第2話 東大入学、しかし流浪 | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-
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様々なジャンルで活躍するデザイナーの来歴をたどるシリーズ。今回は株式会社イメージソースの清水幹太さんを取材し、ディレクター/デザインエンジニアとして活躍する今日までの足跡をたどりま


第2話 東大入学、しかし流浪



渋谷区神泉のオフィスにて、清水幹太さん

渋谷区神泉のオフィスにて、清水幹太さん


抱き始めたデザインへの興味



──高校卒業後の進路は?

清水●学校が進学校だったので、受かりそうな奴はみんな東大を受けるんです。選択の余地がなくて、文系で頭がいい奴は「東大の文Iを受けろ」と。で、私も東大を受けたら合格しまして。なんとなく後付けで法律のことを考えたりもしたのですが、実は本質的に興味がなくて……ただただ文Iに入った感じですね。野望とかまったくなくて、相当モラトリアムでした。

──大学入ってからは?

清水●ジャズのサークルに入って、ずっと楽器ばかり吹いてました。もともとブラスバンド部だったので、トロンボーンです。学校の授業はあまり受けたことがなくて、一瞬ミュージシャンになりたかったり、バーテンになりたかったりしたのですが、とあるタイミングでどうしても花屋さんになりたくなって。

──どうしてですか?

清水●花言葉を知っている男になりたくて(笑)。

──ロマンチックですね。

清水●ハハハ。でも、花屋のバイトを受けたら全部落ちたんですよ。その頃、ちょうど同時期にHTMLを書けるようになっていたので、花屋がダメなら……と思ってバイトをし始めたところが、堀江貴文氏の作った会社「オンザエッヂ」だったんです。

──エンジニアとして?

清水●なんだろう……98年頃のことなので、デザイナーとエンジニアの切り分けができていなくて、ごっちゃになってましたね。そこにずっといれば、その後ストックオプションで六本木ヒルズとかに住めたんだけど(笑)。

──どれぐらい勤めたんですか?

清水●オンザエッヂに在籍したのは、ちょっとだけです。幅を利かせているデザイナーがいて、心の中で「なんでこんな奴が偉そうに」と思いながら、次第にデザインに興味を持ち始めたんですね。私はそういう負のエネルギーに触発されることが多くて(笑)。

──で、オンザエッヂを辞めて?

清水●わりと職人気質なデザイン事務所に入りました。

──でも、それまでデザインとまったく縁がなかったんですよね?

清水●まったく無縁です。オンザエッヂにいた頃になんとなく興味を持ったぐらいで、それはWeb上のデザイン。ところが新しく入ったところは、グラフィックが主な事務所だったんです。そこから全般的に興味を持つようになったのですが……。


MEDIAS(2008年)MEDIAS(2008年)

LOVE DISTANCE(2008年)LOVE DISTANCE(2008年)

清水幹太さんの仕事より
段:MEDIAS(2008年)http://www.medias.net/
NECの新型携帯「MEDIAS」のプロモーション・サイト。感情理解エンジンにて当日の平均的感情(楽・怒・焦・悲)を注入、もしくは話題のニュースによりデジタル・パフォーマー“media-man”が形成される
下段:LOVE DISTANCE(2008年)http://www.lovedistance.jp/
東京と福岡、遠距離恋愛中のカップルがクリスマス・イブに再会するまでを追う、リアルタイムなドキュメンタリー・サイト。クライアントが明かされるのは12月24日……という斬新なコンセプトだ。音楽は坂本龍一が担当



大学中退、フェードイン独立



──学校のほうは?

清水●その後、しばらく在籍してましたが、まったく行かなかったですね。

──デザイン事務所の現場を知って、どうでした?

清水●右も左もわからないから、最初は新鮮でしたね。デザインって、基本的に外から見るとセンス一発とか思われがちじゃないですか。でも、そこはエディトリアルが多い事務所だったので、定石というものがあるということを知って。大変だとは思いつつ、ある程度は「技術だな」と感じました。

──もう完全にDTP時代ですよね。

清水●はい。ただ、その事務所でWebも扱っていたんですね。現在、名の売れている方々が同時にいて、彼らがそっちを担当してて。私もWebをやりたかったのですが「印刷のイロハを教えてやろう」ということになっていたんです。でも、そうこうしているうちに体調を崩して辞めてしまって……というか、失恋したりとかなんですけど(笑)。

──ハハハ。

清水●そういうのに弱い体質なんです。で、いったん学生に戻るのですが、ちょうど印刷の仕事が来るようにもなりまして。

──デザイナーとして?

清水●特に営業していたわけではないのですが、なんとなく「やってみない?」という誘いをいただいて、書籍の装幀などをやるようになりました。それで小金を稼ぐようになるうち、学校にいられるタイムリミットの7年が過ぎてしまったんですね。

──中退を余儀なくされた、と。

清水●単位はあとふたつぐらいだったのですが……。母親は気にしていましたが、親父はちょっと変わり者なので「仕方ないか」と。

──同時に独立ということですか?

清水●まあ、フェードイン独立ですね。でも、紙のデザインが多かったので、Flashとか新しい技術は全然拾えてなくて。興味はあったのですが腑に落ちない。その後は印刷物やパッケージのデザインをやりながら、マガジンハウスに常駐するようになったんです。


次週、第3話は「背水の陣で飛び込んだ世界」を掲載します。

(取材・文:増渕俊之 写真:FuGee)


清水幹太さん

[プロフィール]

しみず・かんた●1976年東京都生まれ。東京大学在学中よりWeb制作会社、デザイン事務所での勤務を経て、大学中退後に独立。雑誌/書籍などのグラフィックデザイナーとして活動後、2005年「株式会社イメージソース」に入社。現在、同社のディレクター/デザインエンジニアとして勤務中。

http://www.imgsrc.co.jp




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