Webデザイナーが欲しがる
クリエイティブなディスプレイとは?

驚異の実力!
知られざるBenQデザイナー向けディスプレイ
「PD2700Q」の正体

Webデザイナーが欲しがるクリエイティブなディスプレイとは?

驚異の実力!知られざるBenQデザイナー向けディスプレイ
「PD2700Q」の正体

BenQが今春に発売したPC用ディスプレイ「PDシリーズ」は、デザイナー向けと銘打った少々風変りな製品だ。ここでは、PDシリーズのエントリーモデル「PD2700Q」を、Web制作の現場で活躍するデザイナーに試用してもらい、そのインプレッションを交えつつ特徴を紹介していこう。

BenQのディスプレイは、PC向けの汎用タイプを主力にしつつ、ゲーミング向けのXLやRLシリーズ、写真家向けのSWシリーズなど、用途や業種をより絞り込んだ高付加価値の製品も発売している。今回紹介するPDシリーズも、こうした製品展開の一環として登場したと見てよいだろう。PDシリーズがターゲットとするのは、本サイトユーザーに多いであろうデザイン業務に携わる人たちである。

モデルは27型WQHD解像度の「PD2700Q」と32型4K解像度の「PD3200U」の2種を用意しており、両機はパネルサイズや付加機能に幾ばくかの違いはあるものの、核であるデザイナー向け機能の多くを共通としている。液晶パネルはいずれもIPS方式を採用することで広い視野角を確保。色域もsRGBとRec.709の色空間を100%カバーしている。どちらも魅力的な製品ではあるが、ここではより広い層から引きがあるだろう27型のPD2700Qにフォーカスを当てて紹介する。

とはいえ、ただ淡々と機能を紹介するだけでは芸が無い。そこでデザイン事務所「Blue Puddle」の代表である「佐藤ねじ」氏にご協力いただき、Webデザイナーならではの視点でPD2700Qを語っていただいた。

Webデザイナーの目線でみた
「PD2700Q」のおすすめポイント

作業効率はもちろんのこと、
実はクオリティUPの面でも効果的!

27型WQHDの広大な作業スペースで仕事がしやすい

まずはパネルサイズについての感想から聞いてみよう。佐藤氏によると普段は24型のフルHDディスプレイを使用しているとのこと。27型WQHDディスプレイの表示領域はどう映ったのか?

佐藤実のところ、24型でも不便は感じていなかったんです。

厳密にいうと、不便を感じていないというよりは、不便に気付いていなかったというか、やや手狭さを感じながらも「そういうもの」として受け入れて、自分の中で最適化していた感じですね。

なので、実際に27型を使ってみて「ああ、こんなにも違うものか」と驚きました。私は出先で仕事をする場合、ノートPCを使っているのですが、やはりデスクトップでやるよりも効率が落ちるんですね。ちょうどそれと同じような違いを感じました。表示領域が狭いと、ウィンドウやアプリケーションの切り替えなど、どうしても余分な操作が必要になります。

作業時間が増えるのはもちろんですが、何よりも余分な操作によって集中が途切れるのが痛いです。アイデア出しなどは没入できないと苦しいですからね。実際、仕事にかかる時間は1.5倍かそれ以上になってしまいます。そうした意味で27型は、多数のウィンドウを干渉せずに並べられるため実作業のみに集中しやすいですね。

WQHDとは

WQHDとはWide Quad High Definitionの略。HD解像度(1280×720)の縦・横画素数は2倍、表示画素数は4倍になる。ちなみに、よく耳にするフルHDとの対比だと約1.3倍となり、フルHDコンテンツの作成をおこなう場合でもツールパレットやシークバーなどのための余剰スペースが無理なく確保できる。

プロツールとして役立つ
“多彩な表示モード”

