キャラクターをつくろう! 3DCG日和。ほか3冊
周りを驚かせるようなカッコいいアイデアやデザインは、一朝一夕で生まれるものではありません。情報や技術を取り入れつつ、日々感性を磨きながら、実践(現場)で鍛えていく。インプットとアウトプットのサイクルが大切。多忙なデザイナーのインプットを助けるべく、MdN Interactive編集部がオススメ本を紹介していくコーナーです。
メタセコイアを使って、楽々キャラクター制作
『キャラクターをつくろう! 3DCG日和。』
ISAO/ビー・エヌ・エヌ新社2,500円+税
キャラクター商売でひと山当てるか!……というほどではないにしても、グラフィックデザインやWebクリエイションの現場で「こんなキャラがあったらなぁ」ってこと、ありませんか? デザインの一要素として、あるいは主軸のパーツとして、様々なキャラクターが媒体を飾る現在。プロに発注もいいけれど、自分で作ることができたらそれに越したことはありません。でも、敷居の高さに臆している人も多いかも。そんな諸氏に朗報の本書。
3Dモデリングツール「Metasequoia(メタセコイア)」を使用して、ポリゴン・キャラクターを作るためのノウハウが詰まっています。統合ツールやスカルプトベースの次世代モデラー(ZBrushやMudBoxなど)と比べると、機能は少なくとも遜色ない性能を持つメタセコイア。キャラクターのイラストは描けても「3Dモデリングはちょっと……」という初心者にも扱いやすい、快適な操作性を武器に、まずはカトマルやプラグインを使わないローポリキャラクターを作ることから解説が始まります。そして、なるべくポリゴン数を少なくしながら自前のキャラクターを生み出す方法をステップアップ形式で指導。教材となる事例データはサンプルが全部ダウンロード使用可というのも嬉しい一冊です。
レンズを向けて、自分だけの「一瞬」を切りとろう
『日々是カメラ』
オブスキュアインク/エムディエヌコーポレーション1,600円+税
安価なデジカメよりも、携帯電話のカメラ機能のほうが「よく写るじゃん」ってことも多くなったご時世ですが、やっぱり“カメラ”という言葉の響きに惹かれます。銀塩からデジタルへの移行は手軽さをもたらした反面、銀塩にあった“がっちり感”が薄くなったのも事実。しかし、デジタル一眼も年々手に入れやすい価格となり、機能も“がっちり感”を失うことなく易しいものとなってきました。そして“写真を撮る”という行為自体が、日常における愉しみとして幅広く浸透してきたようにも思えます。
そこで登場の本書は、特に女性をターゲットに「思いどおりの写真を撮るアイデアとコツ」を教示する一冊。プロ/アマ46名の女性カメラマンの作品を見せながら、様々な対象(家族/子ども/動物/植物/人物/料理/風景など)を巧く撮影するためのノウハウが詰まっています。被写体をきれいに美しく残すだけではなく、女性ならではの感性で瞬間的なアングルや色彩を“切りとる”術(すべ)に長けた本書。カメラを持っていない貴女も、手に取れば「わたしも撮ってみたい!」と思わずにいられないラブリーな造りです。また、現在活躍中の写真家(かくたみほ/須藤夕子/嶋本麻利沙)のインタビュー、写真加工やステレオ写真にまつわるコラム、巻末には「知っておきたいカメラ基本講座」も収録。
Webクリエイター必携の基礎マニュアル
『Webデザインの基本ルール』
ソフトバンククリエイティブ1,800円+税
PhotoshopやFlashのマニュアルとして定評がある「デザインラボ」シリーズの新刊、副題は「プロに学ぶ、一生枯れない永久不滅テクニック」。このフレーズで思わず手に取ってみたくなる人も多かろう、Webクリエイターとして活動するならば必須の基礎知識が満載の一冊です。レッスンの項目はレイアウト、配色、ワークフロー、Webページの制作、動きのあるWebページと動的コンテンツ、Web標準とSEO/SEM……と気のきいた構成。絶対にハズせないレイアウト原則(近接/整列/対比/反復)から、各種ナビゲーションスタイル術、カラーパターンなど、細やかな事例と解説が詰まった実践テクニック集。
また、XHTMLとCSSによる最新制作技術の概要と基本、ユーザビリティやアクセシビリティに対する考え方まで、考えられうるWeb制作のルールをまとめたオール・アバウトな内容が嬉しい。これでお値段、1,800円は安い! また、モバイル向けのWebデザインにも言及、iモードやEZweb、iPhoneや任天堂DSなどのデバイス対応も網羅。これからの人もいま現場の人も、Webクリエイターならば座右の書となるものでしょう。それぞれのコンテンツごと、一冊ずつマニュアルができるほど濃い内容をコンパクトに整然とまとめているところにも好感。
世界のムラカミと肩を並べるオカザキ・ワールド
『TOKYO GIRLS BRAVO』
Kyoko Okazaki/casterman10,93ユーロ(amazon.frによる価格)
80年代末から90年代にかけて、日本の漫画界に旋風を巻き起こした希代の作家・岡崎京子。事故による休筆が続く現在も既刊は増刷を重ね、各種新装版が刊行されたり、最近では『東方見聞録』など掘り起こされた未刊行作品が書籍化されているが、その人気は衰えることなくますます“普遍性”を放ち始めている。また、あまり知られていないことだが、近年『PINK』『愛の生活』、『リバーズ・エッジ』、『ヘルタースケルター』といった作品がフランスやドイツで翻訳刊行され、まさに言語を越えた“普遍性”を(オタク文化ではない漫画として)欧州圏に浸透させてもいる。フレンチ・ギャルが読む『リバーズ・エッジ』……あるいはジャーマン・ゲイが読む『ヘルタースケルター』って……想像しただけでもワクワクする出来事でしょう。
で、このたび紹介の新刊は『東京ガールズブラボー』のフランス語版。90年代初頭、ファッション雑誌『CUTIE』に連載され、ニューウェイブ華やかし頃のトーキョーの“在りし日の姿”を3人娘に体現させた名作が、ついに海外へと進出です。80年代のトーキョー若者風俗がどこまで彼の地の読者に伝わるか、はなはだ疑問ではありますが、主人公たちの“青春の光と影”は永遠不滅のほろ苦さ! まったくフランス語は読めない身なのに取り上げるは失礼千万かもしれませんが、日本の少女漫画史に残る作品を異国情緒に眺めるのも一興。装幀も海外版オリジナル、洋書では掟破りの右綴じ開きにより、ドタバタしながらも切ない“あの時代”がきっと思い起こされることでしょう。村上春樹に続いて欧米で評価されるべき、岡崎ワールド満載の一冊。
『TOKYO GIRLS BRAVO』はamazon.frで購入ができます。
http://www.amazon.fr/
(文・増渕俊之)
更新日:2009年4月15日