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Facebookの効用を生かしたWeb戦略 - 新世代Web制作テクニック総特集

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Web制作テクニック総特集

ソーシャルメディア 02-03
Facebookの効用を生かしたWeb戦略

世界で9億人、日本でも900万人の利用者を持つFacebook。Web制作者として寄与できる点は少なそうにも見えるが、今後のWeb戦略を提案するにあたりその効果を無視することはできない。ここでは、その効用と活用法について考えてみる。

解説/早乙女拓人(株式会社ワークス) 清水 豊(株式会社ワークス) 村原郁夫(株式会社ワークス)



Facebookの伸長によって変わるWeb戦略

2011年下半期、急速にその利用者数を伸ばしたFacebook。特にビジネス利用を目的としている利用者数は40%にのぼるとも言われ(MMD総研調べ/2011年3月)、いまや多くの企業がFacebookページを開設し活用している。これによって大きく変わったのがWebにおけるマーケティングやプロモーションの基本戦略だ。WebサイトやSEOを軸とする戦略はソーシャルメディアの活用戦略に大きく軸足を移し、スマートフォンも考慮に入れた総合戦略を求められることだろう。

そんな中で重要になるのが「ビジネス的にFacebookにはどんな効用があるのか」ということだ。この項ではまず、そのようなFacebookの機能と効用についておさらいしたい。


プッシュ型戦略を可能にするFacebook

これまでのWeb戦略を、乱暴を承知でザクッと言うなら、「原則的には受身のメディア」だったと言うことができる。多くは、一生懸命Webサイトを見てもらうために、SEOをしっかりやって検索エンジンでの上位表示を獲得するというのが基本だった。つまり、検索してもらえるかどうかは閲覧者次第。クリックしてもらえるかどうかも閲覧者次第。見てもらえるかどうかも、さらにそこから具体的な行動を起こしてもらえるかどうかも同様に受身だ【01】。当然、サイトを一生懸命更新したとしても、その更新情報をタイムリーに見てもらえるかどうかはまったくわからない。なんとか見てもらえるようにメール・マガジンなどの登録を促すが、自分に置き換えた場合、自分のメール・アカウントに到着したメール・マガジンをどのくらい見ているかということになれば、その確率があまり高くないのはおわかりいただけるだろう。

Facebookでは、Facebookページに「いいね!」をしてくれたユーザーに対しては、原則としてその更新情報をそのユーザーのニュースフィードに表示させる機能が魅力だ。つまり最新情報をタイムリーに、そしてかなりの高確率をもって相手に届けることができる。しかもそのページに「いいね!」しているのは、少なくとも一度はそのページになんらかの興味を持ったユーザーということになるので、その発信情報に対しての関心を考えても、ある程度の高い確度が期待できる【02】。

これは今までのWebメディアではなかなかできなかった顧客候補の囲い込みとプッシュ型のプロモーション戦略を実現する、非常に有用な機能と言えるだろう。


【01】これまでのWeb戦略でプッシュできるのは検索エンジンまで。原則として受身となるメディアだった。
【01】これまでのWeb戦略でプッシュできるのは検索エンジンまで。原則として受身となるメディアだった。

【02】個人アカウントだけでなく会社名やブランド、商品名、イベント等々さまざまな用途で使用可能なFacebookページ。
【02】個人アカウントだけでなく会社名やブランド、商品名、イベント等々さまざまな用途で使用可能なFacebookページ。


極めて高い拡散力も大きな魅力

さらに魅力的なのはその情報拡散力だ。Facebookページに記述した情報に、あるユーザーが「いいね!」をしたり、コメントをしたとする。すると、情報はそのユーザーの友達のニュースフィードにも表示される。もしその友達がさらに「いいね!」やコメントをすれば、そのさらに友達のニュースフィードに表示される。

