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ついに始動したアップルの電子マネー戦略

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ついに始動したアップルの電子マネー戦略


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ついに始動したアップルの電子マネー戦略


2010年8月30日
TEXT:大谷和利(テクノロジーライター、原宿AssistOnアドバイザー)


この8月に米Apple社は、モバイルコマース関連部門のプロダクトマネージャとして、ベンジャミン・ビジャーなる人物を雇い入れた。

同氏のLinkedinページによれば、彼は、モバイルソフトウエア、セキュアトランザクション、NFC(Near Field Communication)、SIMカード、メモリカード、JME/J2ME(Java Micro Edition/Java 2 Micro Edition)の専門家である。

また、ビジャーの職歴は、米PayPal社や米Starbucks社のためのモバイルペイメントシステムや、モバイルバンキングプラットフォーム分野のリーダー的立場にある米mFoundry社でモバイルウォレット&ペイメントとNFC技術の開発に携わるなど輝かしいものであり、世界中のモバイルキャリア、メーカー、金融会社に強固なネットワークを持つとされる。

「NFC」は、ソニー(株)とNXPセミコンダクターズ(旧フィリップス・セミコンダクターズ)が開発した近距離無線通信規格であり、2003年12月に「ISO/IEC 18092」として標準化された。ソニー(株)はご存じのようにFeliCaの開発元だ。一方のNXPも、「MIFARE」(もしくは、TypeA[ISO/IEC 14443 TypeA])と呼ばれる非接触ICカード技術を開発し、普及させている。

交通系の非接触ICカードに限れば、日本でこそFeliCaが支配しているが、それでも流通数は約2億枚(トッパン・フォームズ(株)によるデータ)。これに対して「MIFARE」は世界で約12億枚(同)が流通しているとされる。その両社が支持し、FeliCaとMIFAREの双方に対して互換性を持つNFCは、確実に次世代近距離無線通信規格のデファクトスタンダードになると考えられている。

となれば米Apple社の狙いはただひとつ。筆者がiPhone普及後のシナリオとしてさまざまな記事の中で触れてきた、世界規模の電子マネー戦略をiPhoneベースで行うという計画に、いよいよ着手したと考えてよいだろう。

NFCでは、対応ICチップ搭載機器がリーダーとライターを兼用でき、双方向通信に対応する。また、単純なデータだけでなくファイル通信の機能もサポートされており、テキスト、写真、ビデオデータなども転送可能だ(通信速度は最大424kbps)。

これらの特性も米Apple社にとっては魅力的であり、iPod/iPhone/iPadとMac間のワイヤレスデータシンクロにも利用される公算が大きい。その場合、NFCを拡張して、BluetoothやWi-FIに対するハンドオーバー機能を追加すれば、NFC経由で認証のみ行い、データ送信自体はBluetoothあるいはWi-FIに任せるという方法を採ることもできる。

iPhoneにNFCが搭載されるとき、もはやおサイフケータイでないことはiPhoneの弱点ではなく、逆に世界で通用するモバイルペイメントシステムに対応しているかどうかが、スマートフォンを選択する際の基準のひとつとなるに違いない。


ソニーのFericaのサイト MIFARE公式サイト
ソニー(株)のFericaのサイトMIFARE公式サイト



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[筆者プロフィール]
おおたに・かずとし●テクノロジーライター、原宿AssistOn(http://www.assiston.co.jp/) アドバイザー。アップル製品を中心とするデジタル製品、デザイン、自転車などの分野で執筆活動を続ける。近著に『iPodをつくった男 スティーブ・ ジョブズの現場介入型ビジネス』『iPhoneをつくった会社 ケータイ業界を揺るがすアップル社の企業文化』(以上、アスキー新書)、 『Macintosh名機図鑑』(エイ出版社)。

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