Adobe MAX Japan 2009レポート(1)

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Adobe MAX Japan 2009レポート(1)





私たちクリエイターの仕事はアドビシステムズの製品がないと成り立たないといっても過言ではない。アドビシステムズの方針によっては、作業の進め方やデザインの考え方を変えなければならないこともあるだろう。インターネットの技術に依存しているWebの仕事は特に影響が大きいだけに、Adobe MAX Japan 2009はWebデザイナーやクリエイターにとっても重要なイベントだ。一大プラットフォームと化しているFlashや急速に普及しているAdobe AIRには注目しなければならないし、モバイル対応やRIAのトレンドについても見ておく必要がある。今回は、基調講演、Flash、 Dreamweaverなどのセッションを中心にレポートする。
(取材・文=境祐司)





[著者プロフィール]
境祐司(インストラクショナルデザイナー)●企業の教育プラン、マネジメント、講演、書籍執筆など。学校法人阿佐ヶ谷学園 高度情報化研究所所長。著書に『スタイルシートデザインのネタ帳』(監修)MdN、『速習Webデザイン Dreamweaver CS3』技術評論社、『Webデザイン&スタイルシート逆引き実践ガイドブック』ソシム、『Flash逆引きデザイン辞典』(共著)翔泳社、『Making a Rule for Web Design』ソーテック社、『CSSビジュアルデザイン・メソッド』毎日コミュニケーションズなど。
url. http://admn.air-nifty.com/monkeyish_studio/
Lifestream. http://friendfeed.com/monkeyish/



(1)2009年は“変革”と“機会”の1年に



アドビシステムズが構築する大規模なエコシステム


2009年1月29~30日の2日間、東京・お台場でアドビシステムズによるクリエイターおよび開発者向けのカンファレンス「Adobe MAX Japan 2009」が開催された。初日の基調講演には、米Adobe SystemsのCTOであるケビン・リンチ氏が登壇、3つのテーマ「クライアント+クラウド(Client+Cloud)」、「ソーシャルネットワーキング(Social Networking)」、「デバイス+デスクトップ(Devices+Desktop)」を提示し、各テーマごとにデモンストレーションを実演しながら進行した。


Adobe MAX 2009 Japanが開催された東京・お台場の「ホテル グランパシフィック LE DAIBA」。華々しくスタートした基調講演のオープニング
アドビシステムズには、FlashをはじめとしてDreamweaver、Photoshop、Illustrator、InDesign、 Premiere、After Effects、Acrobatなど、多くのクリエイティブ系アプリケーションソフトがあり、Webからビデオ、印刷などさまざまな業界で標準ツールとして使用されている。デザイナーやクリエイターといった肩書きをもつ人の多くは、アドビシステムズ製品のユーザーだといってよいだろう。さらに、Flex BuilderやLiveCycle Designerなどの開発総合環境、デザイナーと開発者の協業を実現させるFlash Catalyst(現在はプレビュー版)など、クリエイティブからエンタープライズまで幅広い領域をカバーし、Adobeプラットフォームなる大規模なエコシステムを構築しようとしている。

ケビン氏は、基調講演の冒頭で「変革と機会の時を迎えようとしている」と述べた。現在、金融危機による実体経済の悪化、節目を迎えつつあるテクノロジー革新、自然環境やエネルギー、発展途上国が抱えるさまざまな問題がある。2008年11月にサンフランシスコで開催された「Adobe MAX 2008」では、途上国支援プロジェクト「RED」(http://www.joinred.com/)が紹介された。このプロジェクトの配信サイト「(RED)WIRE」(http://www.joinredwire.com/)にはAdobe AIRが採用されている。世界で起こっている数々の問題解決のため、Flashテクノロジーの役割というのは今後さらに重要度を増していくだろう、と語った。


「世界にはさまざまな問題がある。アドビシステムズが提供するテクノロジーやインターネットの力で解決できることもあるはずだ」と、アドビシステムズのビジョンについて語るケビン・リンチ氏


シングルからマルチスクリーンの時代へ


今回の講演で繰り返し強調していたのは「シングルスクリーンの時代は終わった」ということである。インターネットの恩恵を享受できるのは、PCだけではない。携帯電話、スマートフォン、携帯ゲーム機、テレビなど、インターネットに接続できるデバイスは急速に増えている。アドビシステムズが推進している「OSP:Open Screen Project」(2008年5月に設立、業界大手の20社が参加)では、あらゆるネットワークデバイスに統一的なエクスペリエンスを提供しようとしている。現在は、PC版のFlash、モバイル版のFlash Liteといったようにバージョンを分けて提供しているが、これを統一し、PCからモバイル、テレビ、その他の家電まで一貫したFlashの開発環境を実現させるのが狙いだ。


