の考えやアクション、努力がある。とかく人気クリエイターにスポットがあたりがちなクリエイティブの世界で、プロジェクト全体を俯瞰し、その舞台裏を通じてプロジェクトそのものに焦点をあてるのが本連載「WEBクリエイティブの舞台裏」である。


第2回「SVG女子」



SVG女子



マイクロソフト「Internet Explorer 9」(以下、IE9)のリリース・プロモーションとして公開された「SVG女子」は、SVGフォーマットを駆使したアニメーションが楽しめるWebサイトだ。最新ブラウザの性能を伝えるべく、HTML5やJavaScriptなど各種テクノロジーを取り入れた画期的なコンテンツといえよう。今回は、この企画に携わった日本マイクロソフト株式会社のエバンジェリストである春日井良隆氏(左写真)、そして制作を手がけた面白法人カヤックのディレクター片岡巧氏(右写真-右)とエンジニアの吾郷協氏(あごう きょう、右写真-左)に、その制作の舞台裏を明かしてもらおう。


春日井良隆氏片岡巧氏と吾郷協氏





「楽しむ」という発想がないと、絶対にうまくいかない。


──そもそもプロジェクトのきっかけは?


春日井●IE9β版のローンチが2010年9月17日だったのですが、その際に本社から「IE9の能力とHTML5を活かしたプロモーションコンテンツをつくりたい」という相談を持ちかけられました。本社からのリクエストは「とにかくおもしろいもの」くらいしかなかったので、せっかく日本から出すなら、日本を連想するもの――私の発想では京都とか侍とか、それくらいしかイメージできなかったのですが、とにかく「日本」をテーマにHTML5とその周辺技術を使ったコンテンツをつくろうと考えたのが、最初のきっかけでした。


──なぜカヤックさんに声をかけたのですか?


春日井●いろいろ周囲に相談したんです。制作会社をピックアップして、そのなかから直接お声がけして話に乗ってくれるところを探した。その一社がカヤックさん。HTML5で盛り上がっているけど、実際につくるとなると技術面で「うちはちょっと…」と及び腰の制作会社が何社かありましたね。やはりおもしろがって協力してくれる制作会社でないと、このプロジェクトは絶対うまくいかないと思って、最終的に3社ピックアップさせていただいた。で、カヤックさんに出していただいた企画は、SVGというフォーマットを使って、ポップなジャパニメーションをつくろうという内容。もうひとつがビジネス・アーキテクツさんの「The Shodo」という書道を題材にした日本トラディショナルな企画。これはいけるなと思って、最終的にその2社へお願いしました。



The Shodo
The Shodo


片岡●カヤックは「jsdo.it -Share JavaScript, HTML5 and CSS -」というサービスを運営してまして、それを専門誌で掲載していただいてたのですが、専門誌の編集長が春日井さんとお知り合いだったんです。で、たまたまIE9のβ版を出すタイミングで、こういうプロジェクトがあって春日井さんが制作会社を探していると。それで声をかけていただいたんですね。


春日井●jsdo.itはアドビシステムズさんと共同でプロモーションしていましたよね。あとGoogleさんとも。あの企画が楽しそうだったので、うちもちょっと仲間に入りたいなと(笑)。



jsdo.it
jsdo.it -Share JavaScript, HTML5 and CSS -


──Webサイトの企画の発想はどなたが?


片岡●カヤックでは企画を出すとき、必ずブレストを行います。ブレストの段階から「漫画」という切り口はあるよね、という話をしまして。そこから、SVGを使ったアニメーションはできないかな? とエンジニア・デザイナー・ディレクターが集まって企画を出しました。


──やはりみなさん漫画がお好き?


片岡●漫画はこれまでの案件でも取り扱うことが多かったのですが、特に吾郷が好きで……。


──吾郷さんも企画段階から?


吾郷●私は前担当のエンジニアからバトンタッチする形で入りました。最初のころの企画は社内で共有はしていたのですが、ブレストの段階では参加していませんでした。


──でも、燃え上がるものがあって?


吾郷●そうですね。前担当のエンジニアと同じく、私も漫画が結構好きなので。デバックして再起動という作業も全然苦にならなかったくらいです(笑)。


春日井●海外でも日本のアニメや漫画は人気なんですよね。本屋さんにもふつうにNARUTOとか置いてありますし。印象的なのは、3年前に社員同士で飲んでいるとき、メキシコ人とフランス人と私の3人がテーブルで一緒になったんです。共通の話題は音楽や映画なんだけど、いつのまにかアニメの話になって、フランス人は「俺は子供のころ、グレンダイザーが大好きだった」と。フランスでは当時、マジンガーZのシリーズが流行していたんですね。もうひとりのメキシコ人は「マクロスで人生が変わった」と。日本でもマクロスはともかく、グレンダイザーはなかなか出てこない(笑)。アニメはワールドワイドで共通のコンテンツなんだな、と実感しました。


──プロモーションとしての成果をどう見ていますか?


春日井●数字的な成果はいままとめているところですが、感触的には大成功。そもそも数値的な目標ありきの企画って、おもしろくないんですよ。見たこともないコンテンツで世間を驚かせてやろう、HTML5ってこんなことができるんだと知ってもらおう、ついでにIE9もインストールしてもらおう――そんな感じです(笑)。だから、また今後もやりたいですね。誰もやってないことを、いちばん最初に。



春日井氏と片岡氏と吾郷氏


──カヤックさんとしては?


片岡●すごく楽しかったです。マイクロソフトさんにもたくさんサポートしていただいて。HTML5やSVGといった未知の領域への挑戦も、積極的にお付き合いいただいたんです。jsdo.itというカヤックのサービスと連携できたのも嬉しかったですね。今回のようなプロジェクトは通常、クライアントサービスチームが担当させていただくのですが、jsdo.itチームと混合で進めることができたのも楽しかったですよ。


春日井●Webサイトを確認しているとき、周囲から「なんか楽しそうなことしてるね」って言われてました。楽しげなアニメーションが映って、軽快な音楽が流れているんですから当然ですよね(笑)。


片岡●うちのデザイナーも言われてましたね。「ずっと萌えアニメ見てるねー、なに見てるの?」って(笑)。ローンチまで、内容を知らない人はまったく知らなかったですから。


吾郷●当時、ほかにもアニメ系のコンテンツ案件があったから、ほんとカヤックってなんの会社なのかなと思ったり(笑)。


──未知の領域で、不安はなかったですか?


片岡●不安はなかったです。むしろ、やりたいやりたいと。逆に未知の領域だったからこそ、こういうことを提案できたともいえますね。


春日井●さきほども言いましたが、この手のものは最初に楽しむという発想がないと、絶対にうまくいきません。未知の領域だからこそ、誰も保証なんてできないんです。




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エイクエント

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エイクエントは、1986年米国ボストンで設立、現在世界7カ国に拠点を持ち、マーケティング、デザイン専門の人材エージェンシーとしては世界最大級です。そのネットワークと世界各地で培われたノウハウが、多くのスペシャリストの皆様から厚い信頼と高い評価を受けています。マーケティング、デザイン分野でお仕事をお探しの皆さまはぜひご連絡をください。

URL:http://www.aquent.co.jp/

「WEBクリエイティブの舞台裏」はクリエイティブ専門の人材エージェント「エイクエント」の提供でお送りします。


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