「Google DevFest 2010 Japan」イベントレポート(2/2)
Googleが開催する開発者向けイベント「Google DevFest 2010 Japan」レポート(2/2)
日本では初となる、Google主催の開発者向けイベント「Google DevFest 2010 Japan」(http://sites.google.com/site/devfest2010japan/)が、東京と京都にて開催された。同社が出題した問題に高い得点で回答した人から優先的に参加できるという特殊な条件にも関わらず、400人以上の参加者が集まったことからも、注目度の高さがうかがえる。ここでは、各セッションの様子を紹介していく。
■前編はこちら
Googleが開催する開発者向けイベント「Google DevFest 2010 Japan」レポート(1/2)
取材・文=川俣綾加、編集部
楽しみながらAndroidアプリケーションを開発する
基調講演のあとにはじまったセッションは、日本Androidの会に所属する矢野りん氏とadamrocker氏によるセッション「たのしい Android:カスタムUIでAndroid アプリにワクワク感を加えよう」。Androidアプリケーションを開発にあたって、矢野氏がデザイン、adamrocker氏がプログラミングのポイントを実際の作例を紹介しながら解説していく流れだ。今回はインタラクションとグラフィックでAndroidアプリケーションの世界観を醸し出す手順が紹介される。動きに関する微調整や背景画像などを組み合わせていき、ユニークな動きのAndroidアプリケーションが完成するようすに参加者の視線は釘付けとなっていた。
その後の質疑応答ではAndroidアプリケーション開発にあたってのワークフローや細かな動きについてなどの質問が交わされたりと、熱の入ったやりとりが行われていたのが印象的であった。
プログラミングをよりスムーズにするためには?
ソースコードがぐちゃぐちゃに絡みあった状態のことをさす「スパゲッティ状態」を回避し、いかにスムーズなプログラミングを実現するかは開発者にとって命題だ。HTML5開発者コミュニティ「HTML5-developers-jp」の管理人を務める白石俊平氏は、独自の見解を述べた。
「プログラムの複雑度が高くなるにつれて、破たんを招く可能性も高くなります。それを避けるために今後はロジックとUIの分離が進み、UIではCSSやアクセシビリティ、ロジックではアルゴリズムや通信処理などを担当することになるのではないでしょうか。同期APIを利用したプログラミングも実現でき、ビジネスロジックの未熟なアルゴリズムでもユーザビリティにほとんど影響はありません。プログラミングが非常に楽なものになるはずです」
さらに、白石氏はHTML5 Web messaging向けフレームワークを紹介。オープンソースを取得できるURLが公開され、会場では参加者が持込んだPCを使って、その場でアクセスしている姿も多く見受けられるほどだった。
HTML5の登場で知識よりも柔軟な発想が求められる
次に登壇したのは、HTML5の情報発信や仕様の日本語訳を手がける(有)futomiの羽田野太巳氏。「Web Appのパラダイムシフト」と題して、File APIによって今後の技術がどのように革新されていくか語った。
「File APIによって、デスクトップとWebブラウザの区別がなくなるだけでなく、PC上の作業をすべてブラウザ上で代行できるようになるかもしれません。また、さまざまな分野にも応用可能です。たとえばテレビ、カーナビ、ゲームコンソール……モバイルはすでにそうなっていますよね。オープンソースが公開されることで“知っている”“技術を蓄えている”ことよりも、枠にとわわれない発想で楽しい、豊かなアプリケーションを生み出すことが大切です」
羽田野氏の技術だけでなく柔軟な発想が求められる、という考え方に多くの参加者が真剣な表情で聞き入り、中には小刻みにうなずく人も。会場には引き締まった空気が漂った。
編集の衝突を回避する仕組みを実現したGoogle Wave
京都のサテライト会場からは、中継を通して(株)ルーツ所属のソフトウエアエンジニア・北村研二氏によるセッション「Google Wave API による Google Waveの拡張」が行われた。
