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サイバーエージェントに聞くスマートフォンアプリ開発の現場

2024.4.26 FRI

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集合写真 (株)サイバーエージェントに聞く
スマートフォンアプリ開発の現場

スマートフォン向けにリッチコンテンツを展開する場合、技術的な自由度からアプリとして提供する例が多い。数多くのアプリがしのぎを削っている現在、ユーザーを獲得するために必要な要素とは何だろうか? (株)サイバーエージェントのアプリ開発における取り組みを伺った。


取材・文/久保靖資 写真/柳 太



Ameba(アメーバブログ)やアメーバピグという国内でも最大級のコミュニティサービスを提供する(株)サイバーエージェント。利用者数増加が進むスマートフォン向けコンテンツの企画・開発部門として2010年度に立ち上げたのがスマートフォンDivだ。始動して1年あまりだが、すでに70本を超えるアプリをリリースしており、現時点でも新たなアプリプロジェクトが数本同時進行している。


■タッチデバイスの特性を生かした育成ゲーム

iPhone/iPod Tounch 向け育成ゲーム「なでなでフワムー」の企画・開発を担当したプロデューサーの野口さくらさん(左)とデザイナーの西戸聡美さん(右)。
iPhone/iPod Tounch 向け育成ゲーム「なでなでフワムー」の企画・開発を担当したプロデューサーの野口さくらさん(左)とデザイナーの西戸聡美さん(右)。

スマートフォンDiv からiPhone/iPod touch用アプリとして初めてリリースされたコンテンツが「なでなでフワムー」。フワフワした毛で全身が覆われた可愛らしいペットのフワムーを“なでなで”することで育てていく人気の育成ゲームだ。タッチデバイスの特長を存分にいかし、“なでる”という操作のみで楽しむことができる。

「なでなでフワムー」の企画・開発を担当したのがプロデューサーの野口さくらさんとデザイナーの西戸聡美さん。「iPhone/iPod touch向けにリリースされているアプリを調査し、育成ゲームが意外と少なかったという結果にもとづいて企画を開始した」という野口さん。企画にあたっては、ターゲットを20 ~30代の女性に設定し、コンセプトは「癒し」。「仕事疲れでストレスのたまったOLの癒し」を狙っている。育成ゲームの最大のポイントとなるキャラクターデザインに関しては「癒しがテーマですから、誰にでも受け入れられ、愛着を感じてもらえること。また、タッチ操作でなでやすいフォルムであること」を重視している。

キャラクターデザインを担当した西戸さんは、当初50体ほどのキャラクターをデザインし、野口さんとともに方向性を探ったという。「なでやすくするためにはそれなりの面積が必要。顔だけでなくほかの場所もなでられるようにして、さまざまな反応を演出したかったこともあり、最終的に現在の丸みを帯びたキャラクターデザインへと行き着いた」という。

なで心地にもこだわっている。「なでたときのフワフワとした毛並みの動きなど、可愛らしさだけでなく触り心地・なで心地を再現するための細かい演出にこだわった」という。このようなディテールの完成度が人気の秘密だ。


iPhone/iPod touch向けの育成ゲームアプリ「なでなでフワムー」。フワフワの毛に包まれた愛くるしいキャラを指でなでることで育成する。また、なでることでもらえるポイントを利用してアイテムやエサを購入することができる。
iPhone/iPod touch向けの育成ゲームアプリ「なでなでフワムー」。フワフワの毛に包まれた愛くるしいキャラを指でなでることで育成する。また、なでることでもらえるポイントを利用してアイテムやエサを購入することができる。(クリックで拡大)
「なでなでフワムー」はソーシャル機能を搭載。ユーザ同士でメッセージによるコミュニケーションができるだけでなく、互いのフワムーの部屋に行き来することもできる。バックヤードで遊びに行くこともでき、足跡を残すなども可能だ。
「なでなでフワムー」はソーシャル機能を搭載。ユーザ同士でメッセージによるコミュニケーションができるだけでなく、互いのフワムーの部屋に行き来することもできる。バックヤードで遊びに行くこともでき、足跡を残すなども可能だ。(クリックで拡大)


■必要な機能を取り揃えた簡単操作のカメラアプリ

Android端末向けカメラアプリ「dramapic」の企画・開発を担当したデザイナーの小澤佳苗さん(左)と、クリエイティブディレクターの新居朋子さん(右)。
Android端末向けカメラアプリ「dramapic」の企画・開発を担当したデザイナーの小澤佳苗さん(左)と、クリエイティブディレクターの新居朋子さん(右)。