この数を試算してみよう。たとえば「いいね!」メンバー数500人のFacebookページがあったとする。掲載記事に対してそのメンバーすべてが「いいね!」またはコメントすることはないので、その計数をわかりやすく約5%と仮定しよう。このページに掲載された記事が表示されるのは500だが(実際はエッジランクの関係ですべての人に表示されるとは限らないが)、それに「いいね!」もしくはコメントするのは25人。Facebookユーザーの平均友達数は約120人と言われているので(2011年秋時点)、やはりその5%が反応するとすれば次の段階では150人。さらにそれを見た友達が反応すると次の段階では900人と増えていき、次の段階では5,400人というとんでもない数字が出てくる【03】。

実際には、自身が「いいね!」したメンバーとその友達との間ではモチベーションが違うので、段階を経るごとにその確率も落ちるだろう。しかしそれらの表示情報は、少なくとも自分の友達がいいと思っている情報として到達するので、信頼度はある程度高く、確率減少曲線は緩やかなものになり、その分拡散期待値は上がるというものだろう。

つまり、これまでのWeb戦略がなかなか成し遂げられなかった連鎖する情報拡散効果を、Facebookはいともたやすく起す機能を持っていると言える。

【03】段階を経るごとにその拡散度合いはどんどん増えていく。つまり、いかに「いいね!」やコメントをもらえるうな記事を発信できるかが鍵。
【03】段階を経るごとにその拡散度合いはどんどん増えていく。つまり、いかに「いいね!」やコメントをもらえるうな記事を発信できるかが鍵。


平常時からのコミュニケーションが効果を生み出す

ここに宿泊施設のWebサイトがあったとしよう。そのWebサイトでの情報発信は原則日常継続的に行われている。しかしユーザーがそのサイトを見るタイミングはいつかと言えば、ユーザーの休日スケジュールが決まり、どこかに遊びに行くことが決まり、かつその宿泊施設がある方面に行くことが決まってから、ようやく検索行動が起こり、多くの検出先の中の一つとしてそのサイトを見る…というのが一般的ではないだろうか。つまりこの期間は約1週間。短くすれば1日に満たないことになる。しかも、多くの競合他施設と並列で発見されることになるから、その宿泊施設を選択してもらえる確率は他施設と比較して、特別な優位性を持っている状態ではない。このままでは、選出してもらえる確率もそれほど高くはないだろう【04】。

しかし、もしFacebookで日常からコミュニケーションを取ることができていたらどうだろう。もちろん、それほど高い好感度を持つことはできないかもしれないが、少なくともユーザーにとっては既知の施設ということにはなる。この状況でユーザーが休日をどこかへの宿泊を伴って楽しみたいという動機が生まれれば、大きな優位性をもってそのユーザーの記憶の中に存在することができるだろう。現在多くの調査において、マス広告的手法の効果が減少し、代わりに口コミ効果の増大が言われていることを考慮すれば、ここにどんな心理が働くかはすでにおわかりのことと思う。人は、初めてのものを選び取るよりも、既知のものを選び取る確率の方がはるかに高い。しかもそれが、Facebook上とはいえ、自分の友達からもたらされた情報を元に得た関係性であるならば、競合の中でその施設の選択確率が上がるのは自明のことと言えるだろう。

【04】動機や必要性が高まる前の平常時のコミュニケーションを通して、機会が訪れた時の被選択確率を高めることができる。
【04】動機や必要性が高まる前の平常時のコミュニケーションを通して、機会が訪れた時の被選択確率を高めることができる。


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【本記事について】
2012年7月28日発売のweb creators特別号「新世代Web制作テクニック総特集」から、毎週記事をピックアップしてご紹介! スマートフォンサイト特集ではデザインのルールとコーディングのポイント、ソーシャルメディア特集では従来のWebサイトとの違いと有効な活用方法、WordPress特集ではサイト構築に必要な機能と役立つプラグインなど、基本的な知識と必須テクニックを網羅した内容になっています。

※本記事はweb creators特別号『新世代Web制作テクニック総特集』からの転載です。この記事は誌面でも読むことができます。

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