注目企業のブランドデザインに迫る
第1回:iida(KDDI株式会社)
企業の活動やコミュニケーション戦略に欠かせないものとして認知されてきたブランディング。成果をあげている多くの企業がそこに意識を向けていることは間違いのない事実だ。今回は、昨年リリースされてからというもの、またたく間に広く認知されたKDDIの新ブランドiidaに注目。iidaのグループリーダー松井伴文氏に、そのコンセプトからプロダクトのデザイン、CMやWebを使用したコミュニケーション手法などについて聞き、そのブランド構築のスタンスに迫る。
第1話
ライフスタイルを含めて提案するブランド
──iidaのはじまりからお話しいただけますか。
●auとしては、携帯電話のトレンド機能(カメラ画素数、ディスプレイサイズなど)をおさえたプロダクトをリリースしていくことが通常なのですが、すでに携帯電話は市場でも飽和状態ですので、機能ではなくデザインで選びたいお客様向けのブランドとしてスタートしました。ただ、それ以前にもKDDIではau design projectという、デザインを重視したモデルをリリースしてきましたが、iidaに関しましてはそれをさらに強化/発展したブランドという位置づけです。
──具体的には、どういった形で強化/発展したのでしょうか。
●Iidaでは、シャープなデザインからお客さんが普通に持てるようなデザインの製品までを取り揃えています。さらに携帯電話を取り巻く周辺のアイテムも提供しています。それが「LIFESTYLE PRODUCTS」(図参照)と呼ばれる商品です。無味乾燥になりがちな携帯電話ではありますが、iidaにはお客様のライフスタイルを豊かにするというモットーがあります。
携帯電話の周辺アイテム「LIFESTYLE PRODUCTS」の数々。葉っぱのついたカラフルなACアダプターや、ACアダプターの線を電線に見立てたプロダクトをはじめ、ユニークなアイテムがラインナップされている
──「iida」というネーミングの由来について教えてください。
●「innovation」「imagination」「design」「art」の頭文字をとって「iida」となりました。文字通り、想像力とデザインとアート性をもって、携帯電話の世界にイノベーションを起こしたいという私たちのスタンスが象徴されています。こうしたネーミングやコミュニケーションの戦略には、groundの高松聡さんにも関わってもらっています。
──意匠性を削ぎ落としたシンプルで力強いフォルムのロゴデザインの理由は?
●iidaの持つ普遍的な価値をシンボライズしました。多彩な携帯電話の個性を引き立てながら、iidaというブランド名を効果的に訴求できる記号となるように、シンプルかつ力強い文字でデザインしています。ちなみに、普遍的な価値とは、先ほどの話にもあがりました「innovation」「imagination」「design」「art」といった、iidaが追求していくブランドコンセプトのことです。ロゴのアートディレクションは、groundの野尻大作さんにお願いしました。ロゴの色に関しては、シルバーから黒の範囲があれば良いとして幅を持たせています。ひとつに縛られないブランド、いろんな可能性を秘めたブランドといった意味合いでしょうか。
黒からシルバーの幅で自由に色を使用できるブランドロゴ。「ひとつに縛られず、さまざまな可能性を秘めている」というiidaのあり方を反映している
──直接的な機能を追い求めるのではなく、携帯電話を手にすることが楽しくなるブランド、という印象ですね。
●そうですね。「楽しくてさらに実用的なもの」「こういうものがあってもいいよね」という発想を大事にしています。そんな「感性」とも呼べる部分は、私たちが以前から大事にしてきた部分です。(取材:立古和智)
第2話では「機能よりもプロダクトデザイン優先」をお送りします。