クオリティを上げることで新しい体験を生み出す- WEBクリエイティブの舞台裏 第4回「PUMA ONE CLICK TO JAMAICA」 | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-

クオリティを上げることで新しい体験を生み出す- WEBクリエイティブの舞台裏 第4回「PUMA ONE CLICK TO JAMAICA」

2024.4.29 MON

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市川伸一さん、タナカミノルさん市川伸一さん、タナカミノルさん
市川伸一さん、タナカミノルさん


Facebookアプリとして展開した「PUMA ONE CLICK TO JAMAICA」。シンプルなゲーム性が特徴だが、リピーターと口コミを生むための工夫について伺った。



――クリエイティブ面では与件に対してどのような提案を行っていったのでしょうか?


タナカ●まずFacebookアプリであること、そしてタイムアタックというアイデアは与件としてありました。また、ビジュアルとしては「ウサイン・ボルト」「ジャマイカ」「レゲエ」といったキーワードがあり、プーマさんのスタンスとしてのスポーツを楽しむといったイメージが求められました。特にインセンティブとして「ジャマイカ往復航空券相当額の旅行券」があるため、ジャマイカの雰囲気、ジャマイカに行きたくなるような演出が必要。ラスタカラーをベースとしたトーン&マナーの方向性も早い段階で決定していきました。


市川●提案時のポイントはいくつかありましたが、重要だったことは、まず誰でもがシンプルに楽しめること。それでゲーム性の強いレースコンテンツではなく、タイムアタックを選択することになりました。また、Facebookユーザーの口コミによる情報伝播が生まれる仕掛けを入れること。友人同士でランキングを競える仕組みを用意することで、ひとりで楽しむのではなくソーシャルに楽しめるものとしました。さらに継続性も重要でした。繰り返し楽しんでいただくことで、より深く記憶に残してもらいたかったわけです。


――継続性という点では、どのようなアイデアを盛り込んだのでしょうか?


タナカ●プロモーションのメインはFaasという商品であり、その商品ラインアップは多数あるんです。そこで、コンテンツを繰り返し体験することで商品ラインアップをコレクションしていくことができるというアイデアを提案しました。


関谷●私のほうでは、タイムアタックというゲーム性に思考が寄っていましたが、商品ラインアップをコンテンツの仕組みに取り込むというアイデアをいただいたことで、あらためて商品ラインアップへの気づきをさせていただきました。


タナカ●コレクションをすべて見せておくという考えもあったのですが、集めていくという行為そのものが継続性を生みだすので、現状の形にしました。


――ゲーム性としては、単にコレクションが増えるだけではないですね。


タナカ●ゲームとしては、スタート後数秒間は画面上に時計が表示されていて、しばらくすると消えて、あとは体感速度で秒を測るというもの。ただし、コレクションが増えるにしたがって、時計の露出時間が少しずつ長くなっていきます。繰り返し遊ぶことで、記録を出しやすくなる。記録を出してランキングが上がれば、キャンペーンの抽選確率も上がる。複雑な仕組みではなく、繰り返し楽しむことでジャマイカ往復航空券相当額の旅行券が当たる確率は上がっていく。そういったシンプルさが、今回のプロジェクトの重要なポイントでした。



「PUMA ONE CLICK TO JAMAICA」Faasの商品バリエーションから好みのシューズを選んでゲームを開始。記録を出すとシューズコレクションが増え、同時にゲーム中に表示される時計の露出時間が長くなることで、繰り返し体験することを促す仕組み
「PUMA ONE CLICK TO JAMAICA」Faasの商品バリエーションから好みのシューズを選んでゲームを開始。記録を出すとシューズコレクションが増え、同時にゲーム中に表示される時計の露出時間が長くなることで、繰り返し体験することを促す仕組み


――実際にやってみると、細かい演出が随所に見られます。


市川●インターフェイスとしてのクオリティにもこだわりました。今のゲーム性の話もそうですが、小さなことを積み上げていくというタナカさんのクリエイティブに期待したのは、そういったことなんです。


タナカ●より細かな点でクオリティを上げていくことはすごく重要です。旅行に行きたくなる気分にさせるために、ジャマイカの雰囲気やリゾート感を全面に押し出したグラフィックを作るのはもちろんですが、たとえば画面上に登場するボルトのシルエットは、実際のビデオ映像を参考にアニメーションを描きおこしてます。走り方だけでなく、スタート前に祈りをささげるポーズをしたり、左手を高く掲げる決めポーズなど、演出を加えることでリアリティを上げています。



画面上に登場するボルトのシルエットは、実際のビデオ映像を参考に描きおこし。スタート前に祈りをささげるポーズをしたり、ゴール後に決めポーズをとるなど、ボルトらしさを演出することでコンテンツのクオリティを上げる
画面上に登場するボルトのシルエットは、実際のビデオ映像を参考に描きおこし。スタート前に祈りをささげるポーズをしたり、ゴール後に決めポーズをとるなど、ボルトらしさを演出することでコンテンツのクオリティを上げる


――すぐには気づきませんが、走っているときのカメラワークもこだわっていますね。


タナカ●カメラワークとしては2D視点ではなく3D視点で走っている姿をとらえて、走っている途中からカメラが若干前に回りこむという演出を加えることで、ボルトの走りの臨場感を高めることができます。こういった細かいことの積み重ねが、リッチな体験を生むためのひとつの方法論だと思います。単純にクリエイティブで新しいモノをつくり出すのはかなり難しくて、着想としての新しいアイデアを盛り込んでいく必要がある。そのひとつとして、つくり込んでいくというのがあると思います。クオリティを上げることで、新しい体験が生まれる。また、ユーザーはその新しい体験を発見すると、それを人に言いたくなる。自分が見つけた新しいものって、やっぱりわれ先に人へ言いたいじゃないですか。



ボルトが100mを滑走するシーンでは、スタートからゴールに向けてカメラがパンして回り込む演出が加えられている。これにより、10秒という短いゲームでも、ユーザーは走りの臨場感を得られる
ボルトが100mを滑走するシーンでは、スタートからゴールに向けてカメラがパンして回り込む演出が加えられている。これにより、10秒という短いゲームでも、ユーザーは走りの臨場感を得られる

世界陸上男子100m決勝ではフライング失格という残念な結果となってしまったボルトだが、これもまた伝説として多くの人に記憶されている。実は「PUMA ONE CLICK TO JAMAICA」にもスタート前にストップボタンをクリックするとフライングという仕組みが組み込まれていた
世界陸上男子100m決勝ではフライング失格という残念な結果となってしまったボルトだが、これもまた伝説として多くの人に記憶されている。実は「PUMA ONE CLICK TO JAMAICA」にもスタート前にストップボタンをクリックするとフライングという仕組みが組み込まれていた



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エイクエント

エイクエントは、1986年米国ボストンで設立、現在世界7カ国に拠点を持ち、マーケティング、デザイン専門の人材エージェンシーとしては世界最大級です。そのネットワークと世界各地で培われたノウハウが、多くのスペシャリストの皆様から厚い信頼と高い評価を受けています。マーケティング、デザイン分野でお仕事をお探しの皆さまはぜひご連絡をください。

URL:http://www.aquent.co.jp/

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