「ひとつのスクリーンの時代は終わり、これからはマルチスクリーンへ」ケビン氏は、さまざまなスクリーンにFlashを提供したいと語った

あらゆるネットワークデバイスにコンテンツを提供できるのは素晴らしいことだが、疑問もある。2008年の大きなトレンドとして「ネットブックの普及」を挙げることができるが、製品の大半は安価でそこそこのCPUを備えたハンドヘルド型PCだ。これらの端末は、Flash技術を駆使したリッチコンテンツの利用には少々問題がある。要するに、重た過ぎて処理落ちしてしまうのだ。この疑問については、講演中盤のプレゼンテーションでひとつの解答を提示してくれた。Adobe AIR 1.5で開発されたNew York Times 国際版(International Herald Tribune)のデスクトップアプリケーションをMID(Mobile Internet Device)上で動かしたのである。このアプリケーションは、ウインドウサイズの可変にあわせて自動的に記事のレイアウトを調整するというアジャスタブルな仕様になっており、インタラクティブな仕組みや高品質ビデオの統合など、高度な処理をおこなっている。つまり、Adobe AIR 1.5の段階でMIDレベルのハードウエアでも十分に機能しているということを示したのである。


Open Screen Project(http://www.openscreenproject.org/)のWebサイトと現在公開されているコンセプトビデオ。PCでも携帯電話でも、同じサービスを提供できる仕組みを構築していくのが目的

Future Mobile Experienceの実現



アプリ開発をモバイル重視のアプローチで


基調講演の後半、ケビン氏は「携帯電話は世界でもPCを超えたものになってきている。インターネットに接続されている端末をみると、PCの割合は大きくない」と述べ、情報端末の割合を示したスライドを表示した。続けて、「PCをまったく使わず、インターネットにアクセスする世代が登場してくる可能性がある。これは大きな変革になる。アプリケーションのデザインも考え直さなくてはならなくなるだろう」とコメントした。さらに、コンテンツ制作に関わるとても興味深い提案を示した。「まずは、モバイル重視というアプローチをとることが必要ではないか。モバイルでしっかり動くデザインをおこなってから、PCなどに対応させるという流れが常套手段だと考えている」と述べたのである。ここで言う「モバイル重視」というのは、あらゆるネットワークデバイスに統一的なエクスペリエンスを提供するためのひとつの考え方だといえるだろう。


インターネットに接続されている情報端末の割合をみると、携帯電話が圧倒的な数。PCの割合はそれほど大きくない

アドビシステムズの試みと一致するNTTドコモのAIR×ケータイ


このプレゼンテーションの後に登壇したのが、NTTドコモの執行役員プロダクト部長である永田清人氏である。NTTドコモは、アドビシステムズが推進するOpen Screen Projectのメンバーだ。永田氏は、「アドビシステムズのOSPは、NTTドコモが将来やっていきたいこととマッチしている。具体的にはAdobe AIRの技術を導入することによって、新しいエクスペリンスを提供したい」と述べた。「AIR+ケータイ」と題したデモンストレーションでは、Adobe AIRに対応した携帯電話の活用イメージを提示し、電波をキャッチできない場所でも利用できるオフラインモードなどの事例を紹介した。ここでも繰り返し強調していたのは、「携帯電話でもPCでも、デバイスの種類を気にせずに同じサービスを提供する」ということである。


NTTドコモの永田氏とアドビシステムズのケビン氏によるフォトシェアリングシステムのコラボレーション。AIRアプリを使って写真を共有するデモ

Flash Player 10とAdobe AIR 1.5の動向に注目


あらゆるデバイスで同じサービスを提供するには膨大なコストと時間を要するが、アドビシステムズが提供する開発ツール、フレームワーク、クライアント、サーバが統合されたエコシステムを活用することで、アプリケーション開発が容易になるという。そして、Adobeプラットフォームの中核にあるのは、 Flashであり、Adobe AIRである。この日、Adobe AIRランタイムのインストール数が世界で1億を達成したという発表があった。Flash Player 10も出荷からわずか2カ月で世界のPCの55%以上にインストールされた計算だ。あらゆるデバイスで動くアプリケーション開発を実現するための土台づくりが着々と進んでいるように感じられる。

今、私たちが注視していかなくてはならないことは、Flash Flayer 10およびAdobe AIRの動向である。今、何が行われていて、どのように評価されているのか大まかに把握しておく必要がありそうだ。今回の基調講演でも、New York Timesのニュースリーダーや神奈川県宅建協会の不動産物件情報システム(KTツール)など、企業の先進的な取り組みが紹介されたが、最新事例はアドビシステムズのWebサイトで収集できる。まずは、Adobe AIR(http://www.adobe.com/jp/products/air/)やAdobe Labs(http://labs.adobe.com/)のWebサイトなどを見ておくとよいだろう。私たちの仕事がこれからどう変わっていくのかイメージできるかもしれない。


Adobe Labsで視聴することができるAdobe Flash Catalystの紹介ビデオ(http://labs.adobe.com/technologies/flashcatalyst/)。Flash Catalystは、デザイナーと開発者の協業を可能にするアプリケーションだ


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