第3話 ネットの面白さに目覚める | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-
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転職はゴールではない 3年目の壁、5年目の転機

“仕事の壁”は誰にでもやってきます。そんなとき、ほかのみんなは、どうしているのでしょうか? このコーナーでは、今まさに壁を乗り越えようとしている人、乗り越えて一歩先に進んだ人など、クリエイティブ業界でがんばる仲間たちが登場。これまでの失敗談・成功談や現在の課題、そして将来像を語ります。今の仕事に前向きに取り組み、階段を一段登るためのヒントが得られるはずです!


第11回 株式会社 カヤック 大塚雅和さんの場合


株式会社カヤックのプログラマー・大塚雅和さんは、子どもの頃から「何かを作りたい」とつねに思っていた理系少年。大学を卒業し大手電機メーカーに就職したのも、そんな思いが原動力にあったからだ。あるとき今までと違う分野に配置転換されたのがきっかけでネットに興味を持つようになり、2006年11月、カヤックに転職を果たす。現在は新規事業開発を使命とするラボチーム「BM11」に所属し、数多くのサービスの企画・開発にたずさわる日々。中でも、自らが企画・開発した、声で遊ぶコミュニティサイト「こえ部」はリリースから1年でユーザ—数2万5千人を超えるサービスへと急成長を遂げている。そんな彼に、これまでの軌跡、そして現在、未来の仕事について、詳しくお話を伺ってみました。


第3話 ネットの面白さに目覚める

──希望どおり、カーナビの部署に配属され順風満帆だった大塚さんですが、転機はどこにあったのでしょうか。
大塚●その会社には結局8年いたのですが、最初の5年はカーナビの位置算出、後半は映像をやっていたんです。自動車の自動走行の基礎技術になるであろう「位置算出」は自分にとってすごくやりがいがあったんですが、時代の流れとともに会社の方針として「位置算出はある程度研究が進んだから、もういい。他社とのカーナビの差別化をするなら、もともと自社で持っている強み=映像を強化していこう」ということになって、位置算出のチームがほぼ解散状態に。それで僕は映像のチームに配属されることになって……。

──会社の論理としてはわからない話ではないですが……。
大塚
●僕は画質を向上させる技術開発のチームになって、そこそこやってはいたんですけど、そもそもの入社の動機は「自動走行をやりたい」ということだったし、うまく自分の気持ちを切り替えられないところがありました。それで自分の気持ちに素直になって考えてみたら、車の中で映像ってあんまり見ないなと思って(笑)。


──それは根本的な話ですよね。
大塚●もちろん使う人もいるだろうし、車の後ろの席で映像を楽しむ「リアシート・エンタテイメント」というのは、アメリカではけっこう流行っているんです。ただし、まだ日本の市場ではあまりこなれなくて……だから可能性があるといえばあるんですけど、個人的にはあまり面白くなくて。その一方でネットというのがあるなと思うようになっていました。当時から「車もネットにつながる」ということはよく言われていて、ちょうどまだ「位置算出」をやっている頃から、カーナビに携帯をつなげたりする便利なサービスが出て来て。その頃はまだ通信料が高くてできることは限られていたんですけど、そういうのは面白いなと思っていました。


──なるほど。

大塚●それで映像をやるようになったら、最新の映像に関する情報収集をネットで頻繁にやる必要が出てきまして、いろいろ調べていたら、ネット自体が面白いなと思うようになってきて。そうこうしているうちに、もしかしてネットの方が好きなんじゃないかと思うようになったんです。車がネットにつながるようになったら、ネットも勉強しておいた方がいいなとも思うようになって……。もともとホームページ自体はちょこちょこ作っていました。大学の頃には友達のバンドのページを作って、MP3をホームページで再生できるようにしたり。自分の簡単なホームページも作っていました。たまに思いついて日記を書くくらいのものでしたが。

──ネットの面白さに目覚めて、まずはどうされたのでしょうか。
大塚●普通の携帯やパソコン向けのサービスはどうやって作っているんだろうということで、ちょいちょい家で作ってみることにしたんです。最初に作ってみたのは自分の買ったCDや本を入力しておくようなデータベース。あるとき、自分が持っている本を間違えてもう一度買っちゃったことがあって。外出先でデータベースを携帯で見て、買ったか買わなかったかをチェックできるというようなものでした。そのデータベースに本やCDの感想なども入力しておいて。

───生活に密着したツールですね。
大塚●そうですね。それからおいしいところにゴハンを食べに行くのが好きだから、行きたいお店を登録しておいて、携帯で今自分がいちばんいるところに近い順に登録したお店を表示してくれるというようなものとか。その頃、ちょうどマッシュアップが出てきた頃で、Googleマップとマッシュアップというのが当時話題になっていたんですね。彼女ができたら彼女にも教えてあげて、彼女が行きたいお店も登録できるようにしたりして。

───それは便利!
大塚でもまあ、一つひとつのデータは手入力なんですけどね(笑)。他にもいろいろ作ってましたね。そうこうしているうちに、少しずつ自信がついてきました。身の周りにWebをやる人がいなくて、自分がどのくらいのレベルかわからなかったんですけど、あるサイトが海外のブックマークサイトで取り上げられたんです。それは写真の共有コミュニティサイト「Flickr(フリッカー)」の写真を色で検索できるようにしたサイト。グラデーションになっている色の表の中から色を選ぶと、その色の写真だけがいっぱい抽出されるようなものでした。これは、カヤックに入社するときに履歴書と一緒に制作物として提出しました。

───カヤックについては、いつ頃からご存知だったのですか。
大塚2003年頃、たしか「T-SELECT」というサービスで初めて知った覚えがあります。ユーザ—がデザインした画像を一週間掲載してくれて、欲しい人が集まったらある一定人数集まったら製品化できるというサービスで、単純に面白いなと。それでカヤックのメールマガジンをとったりしていたんですけど、やたら来ないメルマガで(笑)。かなり不定期だったのを覚えています。それでネットに興味が出て来た頃に、そう言えば……とカヤックのことを思い出しました。

(取材・文:草野恵子 撮影:谷本夏)


株式会社カヤック
http://www.kayac.com/
1998年の合資会社カヤック設立をスタートとし、2005年に株式会社化。創業当初より「面白法人 カヤック」と自らを称し、つねに新しいサービス、新しい会社の在り方を求め、次々とユニークな試みを加速度的に展開している。カヤックの経営理念は「つくる人を増やす。」——その理念を体現するかのように、驚異的な数のサービスを毎年リリース、数多くの賞を受賞している。




面白法人カヤック

http://www.kayac.com/

次週は「第4話 自分がやりたいことを最重要視する」についてお届けします。



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