第3回 コンバージョンレートを上げるためのサイト戦略(1)
これまで2回にわたり、コンバージョンレートを向上させるための基本的な取り組みについて述べてきたが、今回は実際に弊社がプロデュースを手がけたジョインベスト証券のサイトを例に、より実践的なサイト戦略を見ていくことにしよう。
(文:松岡清一)
[プロフィール] まつおか・せいいち NRIネットワークコミュニケーションズ(株) Webマーケティング事業部部長 |
コンテンツ重視で初心者層をカバー
シンプルな導線だけがコンバージョンにつながるとは限らない
ネット専業の証券会社として2006年に誕生した「ジョインベスト証券」だが、先行する競合他社に対していかにシェアを獲得するかという問題が、設立段階からクローズアップされていた。そこで後発のサービスである点を逆に生かして、既存のネット証券サイトの問題点を徹底的に洗い出すことからプロジェクトをスタートさせている。
われわれがまず注目したのは、コンテンツリッチなサイトの可能性だ。先行するネット専業証券に対抗するためには、社名の由来でもある「株式投資に参加する楽しさ」を演出しながら、初心者にもわかりやすいWebサイト構築を目指した。
ところが初心者の多くは株取引に対して「怖い」「わかりにくい」などの先入観をもっており、そのままではコンバージョンに結びつけることが難しい。取引口座の開設手続きや口座への入金など、実際の取引に至るまでの手続きが何段階にも分かれており【図1】、いずれも離脱の原因となり得るためだ。
【図1】オンライン上での取引開始までのステップ
そこでユーザーのあらゆる疑問を想定し、それに対応した説明コンテンツを組み込んでおくことが、結果としてより多くのコンバージョンにつながると考えられた。
それぞれのコンテンツをランディングページとして活用し、検索キーワードに応じて振り分ければ、特定のジャンルに興味をもっているユーザーを囲い込みやすいという、LPO(Landing Page Optimization)上のメリットもある。これまでのLPOの常識では、ランディングページからコンバージョンの発生するページ(オンライン証券の場合は口座開設ページ)まで、いかに効率のよい導線で誘導するかが重要とされてきた。
ところが実際のユーザー動向を確認すると、コンテンツページをしっかりと読み込んで納得したユーザーのほうが、そうでないユーザーと比較してコンバージョンレートが高いことが判明したのだ。これはページ間で発生する離脱を割り引いても、トータルでプラスが発生していることを意味する。