作品のクオリティをたしかなものにするHPの出力技術も、「マグナムが撮った東京」のみどころのひとつだ。写真は本展に向けてテスト出力した出力物

話を伺った日本ヒューレット・パッカード株式会社 グラフィクスマーケティング部部長 斎藤 治氏

 マグナム・フォトの作家たちによる数々の作品が優れているのはいうまでもないことだが、それにくわえ、「マグナムが撮った東京」でさらに注目したいのが、展示作品の出力を陰で支えたヒューレット・パッカード(以下、HP)のデジタル技術だ。本展で展示される作品のうち、8割におよぶ大多数の出力に、HPの「HP Designjet Z3100 Photo」(以下、Z3100)が利用されている。所属する写真家それぞれにルールが存在するほど作品の品質に厳しいマグナムの眼鏡に適ったHPの技術と品質について、日本ヒューレット・パッカードの斎藤 治グラフィクスマーケティング部長にその背景をうかがった。

──マグナム・フォトとの今回の至るまでの経過を教えてください。

斎藤●マグナム・フォトとHPは、ワールドワイドで大きな提携関係にあります。単なる技術サポートだけではなく、大判プリンタを開発するにあたって、写真、アート、印刷、デザイン、街のプリントショップなど、多方面のプロの方から製品に関するフィードバックをいただいていますが、写真の分野では特にマグナムのアーティストの方と強いつながりがあり、世界各国でマグナムが主催する写真展に協力をさせていただいています。マグナムのアーティストの方の中には、弊社のHP Designjetユーザーが多いんですよ。日本では過去2回、ロバート・キャパ氏とクリス・スティール=パーキンス氏の写真展をサポートしました。今回の「マグナムが撮った東京」に関しては、まずマグナムの方からお話をいただき、われわれとしても写真向けの専用機であるZシリーズをリリースした直後でしたので、この製品を使うことでこれまで以上にいい作品をお見せできるのではないかと考え、今に至っています。

──数あるプリンタメーカーを凌ぎ、世界的にマグナムがHPを認めている理由は?

斎藤●そもそも写真家の方は、インクジェットプリンタに対して大きな不満を持っておられました。そのひとつがモノクロ出力への不満。銀塩写真では決して出ることのないブロンジング(写真を斜めから見ると銅褐色が出る現象)がインクジェット出力だとどうしても出てしまうのですが、これをなんとかクリアできないかという大きなリクエストがあったんです。もうひとつがモノクロの階調表現。特に黒からグレーに移っていくなめらかな階調性がきわめて出にくいという技術的課題がありました。ちょっと専門的な話になるんですが、従来はインクそのものにシアンやマゼンタを含めてモノクロ階調を出していたため、どうしてもそこでメタメリズム(光の反射で緑がかったように見える現象)が発生して、なめらかに出力できない問題がありました。HPではそういったフィードバックをいただきながら、それらの問題をひとつひとつ解決していきました。そうした弊社の姿勢をご評価いただき、認めていただいているのではないかと思います。今回のZ3100シリーズでも、新しいインクを開発して、ブロンジングを抑え、できるだけニュートラルに近いモノクロ階調が出るような製品開発に成功しました。マグナムのアーティストをはじめとするプロの写真家の方に非常に高い評価をいただいています。実際のよさをわかっていただくために、各地でデモ実演を行い、製品の優れた点をアピールさせていただいています。そうした活動の結果、写真展ではお声をかけていただくことが国内外ともに増えていますね。

 こうした活動が実り、デジタルファインアートやフォトグラフィの分野で、HPの技術と品質が評価され、同社製品が多く利用されている。現在、大阪サントリーミュージアム[天保山]で開催中の「生誕100年記念 ダリ展 創造する多面体」もそのひとつだ。余談だが、ロンドンのナショナルギャラリーやオーストリアのウィーン美術館などでは、来館者が気に入った展示作品の複製を購入する際、デジタルアーカイブした作品データを出力して販売するシステムを導入している。このときにもHPのコンピューティングやサーバストレージ、プリンティングなどの技術が威力を発揮している。デジタルメーカーとしての総合力をもつHPならではのアートソリューションといえるだろう。話を元に戻すが、こうした写真や絵画のプロからも認められる出力の美しさも、「マグナムが撮った東京」のみどころのひとつとなっている。PART3では、実際に出力を担当した株式会社帆風の現場のレポートをお送りしているので、そちらも見てほしい。