好調を維持する日米ベンチャー市場の差はなにか?
好調を維持する日米ベンチャー市場の差はなにか?
2013年11月5日
TEXT:小川 浩(シリアルアントレプレナー)
2013年11月4日付けの日本経済新聞の記事によると、米国でのIPO件数が9年ぶりの高水準に達しているという。7~9月のIPO件数は昨年比で2.6倍、実数でいうと20社超となっており、調達額は26億7720万ドルに達する。さらに今月にはTwitterのIPOが控えており、市場はより活性化するものと思われる。
日本はどうかというと、アライドアーキテクツ、ホットリンクなどの上場が決まっており、年内にあと20社以上の駆け込みIPOが噂されているなど、同じく好調である。
非公開スタートアップの資金調達をみても、米国では僕が前からイチ押ししているSnapchatやPinterestらが数十億ドルの時価総額を実現し、数億ドルを調達している。日本では、絶対額の激しい見劣り感は拭えないものの、Squareクローンのコイニーが今年13億円もの大型調達を果たしているし、鮮魚流通スタートアップの八面六臂が1.5億円、旅行情報のTrippieceが2億円、学習サービスのSchooが同じく1.5億円など、それなりに活況だ。僕が手がけているソーシャルネットワークコミュニティプラットフォームのリボルバーも、この1年で合計1億円調達した。
つまり、金額そのものの圧倒的な彼我の差は否めないものの、米国も日本もアップトレンドであることは変わらず、ベンチャー市場は明るい2014年を迎えられそうな流れにある。
TEXT:小川 浩(シリアルアントレプレナー)
2013年11月4日付けの日本経済新聞の記事によると、米国でのIPO件数が9年ぶりの高水準に達しているという。7~9月のIPO件数は昨年比で2.6倍、実数でいうと20社超となっており、調達額は26億7720万ドルに達する。さらに今月にはTwitterのIPOが控えており、市場はより活性化するものと思われる。
日本はどうかというと、アライドアーキテクツ、ホットリンクなどの上場が決まっており、年内にあと20社以上の駆け込みIPOが噂されているなど、同じく好調である。
非公開スタートアップの資金調達をみても、米国では僕が前からイチ押ししているSnapchatやPinterestらが数十億ドルの時価総額を実現し、数億ドルを調達している。日本では、絶対額の激しい見劣り感は拭えないものの、Squareクローンのコイニーが今年13億円もの大型調達を果たしているし、鮮魚流通スタートアップの八面六臂が1.5億円、旅行情報のTrippieceが2億円、学習サービスのSchooが同じく1.5億円など、それなりに活況だ。僕が手がけているソーシャルネットワークコミュニティプラットフォームのリボルバーも、この1年で合計1億円調達した。
つまり、金額そのものの圧倒的な彼我の差は否めないものの、米国も日本もアップトレンドであることは変わらず、ベンチャー市場は明るい2014年を迎えられそうな流れにある。
ただ、その金額の規模の違いこそが、じつは非常に大きな意味をもっていることを我々は軽視しがちだ。まず、米国企業は当たり前ながら英語によるサービスを行なっており、これが絶対的な金額差を生んでいる。英語を理解する人口は20億人近い。対して日本語は1.2億人であり、16~17倍の開きがある。さらに国別でいうと英語を公用語または準公用語にしている国は80カ国ほどあるが、日本語はもちろん日本だけ。この差は80倍だ。つまり、この差異が上述の絶対的な金額差を生んでいる。市場の大きさが圧倒的に違うのだ(ちなみに中国は13億人)。
さらに、我々はアジア人種だから、アジア圏では米国より有利だと考えがちだが、アジア圏でもっとも使われている言語は中国語であり、その次が英語だ。つまり、テキストを介して情報を伝達するWebの世界にあって、地理的な要素より言語的な要素のほうが圧倒的に大きな意味をもつ。
アジア圏には40億を超える人口があるうえに、インターネットやスマートフォンの普及率もまだ高くないから、これからの成長エリアだ。だから米国のスタートアップは、巨額の資金調達を実現したあとは多言語化をはかり、アジア市場への進出を狙う。同時に、アジア圏にも勃興しはじめたスタートアップブームにより、中国系を中心とした起業家たちは中国語と英語を流暢に操りつつ、日本を素通りして巨大な市場での成長を目指しはじめている。この動きが顕著に目立つのがシンガポールで、あの小豆島ほどの小さな国家の中で、中国語と英語でスタートアップを立ち上げることで十分な試験を行いつつ、巨大市場を目指して資金調達のチャンスも得られる。なお日本の起業家たちもシンガポールに拠点をつくろうとする向きがあるが、シンガポールは世界進出のリトマス試験紙として考えるべきだという視点をもっていないように思われる。
日本のスタートアップは、日本国内でまず成長してから海外に出ようと考えるが、その時間軸では米国のスタートアップには規模で負け、アジアのスタートアップには速度で負ける。このことを肝に銘じない限り、世界に通じるベンチャーへの道は閉ざされてしまうのだ。
さらに、我々はアジア人種だから、アジア圏では米国より有利だと考えがちだが、アジア圏でもっとも使われている言語は中国語であり、その次が英語だ。つまり、テキストを介して情報を伝達するWebの世界にあって、地理的な要素より言語的な要素のほうが圧倒的に大きな意味をもつ。
アジア圏には40億を超える人口があるうえに、インターネットやスマートフォンの普及率もまだ高くないから、これからの成長エリアだ。だから米国のスタートアップは、巨額の資金調達を実現したあとは多言語化をはかり、アジア市場への進出を狙う。同時に、アジア圏にも勃興しはじめたスタートアップブームにより、中国系を中心とした起業家たちは中国語と英語を流暢に操りつつ、日本を素通りして巨大な市場での成長を目指しはじめている。この動きが顕著に目立つのがシンガポールで、あの小豆島ほどの小さな国家の中で、中国語と英語でスタートアップを立ち上げることで十分な試験を行いつつ、巨大市場を目指して資金調達のチャンスも得られる。なお日本の起業家たちもシンガポールに拠点をつくろうとする向きがあるが、シンガポールは世界進出のリトマス試験紙として考えるべきだという視点をもっていないように思われる。
日本のスタートアップは、日本国内でまず成長してから海外に出ようと考えるが、その時間軸では米国のスタートアップには規模で負け、アジアのスタートアップには速度で負ける。このことを肝に銘じない限り、世界に通じるベンチャーへの道は閉ざされてしまうのだ。
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[筆者プロフィール]
おがわ・ひろ●シリアルアントレプレナー。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)、『仕事で使える!「Twitter」超入門』(青春出版社)、『ソーシャルメディアマーケティング』(ソフトバンククリエイティブ/共著)などがある。
twitter:http://www.twitter.com/ogawakazuhiro
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