「リアルタイムコミュニケーションツールでは、同じ個所を複数人で編集すると『編集の衝突(コンフリクト)』が発生する。Google Waveのもっとも革新的な点、それは『操作変換』の仕組みを取り入れたところです。今までにないリアルタイム性の高いコミュニケーションツールとして、ぜひ役立ててほしいです」
さらに、Google Waveの拡張方法として新たなツールを紹介した。
「Waveに貼付けできる小さなアプリケーション『Waveガジェット』と、ユーザーのWaveへの操作をイベントとして駆動し、ドキュメントに自動処理を行う『Waveロボット』のふたつがあります。みなさんで開発・公開できるので、ぜひご活用ください」
最後に特定の人物が何かを生み出してトップダウン式に発表するのではなく、アイデアひとつで誰もがツールを生み出せる、と締めくくった。
また、Q&Aではオーストラリアからの中継でモリスジェー氏を司会にパメラ・フォックス氏らによる質疑応答が行われ、「日本の開発者に求められているものは何か?」「いま、もっとも力を入れて開発しているものは何か?」などふだん知ることのできない質問ができるとあり、注目度が高まる中でやり取りが行われた。
質疑応答の様子
大量データの高速処理を実現したTask Queue
(有)スティルハウスのソフトウエアエンジニア・佐藤一憲氏からは、Google App Engineの「Task Queue」の利便性、その仕組みなどの紹介が行われた。
「何百万件という大量データの検索処理にTask Queueは最適です。並列クエリを使うことで、何倍ものパフォーマンス向上を得られます」
会場では並列処理やどのようにプログラムを構成するかなど詳細な解説が行われ、テンポよく進む説明に参加者が見入っていた。
全てのセッションが終了した後は、参加申込みで行われたクイズの回答・解説や質疑応答が行われたほか、ゲスト開発者による近況やオフィスでの一日の紹介が行われ、質疑応答では参加者から途切れることなく質問が飛び交った。開発者を主体とした本イベントはまだ珍しいのかもしれないが、このようなイベントがより重要性を増していくことはまちがいない。今後の動向にも注目したい。
座席数を上回る参加者で会場は埋め尽くされた
■後編はこちら
Googleが開催する開発者向けイベント「Google DevFest 2010 Japan」レポート(2/2)
日本では初となる、Google主催の開発者向けイベント「Google DevFest 2010 Japan」(http://sites.google.com/site/devfest2010japan/)が、東京と京都にて開催された。同社が出題した問題に高い得点で回答した人から優先的に参加できるという特殊な条件にも関わらず、400人以上の参加者が集まったことからも、注目度の高さがうかがえる。ここでは、各セッションの様子を紹介していく。
■前編はこちら
Googleが開催する開発者向けイベント「Google DevFest 2010 Japan」レポート(1/2)
取材・文=川俣綾加、編集部
楽しみながらAndroidアプリケーションを開発する
基調講演のあとにはじまったセッションは、日本Androidの会に所属する矢野りん氏とadamrocker氏によるセッション「たのしい Android:カスタムUIでAndroid アプリにワクワク感を加えよう」。Androidアプリケーションを開発にあたって、矢野氏がデザイン、adamrocker氏がプログラミングのポイントを実際の作例を紹介しながら解説していく流れだ。今回はインタラクションとグラフィックでAndroidアプリケーションの世界観を醸し出す手順が紹介される。動きに関する微調整や背景画像などを組み合わせていき、ユニークな動きのAndroidアプリケーションが完成するようすに参加者の視線は釘付けとなっていた。
その後の質疑応答ではAndroidアプリケーション開発にあたってのワークフローや細かな動きについてなどの質問が交わされたりと、熱の入ったやりとりが行われていたのが印象的であった。
矢野りん氏とadamrocker氏 |
Androidアプリケーションの開発工程が紹介された |
プログラミングをよりスムーズにするためには?
