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最新アート&デザイン情報

2020.08.05 Wed

コロナ禍で開催されるアートの祭典をライターがレポート

コロナ、人種問題etc.“いま”を体感できる「ヨコハマトリエンナーレ2020」

取材・文:中村美枝(JAM SESSION) 撮影:編集部

3年に一度開催され、今回で7回目を迎える現代アートの国際展「ヨコハマトリエンナーレ2020」(略称ヨコトリ)。新型コロナウイルスの影響で日常が変わり始めている今だからこそ、新しい生活様式のきっかけに……と、2週間ほど日程が遅れながらも、あえて開幕した。世界に先駆け、コロナ禍で行われる芸術祭とは?ライターがふたつのメイン会場をレポートします。

2020年、“ヨコトリ”のタイトルは……?

ラクス・メディア・コレクティヴ
撮影:田中雄一郎
写真提供:横浜トリエンナーレ組織委員会

今回は、「AFTERGLOW-光の破片をつかまえる」をタイトルに、国内外約70組のアーティストが参加。アーティスティック・ディレクターは、インドを拠点に活動する3人組のアーティスト集団ラクス・メディア・コレクティヴ(以下、ラクス)。移動や物流が制限されるなか、度重なるミーティングも設営もリモートを中心に行われた。
 

鑑賞にあたって知っておきたいのが、ラクスが芸術祭の源泉として掲げた「5つのキーワード」

「独学」自らたくましく学ぶ
「発光」学んで得た光を遠くまで投げかける
「友情」光の中で友情を育む
「ケア」互いを慈しむ
「毒」世界に否応なく存在する毒と共存する

コロナ、人種問題などにもつながるキーワードは、まるで世界の人々が直面している“いま”を予見していたかのよう。そんなキーワードを意識しながらアートを楽しみ、現在と未来に思いをめぐらせてみたい。

体験レポート / 横浜美術館 編

ニック・ケイヴ《回転する森》2016(2020年再制作) ©Nick Cave ヨコハマトリエンナーレ2020展示風景

まずは会場のひとつ「横浜美術館」へ。入口で検温、手指の消毒を済ませて館内に入ると、アフリカ系アメリカ人アーティスト、ニック・ケイヴの《回転する森》がお出迎え。吹き抜けホールの天井から、アメリカの住宅の庭に飾られる“ガーデン・ウインド・スピナー”がたくさん吊るされ、きらめく空間に心が躍らされる。しかし、よく見ると、花や星に混じって、銃や弾丸をモチーフにしたものも。アメリカ社会の複雑さを深く感じさせられた。
 

竹村京《修復されたY.N.の祖 母のキティちゃんの貯金箱》2018 ©Kei Takemura ヨコハマトリエンナーレ2020展示風景
《修復されたG.美術館のマジックペン》2019 ©Kei Takemura ヨコハマトリエンナーレ2020展示風景
《修復されたK.O.の 電卓》2019 ほか ©Kei Takemura ヨコハマトリエンナーレ2020展示風景

横浜美術館では約40組の作品を展示。印象的だったのが、群馬を拠点に活動する竹村京の作品。壊れたカップや時計、電球を発光クラゲの遺伝子を組み込んだカイコによる蛍光シルクの糸で修復した作品50点が暗闇の中に並ぶ。これらの作品には「傷を負った心こそが光を放つ」とのメッセージを込めているという。思い出を宿す、大切にしたいモノへのあたたかな気持ちがじんわり伝わってきた。

キム・ユンチョル《クロマ》2020 ©Kim Yunchul ヨコハマトリエンナーレ2020展示風景
ズザ・ゴリンスカ《助走》2015(2020年再制作) ©Zuza Golińska ヨコハマトリエンナーレ2020展示風景
エヴァ・ファブレガス《からみあい》2020 ヨコハマトリエンナーレ2020展示風景

館内にはほかにも、未知の生命体のようなキム・ユンチョル《クロマ》、靴を脱いで歩くことで足でも作品を感じられるズザ・ゴリンスカ 《助走》、巨大な腸を思わせるエヴァ・ファブレガスの《からみあい》など、個性的な作品が続々と。各作品に添えられた、ラクスによる解説も鑑賞をより楽しいものにしてくれる。
 

体験レポート / プロット48 編

デニス・タン(陳 文偉)《自転車ベルの件》2020 ヨコハマトリエンナーレ2020展示風景

次に向かったのは、もうひとつのメイン会場「プロット48」。入口で目に入ったのが、デニス・タン《自転車ベルの件》。木に吊るされた自転車のベルをチリンチリンと鳴らして館内に入っていくと、横浜美術館はじっくり考えさせられる作品が多い印象だったのに対し、プロット48は感性を解き放ってくれるポップな空間が広がる。

ファラー・アル・カシミ《ジャジラ・アル・ハムラ 2020》2020 ©Farah Al Qasimi Courtesy of The Third Line and Helena Anrather ヨコハマトリエンナーレ2020展示風景
ファラー・アル・カシミ《ジャジラ・アル・ハムラ 2020》2020 ©Farah Al Qasimi Courtesy of The Third Line and Helena Anrather ヨコハマトリエンナーレ2020展示風景

イスラム神話の魔神に着想を得た、アブダビ生まれのファラー・アル・カシミの《ジャジラ・アル・ハムラ 2020》は、建物のレトロなムードと不思議なほど調和。

エレナ・ノックス《ヴォルカナ・ブレインストーム(ホットラーバ・バージョン)》2019, 2020 ©Elena Knox 2020 Courtesy of the artist and Anomaly Tokyo ヨコハマトリエンナーレ2020展示風景

隣のスペースには、オーストラリア出身エレナ・ノックスの《ヴォルカナ・ブレインストーム(ホットラーバ・バージョン)》が。彼女が提示する「どうすればエビをセクシーな気分にさせられるのか」というテーマのもと集められた、さまざまなアーティストや、過去のワークショップで制作された作品を展示。多彩なアートに、エロスを感じたり、顔をほころばせたり……、エビから広がるユニークな試みにワクワクするばかり。

家からも楽しめる!?オンラインでの取り組みにも注目

ヨコハマトリエンナーレ2020 プレイベント「エピソード00 ソースの共有」 新宅加奈子 パフォーマンス「I’m still alive」 撮影:加藤甫 写真提供:横浜トリエンナーレ組織委員会

「ヨコハマトリエンナーレ2020」では、オンラインを活用したプログラムも充実。昨年11月にスタートし、次回のトリエンナーレまで続くプロジェクト「エピソード」を配信している。会期中は、ワークショップ、トークイベントといった参加型イベントもオンラインで行われる予定だ。恒例のボランティアガイドも今回はネットにて配信。新型コロナウイルス感染拡大防止にともなう新たな挑戦にも注目して、今だからこその芸術祭を存分に楽しもう。

DATA
※会期、チケット情報などの詳細や最新の開催状況は公式サイトにてご確認をお願いします※

イベント名ヨコハマトリエンナーレ2020「AFTERGLOWー光の破片をつかまえる」
会期~2020年10月11日(日)
施設名横浜美術館、プロット48
住所横浜美術館 横浜市西区みなとみらい3-4-1
プロット48 横浜市西区みなとみらい 4-3-1
アクセス横浜美術館 みなとみらい線「みなとみらい駅」3番出口より徒歩3分
プロット48 みなとみらい線「新高島駅」2番出口より徒歩7分
問い合わせ先050-5541-8600(ハローダイヤル)
公式サイトhttps://www.yokohamatriennale.jp/
備考※チケットは日時指定の予約制
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