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大谷和利のテクノロジーコラム

2021.03.16 Tue

2021年のAppleの製品戦略を予想する~iPhone、iPad、MacBook、iMac、Apple Watchほか

TEXT:大谷和利(テクノロジーライター、AssistOnアドバイザー)

 

2020年秋に発売したiPhone 12シリーズとM1 Mac 3機種の躍進により、2021年第1四半期(決算上は2020年10〜12月期)に1000億円を超える過去最高の売上高を記録したApple。新型コロナウイルスの禍中におけるこの業績は、ティム・クックの舵取りの確かさを示すと共に、2021年の新製品にも大きな期待を抱かせるものとなった。そこで今回は、年内の登場が予想されるApple製品と同社の戦略について考えてみることにする。

2021年の初新製品はiPad mini、同Pro+α

まず、3月は例年、Appleの新製品発表の時期で、一説には現地時間の23日にスペシャルイベントが開かれるとされている。いずれにしても、3月中に何らかのオンライン発表会が行われることは間違いないだろう。

モデルチェンジの順番からいえば、iPadシリーズのminiとProが刷新されるタイミングである。特にiPad miniは、A12 Bionicを搭載したApple Pencil対応の第5世代モデルが2年前の2019年3月に発売されて以降、変更を受けていないため、そろそろ一新されてもよい頃合いだ。

第6世代のiPad miniが登場するとすれば、2つの方向性が考えられる。1つは、筐体のデザインを、iPad Pro/Air、iPhone 12シリーズのようなナローベゼルのスクエアなものに変えて、Apple Pencil 2に対応させるような方向性。この場合、iPhone 12 miniのように、小さな高性能デバイス的な訴求を行うものと思われ、これはこれで魅力的かもしれない。

ナローベゼルで登場した10.9インチのiPad Air(2020年)
ナローベゼルで登場した10.9インチのiPad Air(2020年)

もう1つの方向性は、昨秋のiPadの標準モデルのアップデートと同様に、デザインやApple Pencilのサポートは変更せず、性能アップを図るというものだ。iPhone 12 Pro Maxの売れ行きが好調なため、価格帯が違うとはいえサイズが近いiPad miniの立ち位置が微妙になっていることは事実である。そこで、開発コストを抑えてiPadのエントリーモデルとしての買いやすさをアピールするならば、こちらを採る可能性が高い。

iPadの標準モデルが昨秋の第8世代でようやくA12 Bionicチップを搭載したように、時期によってはminiのほうが上位のCPUを与えられてきた過去があるため、第6世代のiPad miniにA13 Bionicが使われても不思議ではない。

筆者としては、Appleは今回、おそらく後者の方向性を選び、その次のモデルチェンジのタイミングで、iPadの標準モデルと共に、iPad Air/Pro的なデザインへと移行するのではないかと考えるのだが、果たしてどうだろうか?

iPad Proに関しては、このところ、デザイン変更やLiDARの採用などの点で、iPhoneの先導役を務めているところがある。それは、製品ポジション的に新しい要素技術を試す上でコストをかけることができる一方、iPhoneに比べれば生産台数が少ないので、供給量が限られた技術を使いやすいためと考えられる。iPad Proでそうした技術の量産体制に弾みをつけ、こなれたところでiPhoneの製造工程に活かすような流れがあるものと想定できる。

その意味で、モデルチェンジではデザインはそのままに性能を底上げし、高コントラストで省エネルギー、かつ有機ELのような焼き付きの心配がないMini LEDディスプレイや、動画再生に一層の滑らかさをもたらす画面の120Hz駆動を採用してくる可能性が高い。CPUも、下位のiPad AirがiPhone 12シリーズと同じA14 Bionicとなっているため、それを上回る最新のチップ(未発表だが、A14Z BionicやA14X Bionic、あるいはA15 Bionic)に移行するだろう。

加えて、現行モデルとのさらなる差別化を図るならば、メインカメラを2眼レンズからiPhone 12 Proシリーズ並みの3眼レンズにアップグレードしてくるかもしれない。ただし、さらにその次のモデルチェンジの目玉とするために、先送りすることもありえそうだ。

iPad Proも次世代か次々世代モデルでは3眼レンズに?(写真は「iPhone 12 Pro Max」)
iPad Proも次世代か次々世代モデルでは3眼レンズに?(写真は「iPhone 12 Pro Max」)

+αとしては、かねてから噂となっていた忘れ物防止タグ(探し物トラッカーともいう)のAirTagの発表と、AirPodsのエントリーモデルのモデルチェンジが予想される。AirTagの存在は、すでにiOS 13のコード内にその手がかりがあったり、現在は削除されているApple公式動画の中にその名称が出ていたりしたために公然の秘密となっており、発表は時間の問題となっている。

また、Appleは、音の再生の臨場感を飛躍的に高める空間オーディオ技術を推進しているが、現時点では、AirPods Pro/Maxと、iOS 14かiPadOS 14をインストールしたiPhoneやiPad、そして、Apple TV+/Disney+/HBO Maxの対応コンテンツの組み合わせでのみ利用できる。しかし、AirPodsの標準モデルやApple TVのハードではサポートされていなかったので、このあたりの製品をモデルチェンジして空間オーディオに対応させることも十分ありうる話だ。

サービス面では、昨秋に発表された、Apple Watchを使ってパーソナルトレーニングを可能とするApple Fitness+の日本版も控えている。Apple Fitness+は、Apple Watchをさらに普及させるうえでの重要なコンテンツの1つであり、ニューノーマルな生活にもフィットするサービスなので、そろそろ日本市場に対応させてきても良い頃といえよう。

Mチップ&新筐体のiMacと上位のMacBook ProはWWDCで?

