「Web Directions East 2009」イベントレポート
「Web Directions East 2009」イベントレポート
“Webの可能性を活かし未来を創る人”と“世界のキーパーソン”が集結するカンファレンス・ワークショップ「Web Directions East2009(http://east.webdirections.org/wde/2009/)」が2009年11月11日~13日に東京・千代田区のベルサール九段で開催された。Web業界の最先端で国際的に活躍しているゲストを招き、次世代のWeb技術やアイデアに触れることができるもので、2004年にオーストラリアから始まった世界的なカンファレンスだ。日本では2008年に初開催され、今回は2回目となる。11日・12日はワークショップが行われた。13日のカンファレンスは「デザイントラック」と「ビジネストラック」のふたつにわかれており、ここではデザイントラックをレポートしていく。
(取材・文=川俣綾加)
オープニングキーノートでは「Google Waveの裏舞台」をテーマに、Google Waveの魅力から仕事に対する姿勢まで語ったのは、Google Waveのインターフェイスデザインを担当したキャメロン・アダムス氏。まず、Google Waveとは一体どんなものなのだろうか。「ドキュメント作成、リアルタイムでのコミュニケーション、コンテンツの同時編集が可能で、特に革新的なのはドキュメントをひとつのサーバに入れて、それに誰でもアクセスできること。また、ドキュメントにアクセスしながらディスカッションできること。“DISCUSSION”、“DOCUMENT”、“CENTRALIZED”の三拍子が揃ったものがGoogle Waveです」と話した。たとえば資料を作成し4~5人にメールに添付し送ると、これらのものをプリントアウトして確認したりと最終的には仕事をさらに大変なものにするかもしれない。こういった複数のアプリケーションを使用して行う作業を、Google Waveなら簡略化することができるのだ。
Google Waveの機能や利便性について語るキャメロン・アダムス氏。複数のアプリケーションを用い、誰かが他人の意見を集約し、さらにそれを確認にまわすといったやりとりではなく、リアルタイムでのコミュニケーションと作業を実現したことは仕事のあり方を大きく変える可能性を秘めていると語った
具体的には、チャット形式でドキュメントを見ながらディスカッションし、ドキュメントの修正もすぐさまその場で行える。どのような経緯でその結論に至ったのか、チャットからドキュメント作成までの履歴も全て保存できるのだ。アダムス氏は、「流体となって、チャットからドキュメントへ、ドキュメントからチャットへすぐに流れていける」と工程のスムーズさを強調した。
また、アダムス氏はこうも語った。「Google Waveについては“INNOVATION”、革新的だと言われています。しかし、INNOVATIONには生まれた負のものに対してツケを払う人がいるものです。だから、私は“AWESOME”のほうがしっくりくる気がします」。さらに、倫理的な不利益を働かないこと、クリエイターの愛、価値があるものや利益があるものを創造することの4つを目指せば、AWESOMEなものになっていくと熱く語った。
次のカンファレンスでは、Webのビジュアルデザインで高い評価を得ているアンディ・クラーク氏が、より多くの時間を創造するために、時代遅れのワークフローを破棄すべきだとした。デザイナー側と開発者側で時間をむだにしないようなやりとりを行い、クリエイティブな部分に注力すれば質の向上になる。そのためにクラーク氏は、「短期的なフォーカスでデザインすること」をポイントとして挙げた。作業を1時間行ったら次にほかの仕事をこなし、休憩して再度取り組むことにより、違った視点でデザインが見られる。また、多くの人に見てもらうことも利点があるようだ。机上での作業が多いWebデザインだが、机に座って考えるだけでなく、時には休憩をしたり人と話すことが大切だとしていることに、学ぶべき要素があるように思えた。
ほかには、クリスチャン・クルミッシュ氏による「社会的なウェブインターフェイスの設計」、ダグラス・クロックフォード氏の「Ajaxアプリケーションの安全性」、ニコール・サリバン氏による「高速ウェブアプリのためのCSSパフォーマンス」について、同じWebでも多方面にわたる話を聞くことができた。クロージングキーノートでは、デボラ・シュルツ氏が、美しい写真やデザインを見せるにとどまらず、いかに楽しく表現して感情的に動けるWebがつくれるかがキーになってくると締めくくった。
最新の技術などを披露するこのカンファレンスにおいて、人に重点を置いた話や仕事のありかたそのものについての話が多く語られていたことは、とても意義深いように思える。主催者側は、来年のWeb Directions Eastでは、開催期間を長く、多くの人が訪れるものにしたいとのことだった。「Web Directions East 2010」の情報が発表されるのが今から待ち遠しい。