アメーバピグ成功の裏にあるクリエイティブワーク インタビュー(2) | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-

アメーバピグ成功の裏にあるクリエイティブワーク インタビュー(2)

2024.4.28 SUN

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ピグ内、タイムトラベルのおでかけエリアに登場した新エリア「昭和の町エリア」で、目玉となるゲームとして登場したのが「めんこゲーム」だ。数10枚のカードから好きなものを選んで3枚配置し、マウスをドラッグさせながらタイミングよくボタンをリリースするとめんこが叩きつけられて風圧によって相手のカードがひっくり返る。レトロでありながら最先端の技術を駆使したこのめんこゲームの制作を担当したFlashクリエイターの堀江優さんに話をうかがった。



Interview(2)

クリエイター側から提案した新ゲーム「めんこ」


──めんこゲームの企画が始まった経緯は?

堀江●実はめんこゲームの企画は私たちクリエイターからの「作りたい」という声から始まりまして、クリエイター側がどのようなゲームにするのかを練って、ゲームのルールやビジュアルなども全部考えてローンチするところまで担当しました。エリアを開設する場合、最初は人が集まるけど少し時間が経つと過疎化してしまうことがよくあります。そこで、エリア内にゲームを設置することで何度もリピートしてもらえるようになるのではないかと考え、「ミニゲームを作ってみたい」と提案したところゴーサインが出ました。ゲームの案としては、ほかにもベーゴマなどの案が出たのですが、めんこのほうがカードをコレクションする楽しみもあるので、ユーザーのモチベーションにもつながると考え、めんこに決定しました。


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「職業シリーズ」のめんこ一覧
「職業シリーズ」のめんこ一覧。ゲームを開始するには、これらの中から好きなめんこのカードを配置する


──制作過程でもっとも苦労した点は?

堀江●めんこにしようというところまではスッと決まったのですが、そこからゲームのルールや演出を考える段階で時間がかかりましたね。現実のめんこの対戦をそのままブラウザに持ち込むとゲーム性が少し足りないので、強いめんこを出して勝つと「バトルボーナスめんこ」がもらえたり、めんこの種類も「童話シリーズ」や「職業シリーズ」などジャンル別に色々な種類を揃えたりと、ブラウザゲームとして面白いものになるように工夫しました。実際にめんこを買ってきて、みんなで遊んでみたこともありましたね。あと、ピグユーザーは若い人が多いので、そもそも「めんこって何?」という点から説明しないとわからないと思い、めんこを知らなくても楽しめるようなルールにする必要もありました。


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マウスをドラッグさせながらタイミングよくボタンを放すとめんこが叩きつけられて相手のカードがひっくり返る
マウスをドラッグさせながらタイミングよくボタンを放すとめんこが叩きつけられて相手のカードがひっくり返る


──Flashの技術的な面でこだわった点は?

堀江●既存のFlashゲームをそのままピグに持ってきても面白くないので、もっと叩いたときの気持ちよさを直感的なインタラクションで表現しようと思いました。よくある「ゲージをためてクリックしてリリースする」というものではなく、マウスのジェスチャーでめんこがひっくり返るほうが、「リリースする技術」が必要になるので、より新しさが伝わるのでは、と。そこで最初に「つかんで放す」という物理シミュレーションのエンジンを構築しました。叩いたときの勢いと距離で風圧をシミュレートして、周囲のめんこがひっくり返るというエンジンですね。めんこ自体も実は1枚ずつ3D化していて、「立体的にこれくらい回転させる」という情報を各めんこに与えて、ひっくり返り方とか途中で止まって戻ったりする様子が表現されています。実は3DがサポートされるのはFlashのバージョン10からなのですが、ピグはバージョン9向けに作られているので3Dのライブラリは使わずに、3D化する部分を自作しています。


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勝負が終わると結果が表示されて、獲得しためんこの枚数がカウントされる。もう一度対戦したい場合は再戦も申し込める
勝負が終わると結果が表示されて、獲得しためんこの枚数がカウントされる。もう一度対戦したい場合は再戦も申し込める


──エンジンを一から作り上げたとは大変な作業ですね。

堀江●パッと見はシンプルなんですけど、それだけにバックグラウンドではかなり複雑な計算をしています。そこは開発の中でも一番時間をかけた部分ですね。テスト段階で社内のスタッフに何人か試してもらいましたが、みんな立ち上がってスポーツしている感じで操作していたので、「これは新しい!」と思いました。マウスの種類によってもやりやすさが変わるので、「めんこをやりやすいマウス」を探す人まで現れました(笑)。そういう意味ではこれまでにないものができたと思います。また、ユーザーの中にはマウスのドラッグに不慣れな人も多く、最初は「操作方法がよくわからない」という意見も聞かれたので、そういう部分のケアするためのチュートリアルもかなり充実させました。

堀江さんのデスク
堀江さんのデスク。ゲームなどを制作する場合は、iPadに描いた構成やラフスケッチなどを見ながらMacを操る

──Flashクリエイターにとってサイバーエージェントで働く魅力は?

堀江●サイバーエージェントに入る前は広告系の会社でキャンペーンサイトなどを作っていたのですが、そこにいた3~4年間よりもこの1年間のほうがずっと濃いです。今回のゲーム制作では、広告系の仕事では絶対に使わない技術を磨くことができましたし、社内のFlashクリエイターにはレベルの高い人が数多くいます。その中にはアプリをやりたい人やFlashを極めたい人など色々な人がいますが、みんな向上心が高く、よく熱く話し込んだりしています。大げさかもしれませんが、技術のことを考えない日はないというくらい刺激に満ちあふれています。あと、ピグは通信量が多く、サーバサイドエンジニアとフロントクリエイターがペアを組むケースがほとんどなので、フロントクリエイターにとってはサーバサイドの知識を得られる点も魅力のひとつですね。なによりもサイバーエージェントは“作れる人”が尊重されている会社だと思います。「こういうものを作ってみたい」と言えばすぐにチャンスをくれるし、開発者にとっては非常にいい環境ですね。


(取材・文:片岡義明 写真:片桐 圭)



目次
>>> 山崎さんが語る「ピグの楽しさを生み出す企画づくりとマネージメント」は1ページ目へ
>>> 堀江さんが語る「クリエイター側から提案した新ゲーム『めんこ』」
>>> 伊東さんが語る「新ゲーム『ピグサバゲー』に込めたデザイナーのこだわり」は3ページ目へ



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