第1話 インタラクティブ広告の未来 | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-
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インターネットという新しいメディアの登場は、広告業界にも新しい風を吹き込んだ。なかでも、インタラクティブ・メディアとしてインターネット特 性をフルに活かし、カンヌ国際広告祭など数々の広告賞を受賞しているのが(株)博報堂アイ・スタジオ(以下、博報堂アイ・スタジオ)である。そんな博報堂 アイ・スタジオでこの4月より、グラウンドワークデザイン部の部長に就任し「グラウンドワークデザイン」というWeb制作における新しい概念を提唱しなが ら、インタラクティブなWeb広告を牽引している秋谷寿彦氏に、現在のインターネット広告を巡る状況や今後の展望について話をうかがった。

第1話 インタラクティブ広告の未来

「ワン・ストップ」でインタラクティブ広告を手がける会社


──博報堂アイ・スタジオとはどんな会社なのでしょうか。

秋谷●2000年6月に(株)博報堂100%出資の子会社として設立された広告制作会社です。博報堂が取り扱う各種メディアの中において、インタラクティブ・メディアとしてのインターネットの領域を対象にして企画から制作までを引き受けています。この「企画から制作まで」ということを僕らは「ワン・ストップ」と呼んでいますが、インタラクティブ広告を中心にワン・ストップで手がけている制作会社ということになりますね。

ただ、媒体の種類としてはインターネットを対象としていますが、決してIT企業というわけではありません。博報堂のグループ会社として、プロモーション全体の中で、Webの特性を生かした広告展開がいかにできるかという考えのもと、プロモーションサイトやキャンペーンサイト及びインターネット広告の企画制作をするという位置づけです。

具体的な社内機能を挙げていくと、まずプロデュース機能。そして、クリエイティブ機能。プランニングやライティング機能、オリジナル商品の開発機能。また、最近は映像を絡めたWebサイトの制作も増えているので、映像制作機能。加えて、単なるWebサイト制作会社ではなく、より幅広い視点から、広告キャンペーンの一環としてWebサイトを考えていますので、キャンペーンの事務局としての機能も持っています。

こうしたさまざまな機能をひとつの社内で「ワン・ストップ」で実現している、というのが最大の特徴だと思います。一般的には自社が持ち合わせない機能を外のブレーンに外注するケースが多いと思いますが、そこが大きな違いですね。

取材に答える秋谷氏。博報堂アイ・スタジオのオフィスにて──設立当初から、そうした機能をすべて備えた組織として発足したのでしょうか?

秋谷●現在は派遣社員やアルバイトも含めて200人近くが所属しています。設立当時はわずか3名からのスタートでした。運用がはじまるとクリエイティブ機能、システム機能、運営機能が動き出し、その後少しずつ機能を追加していき、現在の組織になりました。

先ほど「ワン・ストップ」で業務を進めていると申しましたが、機能は揃っているものの、現実にはすべての業務を100%内部でというのは難しく、一部は外部のブレーンに頼っているものがあるのも事実です。

──秋谷さんは、博報堂アイ・スタジオの設立からのメンバーなのでしょうか?

秋谷●いえ、僕が入社したのは2003年4月でそれ以前は別の広告制作会社に所属していました。その制作会社に入社した頃は、インターネットが今のように普及する前のことだったので、紙媒体の広告制作を行っておりました。また、今のようなパソコンも存在しなかったので、アナログでのカンプ作りや、版下制作会社へ送る指定原稿作り、印刷会社への版下入稿等からスタートしました。それから徐々にMacが導入され、いわゆるDTP技術の進化に伴って制作環境も変化するなかで、15年くらいデザイナーとして仕事を担当していました。

──では、博報堂アイ・スタジオに入社されてからは、どのようなお仕事をされてきたのでしょうか。

秋谷●入社以来クリエイティブ部の部長としてクリエイティブ部の運営を担当してきたのですが、「グラウンドワークデザイン部」という部署を立ち上げるにあたり、この新しい部署の部長に就任しました。


「グラウンドワークデザイン」という発想


──この「グラウンドワークデザイン部」という部署は、博報堂アイ・スタジオの中でどのような作業を担当しているのでしょうか。

秋谷●「グラウンドワークデザイン部」は今年の4月に発足したばかりの部署で、昨年度はクリエイティブ部の中での、「グラウンドワークデザイン室」という位置づけでした。手がける内容としては、Webコンテンツには必ず更新が必要ですが、この更新という作業を受け持っているほか、更新作業をスムーズに行うためにWebの立ち上げの時点でコーダーがHTMLの設計をするにあたって、クリエイティブチームと一緒に、効率的な更新が可能なかたちにWebを組み上げていく、ということを目指しています。つまり、ひとつの部として今年4月に独立するにあたり、この“更新”という作業をクリエイティブから切り離した、というわけです。

──「グラウンドワークデザイン」という言葉は、用語として既にあるものなのでしょうか。

「グラウンドワークデザイン」はクリエイティブの円滑な継続を願って秋谷氏が名付けた言葉 秋谷●いえ、じつは僕が作った言葉なんです。もともと「グラウンドワーク」という言葉自体は、建築用語として「基礎」とか「土台」を指して使われる言葉です。一方で、Web制作にあたっては、クリエイティブチームが革新的なアイデアを提案したとして、そのときのクオリティを維持したまま、スムーズにランニングしていくことが求められるわけですが、この部分がじつは難しい。単にクリエイティブな発想をそのまま実現するのではなく、それが円滑に継続していくような構造を構築することが求められてくるわけです。

そのためには高いクオリティを保持したままスムーズに更新作業を続けていけるような構造を設計する、いわばWebの「基礎」の部分を構築する、という意味を込めて、「グラウンドワークデザイン」という言葉を考えたのです。つまり、その「基礎」や「土台」の上に、クリエイティブが乗ることによって、制作会社としての全体の制作力を高めていく、という発想ですね。


次週、第2話は「Web制作における新しい概念」についてうかがいます。

(取材・文:深沢慶太 写真:谷本 夏)


[プロフィール]
秋谷寿彦(あきや・としひこ)
●株式会社博報堂アイ・スタジオ
グラウンドワークデザイン部部長
青森県青森市出身
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