それでは、デザイナー向け機能の1つである各種表示モードに触れていこう。PD2700Qは、「sRGBモード」、「ブルーライト軽減モード」、「ユーザーモード」のほか、「暗室モード」、「デザインモード」、「CAD/CAMモード」という3種のデザイナー向けモードを用意している。それぞれ、明るさやコントラスト、ガンマなどのパラメータを調整して、シャドーや線をより視認しやすく表示してくれるモードだ。

佐藤これはデザイン段階でも使えますが、イラストだったり、写真だったり、使用する素材をチェックする段階で特に役立ちますね。素材をいじる必要がある場合でも、前段階で各モードを使用して、ユーザーの様々な環境を想定しながら大体の完成形をイメージできるため、データをいじりながら試行錯誤するよりもスムーズに作業が行えます。

あと、シェアオフィスなどでは、自由気儘に室内照明や室外光をいじるわけにはいきません。そうした環境でも、昼用は標準モード(sRGBモード)、夜用は暗室モードなどと使い分けることで、ある程度の対策にはなりますね。

その他では、これはイレギュラーな事例でしょうが、デザインで煮詰まっていた時に、何げなくモードを切り替えて遊んでいたんですね。すると、まさに求めていたイメージに近い表示が出て「あ、これだな」と。すぐに修正を行いました(笑)。こうしたラッキーはそうそう無いでしょうが、手軽に色々な刺激を得られるのは良いですね。

些細なことかもしれませんが、Webデザイナーにとって必要な「表示モード」がちゃんと用意されている上、細やかな「表示モード」の切り替えができるのは、とても便利で効率的だと思いました。このディスプレイなら、結果としてクリエイティブ・ワークの品質が上がり、それが自然とクオリティアップに繋がっていくような感覚を覚えましたね。

作業効率がいっそう高まる
“DualView(デュアルビュー)

もう1つ、デザイナー向けの機能として用意しているものが「DualView」機能だ。全表示領域を2分割し、左右それぞれの表示モードを別の画像モードに切り替えることができる。先の表示モードも、単純に使用しているだけでは全画面の表示を切り替えるだけだが、DualViewと併用すれば一画面で2種類の表示を隣接比較できるようになる。

佐藤これは面白い機能です。イメージの比較をしつつ、微調整を行う際に非常に役立ちます。全画面でモードを切り替えつつ調整しても良いのですが、どうしても残像や残光の影響があるため、度々切り替えて確認することになります。この点、DualViewならば並べて比較できるので、手間をかけずにデザインのイメージを比較しながら正確な調整ができますね。

ちなみにBenQのWebサイトでダウンロードできるユーティリティソフト「Display Pilot」を使用すれば、分割モードに合わせてアプリケーションの位置とサイズを数クリックで変更できる。現在のところWindows版のみなのが残念だが、Windowsユーザーであれば一層の利便性を得られる。

扱いやすいボディデザイン

液晶パネル部分の可動範囲が広く取られているのもPDシリーズの特徴だ。

佐藤オフィスだと設置スペースは限られているので、パネル位置の自由度が高いのはありがたいです。中でも特に気に入っているのは高さ調整ですね。以前のディスプレイも昇降機構は持っていたのですが、机上から離れた位置までしか下げることができなかったので、椅子や周辺環境で調整する必要がありました。PD2700Qだと、かなり低い位置までパネルユニットを下げられるので、ディスプレイを見下ろした楽な姿勢で作業ができます。

その他ではピボットできる点が良いですね。使用頻度はそれほど高くないですが、A3やA3ノビサイズで作成した縦位置のポスターなどを実寸で確認する場合にとても便利です。

デザイナーの目の疲れや負担を軽減させる“フリッカーフリー”

OA機器にスマホの普及、ターミナルの端末など、日々ディスプレイに囲まれる昨今では、眼精疲労に悩む人が増えている。理想はディスプレイと距離を置くことだが、現実にはなかなか難しい。こうした状況を憂慮し、BenQは逸早くフリッカーフリーのLEDバックライトを低価格帯の製品にまで採用してきた。使用時間を短縮できないならば、せめてユーザーへの負担が少ないディスプレイをというわけである。もちろん、このPD2700QにもフリッカーフリーのLEDバックライトが採用されている。

