第4話 自発的な作品づくり | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-
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これがデザイナーへの道

第37回 つちやかおり(SG)

記憶に残るビジュアルをつくりたい


さまざまなジャンルで活躍するデザイナーの来歴をたどるシリーズ。今回はSG(スントー・グラフィックス)のつちやかおりさんを取材しました。駿東 宏さんのもと、音楽プロダクツ、映画パッケージ、エディトリアルなど各種デザインを担当する現在までの足跡をたどり、デザインを志した「原点」を振り返っていただきましょう。


第4話 自発的な作品づくり


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表参道のオフィスにて、つちやかおりさん



──今後、どんなふうにやっていきたいですか?

つちや●事務所に入ってかなり経ちますが、駿東さんの仕事でいまだに感心するのは、アイデアの幅の広さとその説得力の強さです。それには実際の仕事での経験の差はもちろんですが、駿東さんの映画や音楽、その他もろもろの膨大な知識と見てきたことに大きく関係していると感じていて、学ぶことが大きいです。私も音楽も映画も大好きなので、目の前の仕事だけでいっぱいにならないように興味のあることは見たり感じたりして経験していきたい。いろんなことを知った上で制作に取り組むと、仕事の楽しさもうんと増えると感じます。

──まだ駿東さんの下でやっていく気持ちが大きい?

つちや●7~8年もやっているので、そろそろ独立を考えろと言われます。それは自分のデザインの独自性をもっと確立させろという意味でもあるのですが、そこは耳がイタイところで、常に模索中でいろんな意味で考え中です。ちゃんと人の記憶にのこるようなビジュアルをつくっていけるようになることが課題です。とはいっても私の場合、性格的にもあれこれ考えてるときりがなさそうなので、実際にエイヤッと独り立ちして、というふうにもっていかないとならないんだろうなと思っています。

──どんなデザインを今後やってみたいですか?

つちや●写真の画作りにも、もっと関わった制作をしていきたいです。昔から制作工程の中で写真のセレクトをしているときが自分にとって一番楽しい時間だったし、撮影の現場も好きで、写真のことももっと勉強しないとなと思ってます。いまの事務所に入ってから、いろんな仕事に関わることができましたが、どれかに特化していきたいとは強く思ってないです。事務所にくる仕事自体も幅が広いので飽きないし、自分が何にでも興味を持つタイプなので。今までやってないこともやりたいとも思うし、これだけやりたいというよりも、大きな幅で考えていきたいなと。

──具体的には?

つちや●音楽と映画に携わるデザインはずっとやっていきたいですね。音楽も映画も無条件に大好きですから。特に音楽の仕事は自分にとって憧れであったし、特別のことだと思っています。

──では、最後にアドバイスを。

つちや●下積みの時点で自信をなくしたりして辞めてしまう人が多いと思うんですが、やり続けているってことだけで人には自信になっていくこともあると思うんです。がむしゃらにやっているだけでも、経験がついてきて自信に繋がっていくし、自分の持った仕事が出来上がったことへの喜びも大きく感じます。なので、そこの初期段階を通り抜けるまで……あまり悩んで人生哲学を考えちゃうとダメなのかなと。考えなくてはならないのかもしれないけど、私は「考えなさすぎ」って言われるから(笑)。

──忙しいでしょ?

つちや●ええ。でも最近は昔よりはバランスがとれるようになってきて、土日はなるべく休んで違うことに時間を使うようにしてます。仕事をやり始めた頃は自分のペース配分がわからなかったですね。作業していて、どのへんで完成するか、どこでOKだという判断がわからなくて。いまもわからないのですが、前よりは時間の配分ができるようにはなりました。最近は時間をみつけて撮影メンバーを集めて作品撮りとかもやり始めたんです。きっかけは着物専門のスタイリストの友人が年賀状を作りたいから写真を撮って作ってくれと。でも、せっかくなのでカメラマン、ヘアメイクの人にも頼もうという話になって。

──作品づくりを始めたわけですね。

つちや●ええ。そのスタイリストはfussaという2人組のチームで、彼女たちの世界観が自分も好きだったので声をかけてくれたのも嬉しかったし、協力していただいたカメラマンもヘアメイクの方もきっと同調してくれるだろうと思ってお願いしました。モデルはスタイリストのひとりの姪っ子でまだ幼稚園児。予想外に無邪気なちびっこで、写真も面白く撮れたんです。で、今後も定例で続けられないかなと。その子の成長過程も撮っていけないかと、半年に一度ぐらい撮ろうとみんなで決めて。小さい子を撮り続けて、成人するまでを追ったら、ひとつの形になるのではないかと。今後は、そういうふうに写真をディレクションしたりコーディネーションすることを積極的にやっていきたいですね。ちょっとずつですが、やっていこうと。いざ自分が独立して、何をやってきたかと訊ねられて「何もありません」ということがないように。


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つちやさんの仕事より

上・中=プライベート作品/着物を着たひとりの女の子を追いかけたシリーズ。年に数回、同じチームで撮影。
ph : canno hideo / styling : fussa / hair&make-up : nakai masato
下=スタジオジブリと宮崎駿さんの映画音楽のオルゴールCDシリーズ。
illust : watanabe hiroshi
左から「宮崎駿映画音楽ベスト・コレクション」「スタジオジブリ音楽ベスト・コレクション」「宮崎駿ベスト・コレクション」(すべてBMG JAPAN)

 

今回でつちやかおりさんのインタビューは終了です。


(取材・文・写真:増渕俊之)



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[プロフィール]

つちやかおり●1975年三重県生まれ。文化女子大学生活造形学科卒業後、デザイン事務所勤務を経てフリーとして活動。2003年、駿東 宏氏の「Sunto Graphics」に入社。http://www.sg-tokyo.com/



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