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第4のSNS?ニッチなニーズをUIで魅せる「Peach」の世界観

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第4のSNS?ニッチなニーズをUIで魅せる「Peach」の世界観

第4のSNS?ニッチなニーズをUIで魅せる「Peach」の世界観



Amebaクリエイティブディレクターが語る
スマホアプリのデザイントレンド


2016年2月24日
TEXT:佐藤 洋介(株式会社サイバーエージェント)


日々進化するデバイスやユーザーに合わせ、スマホアプリのデザイントレンドの移り変わりは非常に早い。本コラムでは、アップデートによって進化を遂げたサービスUIや新機能、新サービスなどにフォーカスし、より良いユーザー体験を提供するうえでの工夫についてサービスごとに考察する。今回は、今年初めにリリースされ、アメリカで話題になっているメッセージアプリ「Peach — a space for friends」の公式アプリを取り上げる。

このアプリはVineのファウンダーであるDom Hofmann氏が手がけたアプリで、数あるメッセンジャー系アプリの中でもよりクローズドな設計となっている。このアプリで注目すべきは「気取らない世界観」と「入力」にフォーカスしたUI上の工夫であり、中でも「マジックワード」と呼ばれるコマンド入力は新たな操作体験を演出している。早速、気になるその中身をUIに沿ってひも解いてみる。

「Peach — a space for friends」
  ●iOS版アプリはこちら




UIの柔らかい質感とレイヤー構造が織りなす「安心感」

まずはPeachの気取らないそのUIの世界観をひも解いてみる。大きく3つの画面(Friends of Friends、Home、Post Feed)で構成されているこのアプリだが、ここで注目すべきは各UIパーツが織りなす柔らかな質感である。特にHomeにあたる画面では、丸みのあるボタンや、一見影にも見える枠を付けたゆとりあるカード状のリストと下部の透過グラデーション、さらにはユーザーに馴染みのあるデバイス絵文字やポップなアイコンを用いるなど、画面を構成する各UIパーツがピンクの背景色と相まって全体的に「柔らかい」印象を与えている。



ユーザーの使い心地を左右する1つの要素として、UIがもたらす「安心感」というものがある。アプリの「安心感」は、「操作しなくてもパッと見て理解出来るシンプルな設計」に起因することが多いが、Peachのように見た目の印象から「安心感」を訴求することもできる。そういった意味でPeachのUIが優れている点としては、「柔らかい質感」だけでなく、立体的なパーツとフラットなパーツを明示的に分け、レイヤー構造をしっかりと伝えることで機能を「簡単」に見せ、操作におけるユーザーの「安心感」を助長するために工夫されている。


つぶやきの気軽さを助長する「マジックワード」機能

このサービスでは、他のSNSと連携して友達とつながるような機能は用意されておらず、ユーザー名やアドレス帳からつながる仕組みとなっている。これは、サービスのコンセプトとして気軽な投稿にフォーカスしているためであり、近しい人とのクローズドなやり取りを想定しているからだろう。まるで友人同士の普段の会話のような、気兼ねなくつぶやくためのUI上の工夫として、「マジックワード」と呼ばれる機能が一役買っている。



上の図は自分のポストが並ぶフィード画面だが、下部のフォームからつぶやき入力時に、マジックワードの頭文字にあたるアルファベットが入力された際に、中央にコマンドの候補が出現する。上のサンプルでは「d」を入力し、「draw : Draw something」のコマンドを使用した例であるが、これ以外にもGIF画像を投稿したり今日の天気を投稿するものや、ミニゲームが起動するコマンドなどが用意されている。

これらの機能は一見ただのコマンド入力と見えるかもしれないが、マジックワードの中にはバッテリーの残量を投稿するような一見変わったコマンドも用意されている。これは、このサービス本来の「気軽さ」を演出するために重要な役割を持っており、友人同士の他愛ない会話のように「なんでも気軽につぶやいても良い」という雰囲気作りを、機能ベースで印象付け、ユーザーのモチベーションを最適に導くという意味で一役買っている。


デザインは引き算と足し算?

気軽なつぶやきを彩る要素として、写真の投稿がある。ほとんどのSNSで必須な機能であるが、このアプリでは飾り気のないシンプルなUIの中に、独特なループ動画の撮影機能が備わっている。



つぶやき投稿の際、カメラアイコンをタップすると写真投稿の画面へと遷移する。ここではカメラロールから写真を選択したり、その場で撮影することもできるが、画面左のアイコンをオンにして撮影すると、コマ撮りアニメのようなループする動画が撮影できる。この機能自体はよくあるものだが、画面を構成するUIに余分な要素がなく、1画面で「写真撮影」と「カメラロール」をシームレスに選択できるので画像の投稿に対する障壁が少なく、非常にライトに投稿を完了することができる。

複雑な機能をユーザーに訴求する際、いつの間にか説明過多なデザインになってしまった経験はないだろうか?

「デザインは引き算」とはよく言ったもので、Peachの写真投稿画面では気軽さにフォーカスし、カメラロール内の他アルバムへの遷移やフィルター処理など、いわゆる「カメラ機能」の主要な機能を排除している。そのように機能を限定した分、「写真撮影」と「カメラロール」という2つの機能を1画面で完結させることで、ユーザーの遷移を最小限にするための足し算をしているのである。


 

■まとめ

「Peach — a space for friends」にみる、
  ユーザーをサービスコンセプトへ誘う心地よい誘導


非常にコンセプチュアルで実験的なSNS「Peach — a space for friends」。

サービスデザインにおいて、独自のコンセプトをどこまで表現できるかが競合との差別化を図る上で重要であり、そのコンセプトをユーザーに受け入れてもらうための工夫こそが、デザイナーの役割でありUIデザインが担うべき使い勝手上の「安心感」につながるのではないかと思う。

サービスコンセプトに誘うための工夫が随所に散りばめられたPeach。
今後、クローズドメディアとしてさらなるニッチな進化に期待したい。


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佐藤洋介氏[筆者プロフィール]
佐藤 洋介(さとう ようすけ) /チーフ・クリエイティブディレクター
「Ameba」のクリエイティブ統括室 室長として、スマートフォン向けサービスのデザイナーを統括。クリエイティブ責任者として各サービスのUIデザインを監修。

●Blog:「マテリアルデザインを踏襲した、おすすめアプリ10選
    「スマホUIデザインのトレンドを追うために、毎日行う3つの習慣
●Twitter:@sugaar


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