M1 Macは、少し前にようやく供給が需要に追いついたようで、納期も2日程度となっている。次の展開としては、メインストリームのデスクトップMacであるiMacと、MacBook Proの16インチモデルのMチップ化が考えられ、先日、iMac Proが流通在庫のみで販売終了となることも発表された。

この動きは、Proモデルが不要となるほどiMacの性能が底上げされることを示唆している。上位チップでは、現在のM1チップのパフォーマンスをベースに、高性能コアや内部メモリの増強が図られることを考えれば、当然の成り行きといえるだろう。

iMac Proの生産終了の発表タイミングから、早ければ春のスペシャルイベントで新型iMacが発表される可能性もゼロではないが、iMac Proの価格を考えると飛ぶように売れる製品ではないため、在庫を売り切るためのリードタイムを確保したともいえる。したがって、スペシャルイベントはiPadにフォーカスし、iMacはMacBook Proの16インチモデルと共に、開発者向けイベントのWWDCでお披露目するほうが、自然ではないかと筆者は考える。

その際に、筐体はどちらもナローベゼルの新しいものへと移行して、M1 Macでは最小限に留められたポート類もIntel Mac並みに充実したものとなるはずだ。特にMacBook Proでは電源用のMagSafeコネクタも復活すると見られているが、ユーザーにとっては利便性が増し、Appleにとっては専用ケーブルを独占販売できるため、そうなる確率は高いように思える。

それと同時に、MacBook Proの13インチモデルも、MacBook Airとの差別化のために14インチにスケールアップしてモデルチェンジする可能性もある。しかし、WWDCでは新しい16インチモデルのみの刷新で開発者の購買意欲をハイエンド製品に集め、秋に下位モデルを一新してターゲット層を広げるというやり方のほうが、よりAppleらしいかもしれない。

16インチのMacBook Pro(2019年)
16インチのMacBook Pro(2019年)

 秋にはiPhone 13とApple Watch S7、Mac Proか?

そして、秋にも恒例のスペシャルイベントが控えているが、これはiPhone 13シリーズとApple Watch Series 7の発表と、Mac Pro (+MacBook Proの下位モデル?)の発表とで、日取りを分ける公算が強い。昨秋もそうだったように、どちらも単独のイベントを構成できるだけの情報量を持つと考えられるためである。

iPhone 13シリーズは、A15 Bionic(仮称)を搭載し、120Mhzで駆動されるMini LEDディスプレイがアピールポイントの1つで、CPUもこの春のiPad Proと同等のものが搭載されるはずだ。その頃には、5Gのミリ波対応モデルの販売地域も、日本を含めて拡大してくるだろう。

コネクタについて、筆者はiPhoneの用途やフォームファクターを考えるとUSB-Cが採用されることはなく、Lightningの廃止は完全ポートレスへの移行を意味するという立場をとっている。しかし、楽器演奏など特定分野の周辺機器との無線接続にはレイテンシーが無視できるほど小さいワイヤレスネットワーク環境が必要となる。

たとえば、Appleが独自開発している5Gチップの製品搭載は早くても2023年と見られているが、これに同社ならではの周辺機器との連携機能が盛り込まれるとしても驚きはない。元々、外販の予定はなく、自社製品向けに付加機能を盛り込むことが十分可能だからだ。しかし、もしそうであるなら、自社の5Gチップの採用まではLightningコネクタを維持するはずで、iPhone 13はまだポートレスにはならないと予想する。

Apple Watch Series 7は、CPUがS7(仮称)に進化することで、さらなる省エネや性能向上が期待されるが、最大の目玉機能は血糖値測定となりそうだ。Appleは、テラヘルツ(THz)帯域の電磁波を用いた血糖値測定法の特許を出願しており、次に機能を拡張するなら、これに基づくセンサーの搭載が順当といえよう。

そして、MacintoshラインのハイエンドモデルとなるMac Proは、MacのApple Silicon移行の最後を飾るに相応しい製品だ。最上位機種では、64コア(内、高性能コアが48)のモンスターマシンになるともいわれており、昨秋のM1 Mac発表を上回るセンセーションを業界にもたらしそうである。こちらの新製品の発表は2022年夏になるとの見方もされているが、Appleとしては当初2年とした移行期間を前倒しで完了させたいはずであり、開発が順調ならば、もっと早くリリースされてもおかしくない。たとえば、少なくとも発表だけは年内に行い、出荷開始は2022年の初頭といった流れもありうるだろう。

Mac Pro(2019年)
Mac Pro(2019年)


個人的には、純正のARグラスにも期待したいところだが、当初はiPhoneのワイヤレス周辺機器の1つとして位置付けられるとすれば、先の自社製5Gチップの完成を待つ必要がありそうだ。過去には、もっと早く出るのではという希望的観測を行なったこともあったが、現状ではやはり2023年の登場と見るべきかもしれない。

Appleのことゆえ、これ以外にも何らかのサプライズが用意されている可能性もありそうだが、いずれにしても2021年も業界の台風の目として、その進路に注目が集まるに違いない。

大谷 和利(おおたに かずとし)
テクノロジーライター、AssistOnアドバイザー
アップル製品を中心とするデジタル製品、デザイン、自転車などの分野で執筆活動を続ける。近著に『iPodをつくった男 スティーブ・ ジョブズの現場介入型ビジネス』『iPhoneをつくった会社 ケータイ業界を揺るがすアップル社の企業文化』(以上、アスキー新書)、 『Macintosh名機図鑑』(エイ出版社)、『成功する会社はなぜ「写真」を大事にするのか』(講談社現代ビジネス刊)。
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