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iOSインターフェイスとiPhone保護ケースの微妙な関係

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iOSインターフェイスとiPhone保護ケースの微妙な関係

iOSインターフェイスとiPhone保護ケースの微妙な関係

2014年11月28日
TEXT:大谷和利(テクノロジーライター、原宿AssistOnアドバイザー)


iPhone 6/6 Plus
iPhone 6/6 Plus

本来、筆者は、iPhoneに保護ケースをつけずに使いたい派である。そのほうが薄さや軽さ、そして表面の触感など、製品の魅力を完全な形で味わえるからだ。

しかし、さすがにiPhone 6 Plusは片手持ちでの操作時に不安定になることがあるので、ふたつの選択肢を考えてみた。

ひとつめは、片手持ちでも安定した操作を可能にするケースの発案。すでに、その種のケース(またはアクセサリ)は市場に存在するが、個人的にはよりすぐれた解があると思い、そのアイデア実現に向けて少しずつだが動いている。

ただし、完成にはまだ時間がかかりそうなので、短期的にはもうひとつの選択肢を優先することにした。ケースの利用が不可避なのであれば、保護以外にもなんらかの機能性をもつ製品を利用してみるという案だ。具体的には、これまでは別に持ち歩いていた交通系のICカードを内蔵可能な、さるブランドのケースを購入したのである。

あえて「さるブランド」としたのは、実際に使ってみて気づいたマイナスポイントを、ほかの多くのケースも共有していると思われるためで、ここで特定のブランド名を挙げるのは本意ではないからだ。

もちろん、当初の目的であったICカードの内蔵と利用については問題なく機能し、満足している。しかし、購入後ほどなくして気づいたのは、ケースなしのときには意識せずに利用できていたエッジスワイプジェスチャーが、意図的に指を当てないと使いにくくなったという点だった。

iOS 7から実装されたエッジスワイプジェスチャーは、メールアプリやSafariなどで、指を左右のページや階層間の移動をジェスチャーで行う場合に、画面の端から内側に向かうスワイプでサポートするものだ。

しかし、どのあたりが「画面の端」の範囲なのかが明確にはわからない。そこで、確実にエッジスワイプだと認識させるために、現実には無意識のうちに「画面外から」内側に向かってスワイプしているユーザーが少なくないように思う(少なくとも、筆者は自然とそういう操作方法を身につけた)。

iPhone 6/6 Plusが、スクリーンをカバーするガラスの外周部まで丸めて、ボディサイドの金属部分と滑らかにつながるようなデザインを採用したのは、左右の縁部分の幅を極力細くしながらも、この画面外からのエッジスワイプをスムーズに行えるようにするための工夫だったと考えられる。

ところが多くの保護ケースは、万が一、iPhoneがスクリーン側から落下した場合にもガラス面が傷つきにくいように、画面の周囲を盛り上げた設計を採用している。この盛り上げの高さや断面形状によっては、画面の端に指をタッチしにくく、エッジスワイプを行いづらくなってしまうのだ。

これに似たケースの問題は、現行のiPod touchに移行する際のサードパーティ製品のデザインにも起こったことがあった。最近では、リークした外装の図面データを基に、Apple製品の発売と同時(あるいは、それ以前)にケースの展示や販売を行うアクセサリメーカーが存在するが、そのケースもそうして開発されたものだった。

最新のiPod touchには、背面の隅にポップアップ式のストラップホールが備わっているが、図面の該当部分は単に円形のマーキングのようにしか見えない。しかも、Appleは過去のモバイルデバイスにストラップホールを設けたことがなかったので、件のアクセサリメーカーは、よもやそのようなポップアップ機構が隠されているとは気づかず、早めに製造開始することを優先して、そこに穴のないケースをつくってしまったわけだ。

また、iPhone 5/5S用の、とある自転車ハンドルマウントケースは、蓋を閉じたときに環境光センサーを覆ってしまい、周囲が暗くなったとシステムが勘違いして、スクリーンの明るさを自動的に暗くしてしまう症状が発生した。

どれも、ケースメーカーの担当者が実際に製品を使い込むことなく製品をデザインしたことに起因する初歩的なミスだったといえる。

ちなみにiPhone 6/6 Plusの場合、Appleの純正ケースも、リム部分がスクリーン面より高い。だが、縁にかかる部分の幅を微妙に狭くすることで、エッジスワイプが機能しやすくしてあるようだ。

それでも、滑らかなガラス面の縁からスワイプするのに比べるとユーザービリティが劣ることは明白であり、外装デザインで意図した使い勝手の向上を、ケースがスポイルする結果となっている。

デザイン部門のトップであるジョニー・アイブも、このあたりの落とし所をどうすべきか迷ったことだろうが、純正アクセサリであればこそ、もうひと工夫あっても良かったように感じる。

幸い、筆者が購入したケースはシリコン製で加工が容易だったため、画面外からのエッジスワイプを行いやすいよう左右2個所の一部を切り取ってカスタマイズし、今は快適に使えている。

今後もインターフェイスやハードウエアの進化に伴って、思いもよらぬ仕様やジェスチャーが追加されていくことだろう。ケースメーカーが先行者利益を得るために製品開発を急ぎたい気持ちは理解できるものの、これからは単に外装にフィットさせるだけでなく、新製品の実物を目の前にしてすべてのことが正しく、使いやすく機能するかを確認したうえで出荷してほしいと願う。

それを怠ったことで、結局、不利益を被るのは顧客たるユーザーであり、それがひいてはメーカー自身の評価につながっていくのだから。




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[筆者プロフィール]
おおたに・かずとし●テクノロジーライター、原宿AssistOn(http://www.assiston.co.jp/) アドバイザー。アップル製品を中心とするデジタル製品、デザイン、自転車などの分野で執筆活動を続ける。近著に『iPodをつくった男 スティーブ・ ジョブズの現場介入型ビジネス』『iPhoneをつくった会社 ケータイ業界を揺るがすアップル社の企業文化』(以上、アスキー新書)、 『Macintosh名機図鑑』(エイ出版社)、『成功する会社はなぜ「写真」を大事にするのか』(講談社現代ビジネス刊)。

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