Android搭載スマートフォン向けにリリースしたカメラアプリ「dramapic」の企画・開発を担当したのは、クリエイティブディレクターの新居朋子さんとデザイナーの小澤佳苗さん。撮影した写真にフィルタやフレーム、ラベルを手軽に追加できる人気アプリだ。企画当初にマーケット情報を調査したところ、カメラアプリは当時iPhone/iPod touch向けには数多くリリースされていたものの、Andoroid向けに安定性・機能性を備えたアプリが少ないことからdramapicの開発に着手したという。

新居さんは「人気のある他社製アプリでも、欲しい機能が全部揃っているものがなかった。そこで企画にあたっては、写真を誰かに見せたいときに欲しい機能は全部揃えておくことが重要」と考えた。「AndroidでもiPhone同様にカメラアプリへのニーズは高く、必要な機能を装備させることで潜在ニーズにマッチしたアプリになる」と狙いを定めている。

また、カメラアプリはシャッターチャンスを逃さずにすぐ撮れる「直感的かつ簡単操作」も重要なポイントと捉え、撮影からフィルタやフレームの適用、写真の保存、投稿といった一連の作業がストレスなく進められるようにUIが設計されている。デザインを担当した小澤さんは「画面遷移を極力減らすことを重視した」という。フィルターやフレームはプリセットで数十種類が登録されているが、スワイプしながら軽快に選ぶことができ、プレビューもサンプル画像ではなく、実際に撮影した写真サムネイルで効果を確認できる。ユーザーの動線をシンプルに保ち、予想される操作をバックグラウンドで処理しておくといった工夫で、快適な操作性と機能性を両立している。


Android向けカメラアプリ「dramapic」。トイカメラに要求される機能としてフィルタ、フレーム、ラベル機能を装備。機能に物足りなさを感じることが多いAndroidのカメラアプリの中で、機能性と操作性を兼ね備えた人気アプリだ。
Android向けカメラアプリ「dramapic」。トイカメラに要求される機能としてフィルタ、フレーム、ラベル機能を装備。機能に物足りなさを感じることが多いAndroidのカメラアプリの中で、機能性と操作性を兼ね備えた人気アプリだ。(クリックで拡大)
撮影すると、そのままの流れでフィルタやフレームをスムーズに適用できるUI設計。多数プリセットされているフィルタやフレームもフリック操作で気持ちよく選択できるだけでなく、撮影した写真で効果をプレビューする際にタイムラグがほとんど発生しない点も優れている。
撮影すると、そのままの流れでフィルタやフレームをスムーズに適用できるUI設計。多数プリセットされているフィルタやフレームもフリック操作で気持ちよく選択できるだけでなく、撮影した写真で効果をプレビューする際にタイムラグがほとんど発生しない点も優れている。(クリックで拡大)


■マーケット調査とユーザー本位の企画づくり

スマートフォン向けアプリに限らず、Webコンテンツなどにもいえることだが、コンテンツの企画・開発にあたっては、事前のマーケット調査が重要である。

両アプリともに、ターゲットとなる各マーケットでの既存他社製品の状況などを十分に調査したうえで、コンセプトづくりに取り掛かっている。

また、企画やUI設計においてはユーザ本位であることも重要。dramapicのディレクションを担当した新居さんは、自分でも実際に多くのカメラアプリを使用したうえで、何が足りないのかを検証している。

また、コミュニケーションツールであるスマートフォンにおいてアプリを頻繁に起動してもらうためには、ソーシャル機能を備えておくことも重要なポイントだ。なでなでフワムーには、ユーザー間でのコミュニケーションやお互いの部屋へ行き来でき、足跡を残すなどの独自のソーシャル機能を装備。dramapicには独自のソーシャルメディア機能はないが、Twitterやアメーバブログにストレスなく投稿できるUIが実装されている。SNSサービスとの連携により、口コミでアプリの評判が広がっていく効果も大きい。

そしてスマートフォン向けのアプリ開発には「何よりもスピード感が重要」と4人が口を揃える。アイデアを実現するのに時間をかけていると、競合他社に先行を許してしまう可能性が高い。スピーディな開発を行うには、しっかりとした企画・設計を行うと同時に、ライブラリ類のノウハウの蓄積など、効率的な開発体制の構築も重要になる。企画・デザイン・エンジニアが一体となったチームづくりが不可欠だ。



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