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日本マイクロソフト株式会社でUXエバンジェリズムを担当する春日井良隆氏。今回のコンテンツ制作に至った背景、プロモーションの狙いについて語ってもらった。
──今回、SVGというフォーマットを使用した真意は?
春日井●IE9がSVGをサポートして、SVGのレンダリングにGPUアクセラレーションが効くので、その機能をコンテンツとして見せたかった。Webで一般的に扱われる画像はJPEGかPNG、GIFなどの、いわゆるビットマップ画像です。それに対してSVGはベクターフォーマット。一般的には、地図や設計図のような精細な線画に使われていますが、スクリーンの大きさに関わらず滑らかな線画を見せられるのはベクターフォーマットならではの特性ですし、エンターテイメントでも使い道はあるはずだと思っていました。これで全ブラウザがSVGをサポートしたので、今後SVGの注目度は上がるのではないかと思っています。
──カヤックさんへの技術面でのサポートで印象は?
春日井●ブラウザの問題なのか、コードの書き方の問題なのか、構造の問題なのか――わからないことだらけでしたね。IE9の仕様も色々と動いている最中だったので、あのときの仕様では動いた、この仕様に合わせたらどうなのか……など、試行錯誤がありました。すべての軸が流動的、かつ初めての試みだったので、ノウハウが世の中にない。まったくの手探り状態でした。
──ヒヤヒヤしました?
春日井●ヒヤヒヤしつつも、IEのリリース・プロモーションとする以上、最高のパフォーマンスを出したかった。これだけのコンテンツをお蔵入りにするのは、あまりにももったいない。いろんなせめぎあいがありましたが、なんとか世に出せたのは嬉しいですね。カヤックさんがものすごく苦労されたのは、重々承知です。過程をそのつど見せていただいて、問題があれば本社に聞いて、どうしたらいいか、そこはこうしたらいいのではないか……というキャッチボールがあって。
──できあがったものをご覧になって、最初の感想は?
春日井●披露した「MIX 11」の会場の雰囲気に尽きます。2,000人近くいる会場がザワッとしたんですよね。あのときの私はいわゆる「ドヤ顔」になってたはずです(笑)。日本の担当者として、日本の存在感を世界に示したいとつねに思っているので、日本からクリエイティブとしても技術的にもすぐれたコンテンツを発信できたことはとても嬉しいです。そんなこともあって、インターフェイスには英語バージョンもあるんですが、MIX 11ではあえて日本語バージョンを公開しました。あと、MIX 11の本番前日に、各国から集まっていたマイクロソフトの社員にも見せたんです。明日、こういうコンテンツを披露するよ、って感じで。どういうプロセスでSVGのアニメーションになったのか? 1コマずつ再生されているのか? という技術的な質問がたくさん出たのも印象に残ってます。
MIX 11会場風景
──ちなみに私、MacユーザーなのでSafariで見たのですが、それだとIE9のプロモーションになっていないのかなと(笑)。
春日井●いや、特定のブラウザでしか見られないWebコンテンツは、そもそもWeb標準の理念から外れます。IE9では「Same Markup」というキーワードを掲げていますが、同じマークアップのHTMLはどのブラウザでも同じようにレンダリングされないといけません。そのうえでアニメーションが滑らかに再生できて、ローディングが速くて、という体験がIE9のプロモーションとなると考えてます。
──IE9のプロモーションなのに、コンテンツの名前としてIEもマイクロソフトも何も出てこない。それもOKなんですか?
春日井●じつは本編にさりげなく入っているんですけどね(笑)。コンテンツを見てもらうことが何より重要なので、IEはあまり前面に出さないようにしました。この手のコンテンツを見ようとする人はきっとFirefoxやGoogle Chromeのユーザーさんが多いと思いますし、FirefoxやGoogle Chromeで見てみる→途中でIE9のプロモーションだと気付く→どれどれIE9でも見てみるかとインストールしてみる→お! IE9サクサク動いていいじゃん! となる→IE9のインストールが増える、これが私の作戦です(笑)。
(取材・文=増渕俊之 2011年5月9日)
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