「WOMマーケティング」
「WOMマーケティング」
2009年7月27日
TEXT:小川 浩
(株式会社モディファイ CEO 兼クリエイティブディレクター)
Word of Mouthとは
「WOM」とは“Word of mouth”の略であり、日本語では言えば、要するに「クチコミ」のことである。WOMマーケティングとは、すなわちクチコミマーケティングとなる。
アメリカでは、2005年に発足した「WOMMA(Word-of-Mouth Marketing
Association <http://womma.org>」という啓蒙団体が発足しており、4年という長い歴史(ネット業界の団体として4年は長い)を持っているが、日本国内でも最近、同様の団体としてWOMマーケティング協議会(WOM Japan <http://womj.jp/>)が発足している。
ネットを活用するさまざまな人々のクチコミを介してブランディングやマーケティングを行うという意味では、クチコミマーケティングもWOMマーケティングもソーシャルメディアマーケティング、さらにはバイラルマーケティングもほぼ同義語であり、こうした呼称が氾濫していることから、業界の標準化や技術的なスタンダードの確立を進めることの困難さが伺えるだろう。
WOMMAのサイト
WOMはクチコミを呼びづらい?
クチコミを発生させ、さらにそれを大きく広く伝搬させていくために、よく言われることだが、クチコミを伝える役割を果たす人の存在をいかに捕まえるか、どう共感してもらえるかが非常に重要だ。そうした人たちを、俗に「コネクター」(クチコミを広げていくつなぎ役)や「インフルエンサ」(伝染力の強い影響力の大きい人)、「パースエーダー」(積極的に第三者を説得する人)などと表現することが多い。
その意味では、マーケティングの考え方として、「バイラルマーケティング」、すなわちウィルス(Virus)の伝染力・感染力をメタファーとする呼称がもっとも内実を具体的に表していると言えるだろう。
WOMという言い方は、筆者の感覚では国内ではおそらく流行らない。意味が通りづらいし、「WOMとはクチコミのことですよ」「だったらクチコミと言えば?」というやりとりが目に浮かぶからだ。シェークスピアは、バラを何と呼ぼうがバラはよい香りがする、と書いたが、このクチコミマーケティングの世界では、言いやすさと書きやすさ、そして読みやすさが感染の速度を左右する重要な要素であり、その点でWOMは失格だろうと考える。
それはともかく、WOMという呼び方が定着しようとしなかろうと、マスメディアのアンチテーゼとして、インターネットのソーシャルメディアを活用して、自分たちのマーケティングメッセージを最終消費者に届けるための手法は今後も急成長を続けていくことは間違いないし、これらをうまく定義してその第一人者になろうとする企業の水面下の戦いがしばらく続いていくことは確かである。
■著者の最近の記事
「Tumblr──マルチメディア対応のハイブリッドブログサービス」
「音楽シーンにもみられるストリーム化現象──後編」
「音楽シーンにもみられるストリーム化現象──前編」
「マイクロソフトの次世代検索サービス『bing』──後編」
「マイクロソフトの次世代検索サービス『bing』──前編」
「Webの進化とリンクする『スマートグリッド』」
[筆者プロフィール]
おがわ・ひろし●株式会社モディファイ CEO兼クリエイティブディレクター。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)などがある。