佐藤目の疲労はかなり深刻ですね。酷いときは肩こりや頭痛にまで及びますので。PD2700Qに限った話となると、試用期間が短いので使ってすぐに効果をはっきりと感じたわけではありません。

眼精疲労がフリッカーだけに由来するわけではないでしょうが、画面にチラつきがあるよりも無い方が当然目に優しいでしょうし、目の負担を軽減できるという謳い文句だけでも選択すると思います。長く使えば使うほど効果が体感できるようなので、長く使ってみたいですね。

あと、これはまさに目に見えてわかる効果ですが、ディスプレイを撮影してもチラ付かないのが嬉しいです。私どもはデザイン業務の傍ら、作品作りも手掛けていまして、ディスプレイを展示する機会がわりとあるんです。画面を撮影する機会もあるので、撮ってそのまま使えるのは便利ですね。

意外な活用方法が見えた
“ブルーライト軽減”

次にブルーライト軽減機能だが、これは表示から青成分を軽減して、ブルーライトによる影響を抑制するモードだ。色味が変わってしまうのでデザイナーの方々は用いることは無いと思いきや、佐藤氏は意外な使い方を提示してくれた。

佐藤確かに通常で用いることは無いでしょうね。ただ、今はスマホにもブルーライト低減表示モードが用意されています。そうしたモードで見てもデザインが破綻しないかを確認するためには凄く役に立ちますね。先ほどの暗室モードなどと同様に、DualView機能で部分的な表示ができるので、手軽に両者を見ながら微調整が行えます。

また、こうしたユーザー環境に対しての様々な検証は、クリエイティブ・ワークをクライアントに説明する際のエビデンスにも繋がります。「このクリエイティブの色彩は、なぜこの色数値であるのか」など、クリエイティブに説得力を持たせることができるため、デザイン制作を進めていく上で、ともて有効な使い方ができるのではないでしょうか。

総評

佐藤これまでも、いわゆる汎用タイプで少しスペックの高いディスプレイを「デザイナー向け」として謳っている製品は数多くありました。ただ、そうした製品を使っても、やはり「ディスプレイ」の域を出ていなかったように思います。ですので、これまではディスプレイに対してそこまで拘りを持って選んでいたわけではありませんでした。

それがPD2700Qは「ディスプレイ」よりも、もう一歩踏み込んでいる印象を受けましたね。ディスプレイとしての要件を押さえていながら、プロツールとしての側面も備えています。実際、これまで使用していたディスプレイよりも作業効率は上がりましたし、以前の環境では気が付かなかった欠点も発見できました。作業効率とともにクオリティも向上してくれる、本当の意味でのデザイナー向けディスプレイだと思います。

27 インチ WQHD デザイナーディスプレイ PD2700Q

BenQが2017年春に市場投入したデザイナー・クリエイター向けのディスプレイ。IPS方式の液晶パネルを搭載。10bit入力対応。暗室モード、CAD/CAMモード、アニメーションモードなど、クリエイター向けのカラーモードを装備する。画面を分割してエリアごとにカラーモードを割り当てるDualView機能も搭載。

パネルサイズ 27型ワイド(IPS)
アスペクト比 16:9
バックライト LEDフリッカーフリーバックライト
解像度 WQHD 2560×1440ドット
画素ピッチ 0.233㎜
視野角 左右178°上下178°
表示サイズ 596.74×335.66㎜
輝度 350cd/㎡
応答速度 4ms(GTG)
コントラスト比 1000:1

Blue Puddle Inc. 佐藤ねじ

1982年生まれ。アートディレクターとプランナー。面白法人カヤックから独立し、2016年7月に株式会社ブルーパドルを設立。代表作に『変なWEBメディア』『Kocri』『くらしのひらがな』『レシートレター』『しゃべる名刺』『貞子3D2』など。2016年10月に著書「超ノート術」を出版。