オフィス潜入リポート「こんなオフィスで働きたい!」
第9回 ピクシブ株式会社(pixiv Inc.) 後編
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作品を介したコミュニケーション、お絵かき(創作)がもっと楽しくなる場所。2007年のサービスインから4年目、現在破竹の勢いでユーザー数を増やしているソーシャルネットワーキングサービス「pixiv」の特徴だ。絵を描く人と、絵を観る人をコアターゲットとした、日本発のユニークなサービスが生まれる場所を訪ねた。
●ピクシブ株式会社
2005年ピクシブの前身となるウェブ制作会社を設立。システム開発やWeb制作の受託事業を経て、2007年9月よりイラストSNS「pixiv」をスタート。現在のユーザー数は350万人。一日の作品投稿数は2万4000点。オンライン上だけでの活動に留まらず、関連イベントやギャラリーの運営、出版物の展開なども積極的に行っている。
設立6年目、平均年齢28.3歳。フレッシュな顔が行き交う執務スペース。総勢約50名。うち6割がエンジニアで、営業、企画、デザイナー、広報、人事などの部門がある。いくつかの部門をまたにかけるアクティブな社員も大勢いる
ソーシャル本棚。社員ひとりにつき一冊以上、推薦図書を献本する場所。プログラミング、SNS、経営をはじめ、幅広い分野のキーワードが並ぶ
ハードワーカーの味方、休憩スペース。というかベッド? ここで熟睡してしまう社員も少なからずいるとか。添えられたクッションには、IT関係の人にはおなじみのロゴが
「仁義」そして「友情」。こんなデスクで打合せに臨んだら、気が引き締まること請け合い
フリードリンクが嬉しい自動販売機
オープンラックにパーツむき出しのままズラリ並べられた自作のサーバー。これらは開発段階でテストに使用するもの。写真下のものは現在も稼働中
元気で人なつっこい社員犬、マメ柴のチョビ。メス4歳。社員持ち回りで、お世話をしているとか
楽しげな社内の雰囲気を物語るスーパーファミコン。人気のゲームはボンバーマン。社内には、このゲームを通じて培われてきた絆もあるとかないとか
大きめのデスク。その幅140センチと、一般的なデスクよりも30センチは長い。イスは、イタリアのGIUGIARO DESIGNと岡村製作所のコラボレーションによって開発されたエルゴノミックメッシュチェア「バロン」。長時間デスクに貼り付いて作業に打ち込むエンジニアには欠かせない快適チェア
pixivとKaikai Kikiが共同でプロデュースするギャラリースペース「pixiv Zingaro」。2週間毎に新しい展示企画が行われている。写真はJohnHathway氏の「JH科学展」の様子
オンラインとリアルの相乗効果
──Webだけに留まらず、サービスがリアルにも派生しているのも特徴ではないでしょうか。
一番最初に「リアルなpixiv」ということで、原宿のデザイン・フェスタ・ギャラリー原宿で開催したのが「pixivフェスタ」です。A1サイズで展示された各作品には評価欄やタグ欄を設け、来場者は気に入った作品に投票したり、コメントを残すことができます。こういったコミュニケーションは、オンライン上のpixivと同様のもので大変好評でした。すでに4回を開催しているのですが、毎回出展者は大勢の希望者の中から抽選で選ばれます。次回は2012年2月に開催予定です。
そのほかには、pixivで注目されている作家約200名の作品を一冊にした「pixiv年鑑」や、人気イラストレーターさんのインタビューや作品、絵の描き方などを紹介した季刊誌「Quarterly pixiv」などの出版にも積極的です。同人誌の即売会「pixivマーケット」、ワークショップ「pixivクリエイション」といったクリエイターやアーティスト同士が交流したり、作品を発表する場のプロデュースも行ってきました。
──2011年7月にはギャラリー「pixiv Zingaro」もオープンしました。
現代アーティスト、村上隆さん率いるアーティストマネジメント会社Kaikai Kikiとともにプロデュースするpixiv Zingaroでは、既存の枠にとらわれないさまざまな企画を展開しています。こういったリアルでの活動は、pixiv自体をより広く知っていただくきっかけになります。Webからスタートしたサービスがリアルに、そしてまたWebへとつながる相乗効果が生まれています。
──今後の展開としてはいかがでしょうか。
pixivは、イラスト、漫画を主なテーマにしているため、誰もが利用するといったタイプのサービスではないと思っています。そのため継続的な成長を続けるためには、必然的に海外を視野に入れていく必要があります。
実際のところ、2010年6月には台湾にあるKaikai Kikiのギャラリーで、日本人作家30名、台湾の作家100名で共同展示をしたのを皮切りに、台湾や上海の同人誌即売会に企業出展したりと、少しづつですが海外でも活動の場を広げています。イラストやアニメ、マンガなどは、日本が世界に誇ることのできる立派なカルチャーです。そういった意味でも日本発のSNSとして、海外での存在感を高めていけるといいですよね。
(取材・文:立古和智 写真:八木航)
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