ソースコードがぐちゃぐちゃに絡みあった状態のことをさす「スパゲッティ状態」を回避し、いかにスムーズなプログラミングを実現するかは開発者にとって命題だ。HTML5開発者コミュニティ「HTML5-developers-jp」の管理人を務める白石俊平氏は、独自の見解を述べた。
「プログラムの複雑度が高くなるにつれて、破たんを招く可能性も高くなります。それを避けるために今後はロジックとUIの分離が進み、UIではCSSやアクセシビリティ、ロジックではアルゴリズムや通信処理などを担当することになるのではないでしょうか。同期APIを利用したプログラミングも実現でき、ビジネスロジックの未熟なアルゴリズムでもユーザビリティにほとんど影響はありません。プログラミングが非常に楽なものになるはずです」
さらに、白石氏はHTML5 Web messaging向けフレームワークを紹介。オープンソースを取得できるURLが公開され、会場では参加者が持込んだPCを使って、その場でアクセスしている姿も多く見受けられるほどだった。
白石俊平氏 |
白石氏の実体験をもとに、今後の予想を披露 |
HTML5の登場で知識よりも柔軟な発想が求められる
次に登壇したのは、HTML5の情報発信や仕様の日本語訳を手がける(有)futomiの羽田野太巳氏。「Web Appのパラダイムシフト」と題して、File APIによって今後の技術がどのように革新されていくか語った。
「File APIによって、デスクトップとWebブラウザの区別がなくなるだけでなく、PC上の作業をすべてブラウザ上で代行できるようになるかもしれません。また、さまざまな分野にも応用可能です。たとえばテレビ、カーナビ、ゲームコンソール……モバイルはすでにそうなっていますよね。オープンソースが公開されることで“知っている”“技術を蓄えている”ことよりも、枠にとわわれない発想で楽しい、豊かなアプリケーションを生み出すことが大切です」
羽田野氏の技術だけでなく柔軟な発想が求められる、という考え方に多くの参加者が真剣な表情で聞き入り、中には小刻みにうなずく人も。会場には引き締まった空気が漂った。
羽田野太巳氏 |
今後、開発者に求められるものは何かを紹介した |
編集の衝突を回避する仕組みを実現したGoogle Wave
京都のサテライト会場からは、中継を通して(株)ルーツ所属のソフトウエアエンジニア・北村研二氏によるセッション「Google Wave API による Google Waveの拡張」が行われた。
「リアルタイムコミュニケーションツールでは、同じ個所を複数人で編集すると『編集の衝突(コンフリクト)』が発生する。Google Waveのもっとも革新的な点、それは『操作変換』の仕組みを取り入れたところです。今までにないリアルタイム性の高いコミュニケーションツールとして、ぜひ役立ててほしいです」
さらに、Google Waveの拡張方法として新たなツールを紹介した。
「Waveに貼付けできる小さなアプリケーション『Waveガジェット』と、ユーザーのWaveへの操作をイベントとして駆動し、ドキュメントに自動処理を行う『Waveロボット』のふたつがあります。みなさんで開発・公開できるので、ぜひご活用ください」
最後に特定の人物が何かを生み出してトップダウン式に発表するのではなく、アイデアひとつで誰もがツールを生み出せる、と締めくくった。
また、Q&Aではオーストラリアからの中継でモリスジェー氏を司会にパメラ・フォックス氏らによる質疑応答が行われ、「日本の開発者に求められているものは何か?」「いま、もっとも力を入れて開発しているものは何か?」などふだん知ることのできない質問ができるとあり、注目度が高まる中でやり取りが行われた。
北村研二氏 |
Google Waveの操作画面 |
質疑応答の様子
大量データの高速処理を実現したTask Queue
(有)スティルハウスのソフトウエアエンジニア・佐藤一憲氏からは、Google App Engineの「Task Queue」の利便性、その仕組みなどの紹介が行われた。
「何百万件という大量データの検索処理にTask Queueは最適です。並列クエリを使うことで、何倍ものパフォーマンス向上を得られます」
会場では並列処理やどのようにプログラムを構成するかなど詳細な解説が行われ、テンポよく進む説明に参加者が見入っていた。
佐藤一憲氏 |
Task Queueのデモ画面 |
全てのセッションが終了した後は、参加申込みで行われたクイズの回答・解説や質疑応答が行われたほか、ゲスト開発者による近況やオフィスでの一日の紹介が行われ、質疑応答では参加者から途切れることなく質問が飛び交った。開発者を主体とした本イベントはまだ珍しいのかもしれないが、このようなイベントがより重要性を増していくことはまちがいない。今後の動向にも注目したい。
座席数を上回る参加者で会場は埋め尽くされた
■後編はこちら
Googleが開催する開発者向けイベント「Google DevFest 2010 Japan」レポート(2/2)