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第1回 Webアクセシビリティとは?


みなさんは、「Webアクセシビリティ」という言葉を聞いたことはありますか?

Webアクセシビリティは、しばしば「障害者・高齢者対応」として取り上げられることから、「自分(あるいは自社サイト)には関係ないこと」と考える方も少なくないのではないでしょうか? けれどもWebアクセシビリティの本来の目的は、「サイトを訪れた利用者が目的の情報に効率よくアクセスできるようにすること」です。

この連載では、Webサイトの制作や運用に関わるみなさんが、Webアクセシビリティについての知識を深め、 日々の仕事に活用してもらうため、Webアクセシビリティの現状や個々の事例の解決法を、できるだけわかりやすく紹介していきます。第1回目の今回は、Webアクセシビリティという言葉が示すことについて解説します。

(解説:辻 勝利)


[プロフィール]
つじ・かつとし●株式会社ミツエーリンクス アクセシビリティ・エンジニア。先天性の全盲で、インターネットをライフラインとして日常的に使用する。2001年よりWebアクセシビリティに関わる仕事に従事し、数多くの企業や自治体のWebサイトの音声読み上げ環境での検証を行う。現在は、アクセシビリティBlogでの情報発信や講演を通して、Webアクセシビリティの更なる普及・啓蒙活動を行っている。



Webアクセシビリティ(Web accessibility)とは?


accessibility(アクセシビリティ)を辞書で引くと「近づきやすいこと。物を得やすいこと。また、道具などの使いやすさ。」という意味が載っています。単に「アクセシビリティ」という場合、一般的には、公共の交通機関や建物などが、障害者や高齢者を含む誰にでも利用が可能であること指します。

そこから派生して「Webアクセシビリティ」とは、障害者や高齢者を含む誰もがWebサイトの情報を利用できることといえます。

Webアクセシビリティという言葉は、1990年後半から徐々に使われるようになりました。当初、Webアクセシビリティといえば、Webサイトで提供される画像情報に、その説明となる代替テキスト(alternate text)を付与しようという動きがもっとも一般的な対応項目だったと記憶しています。その後、Webコンテンツとして提供される情報は多様かつ複雑化し、Webアクセシビリティを高めるためには、さまざまな技術を用いた取り組みが必要になってきました。

そうしたなかで、視覚障害者がWebサイトを訪れた際に問題となる例として、ページを開いただけで音声が再生されたり、キーボードからの操作だけではどうしても完結できない操作があることなどが挙げられます。

一方で、2004年にWebアクセシビリティに関する規格「JIS X 8341-3:2004 高齢者・障害者等配慮設計指針 -情報通信における機器・ソフトウェア・サービス -第3部 ウェブコンテンツ」が制定されて以来、日本でもWebアクセシビリティを意識したサイトが増えつつあります。特に、インターネットを日常生活の多くの部分で利用している筆者をはじめとした視覚障害者の生活は、以前と比べて確実に便利になってきているといえるでしょう。

Webアクセシビリティの誤解されている点


コンテンツを提供する側の方たちには、Webアクセシビリティというと、障害者や高齢者の閲覧を考慮し何らかの特別な配慮をしなければならない、という考えが先行しているのが現状です。けれども、Webアクセシビリティは「特別な誰か」のための施策ではなく、サイトを利用するすべてのユーザーがコンテンツを利用しやすく、より速く快適に情報へアクセスできることを意味しています。

こうした誤解を解くために、今後連載を進めていく前に、みなさんに理解してほしい事例を挙げていきます。

ページをアクセシブルにするには、
音声での読み上げのことを考慮して、
ページ中で漢字を用いてはならないのではないか?

Webページの内容を音声や点字で出力するソフトウエアは、漢字をある程度正確に読むことができるので、漢字を用いてはならないということはありません。逆に、ひらがなやカタカナだけでページの内容が記述されていると、アクセントなどを正しく表現できないため、読みにくくなってしまいます。

一般のページとは別に、
テキストページを用意したほうがよいのではないか?

多くの場合、Webアクセシビリティを高める目的で、テキストベースのページを別に用意する必要はありません。テキストベースのページでなくともWebアクセシビリティを考慮してページを作成することは可能ですし、テキストベースのページを別に設けることで、例えばページを更新する際に手間がかかったり、場合によってはテキストベースのページの更新を忘れてしまったりする可能性があるからです。

また、一視覚障害者のユーザーの立場で考えてみると、せっかく訪れたWebサイトで、自分だけ別ページに移動しなければ情報を得ることができないというのは、あまり好ましくありません。例えるなら、同じ目的で訪問してくれたお客様を、「あなたはこちらへどうぞ」、「あなたはこちらへお回りください」と、別の部屋へ案内するような対応を受けている気分になるのです。

とはいえ、刻々と変化する株価を伝えるようなページなど、場合によってはその情報を効率よく提供するために、テキストベースのページを別に用意する必要があるケースもあります。


サイトにアクセスすると、テキスト版のページが別に用意されている例。テキスト版では情報更新が遅れている点に問題がある

「○○のリンクです」と記述しなければ、
音声読み上げ環境では
それがリンクだと認識できないのでは?

代表的な音声読み上げ環境では、リンク部分を別の声質の音声で読み上げたり、「リンク○○」のように表現したりすることで、リンクテキストであることを利用者に通知します。ですから、「○○へのリンクです」とページ中で表現する必要はありません。そのように記述した場合、利用者によってはその読み上げが冗長に感じてしまう可能性もあります。例えば、「リンク○○へのリンクです」のように読み上げられてしまうからです。

Webアクセシビリティは「障害者や高齢者のためだけ」に特別に何かすることではなく、特定の環境に依存しなくとも、多くのユーザーがサイトの情報を利用できるようにしていくことです。そうした観点から連載を進めていきたいと思います。

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