Yahoo!やGoogleを味方につけて、
賢く集客するためのセオリーを学ぼう
集客のための検索連動型広告活用術
(株)ルグラン 代表取締役
泉 浩人
2002年オーバーチュアの日本進出に参画、同社の経営全般に携わったのち、2006年4月、検索連動型広告ユーザーへのサポートを目的に(株)ルグランを設立。結果を出すことにこだわりながら、コンサルテーションを中心に、検索連動型広告に関連するサービスを幅広く提供している
url. www.LeGrand.jp/
第1回
検索連動型広告にまつわる「迷信」から脱却しよう!
日本上陸からわずか4年で1,000億円市場にまで急成長した検索連動型広告。だが、サイト運営の現場では、さまざまな「迷信」に振り回され、集客の可能性を自ら狭めてしまっているケースも多い。セオリーを学ぶ前に、まずは検索連動型広告を正しく理解しよう。
■迷信1 SEOならタダですむ?
これは「検索連動型広告を利用しない理由」として、よく言われることだが本当にそうなのだろうか? ちなみに、SEOとはSearch Engine Optimizationの頭文字を取ったもので、Webサイトがアルゴリズム検索の結果、上位に表示されるようサイトを最適化する手法のことである。
確かにSEOを行うのにYahoo!やGoogleなどの検索エンジンに料金を支払う必要はない。だが、サイトが検索されやすいように「最適化」するための作業はすべて自分で行う必要がある。しかも、どのようにすれば検索結果の上位に表示されるかというルールは公表されていないので、成果を上げるためには、本などを読みながら試行錯誤を重ねることになる。
その場合、本来であれば営業活動や商品開発に使える時間をSEOに取られているという点で、見えない「コスト」がかかっていることを忘れてはならない。もちろん、外部の専門業者を頼むということも考えられるが、その場合には、一定の料金を取られるので「タダ」ではすまない。
■迷信2 SEOと検索連動型広告を両方やるのはムダ?
SEOとはプレスリリースなどを出してメディアに取り上げられるのを待つ「広報」に似ている。広報部を維持するのに一定の経費はかかるし、記事として掲載される保証もない。だが、もし全国紙に会社や商品が大きく取り上げられれば、広告に換算した効果は計り知れない。
これに対して「広告」というのはお金を出して掲載される場所や時間を「買う」ものである。一定のクリック単価を支払えば、Yahoo!やGoogleの検索結果の上部に広告を掲載することができる検索連動型広告も、仕組みは同じである。
SEOをやっているから検索連動型広告は必要ないという考え方は、広報部があるので広告宣伝は不要といっているのと同じだとすれば、その「危うさ」が理解できるのではないだろうか?【1】。
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【1】SEOと検索連動型広告は、集客活動におけるいわば車の両輪。二者択一でどちらかを選ぶのではなく、ふたつをバランスよく使うことが成功への近道となる
■迷信3 費用対効果がハッキリしない?
たとえば、アフィリエイトの場合、成約して初めて所定の費用が発生するので、費用対効果の把握は極めて簡単である。それに対し、検索連動型広告では、どれだけの集客や売り上げが実現できるかは、広告を出してみなければわからない。
したがって、支出が先行するという点では、TVや新聞などのオフライン広告と同様のリスクはあるが、費用対効果については、アフィリエイトと同様、数値による測定が可能なシステムなのである。
だが、筆者の経験では、検索連動型広告を利用している広告主で、効果測定のための「タグ」をサイト上にきちんと設定しているのは全体の半数程度である。つまり、残り半分は効果を測定していないのだから、検索連動型広告の費用対効果がハッキリしないのは当然である。
ちなみに、欧米では「あらゆる広告媒体の効果は測定可能であるべきだ」という考え方が広まりつつあり、その結果、多くの広告主は、効果測定が容易だという理由で、検索連動型広告に積極的に予算をシフトさせている。
また、効果測定を行うことで、効果の低い広告の出稿をリアルタイムで見直すことも可能となる。したがって、支出が先行することに伴うリスクについても、従来のオフライン広告に比べれば十二分にコントロールが可能なのである。
■迷信4 リスク管理のために予算設定は不可欠?
検索連動型広告において効果を測定するということは、新規顧客を1件獲得するのに要したコストを知ることにほかならない。だが、効果測定をしていなければ、支出した総額しかわからない。
これでは、獲得できた新規顧客数の計測が技術的にほとんど不可能な従来のオフライン広告と変わらない。つまり、効果の悪い広告に費用を垂れ流すリスクを管理するためには、あらかじめ決めた予算で広告を打ち止めにする以外に方法はない。
この方法を検索連動型広告に適用した場合、実は優れた費用対効果を上げているにもかかわらず広告が停止され、多大な機会損失を生んでしまうというリスクを冒すことになる。これは、たとえて言うならば、売り上げの5%と決まっているカード会社に支払う手数料が、商品の売れ行きが好調で、当初想定した支払額を超えてしまいそうなので、それ以上注文が来ないように店を閉めようとしているのと同じくらいばかげたことなのだが【2】。
【2】オフライン広告では、費用対効果の測定ができないので、全体の売り上げに対して利益を確保できる水準に広告予算を設定することが必要となる。つまり人件費や家賃などと同じ固定費として管理するしかない
まとめ
以上、検索連動型広告について語られる際に出てくる、ありがちな「誤解」についてまとめてみた。
特にオンライン広告については、体系的な知識や情報を入手する機会が限られているため、身近にいる「経験者」に教えを請うこともあるだろう。だが「経験者」が語る成功体験が、だれにでも普遍的に通用するノウハウとは限らないので、あまりうのみにしてしまうのは問題だ。実際、SEOの「信者」に教えを受けた人には、検索連動型広告を初めから「喰わず嫌い」しているケースが多かったりするものである。
オフラインであれオンラインであれ、集客の手段には、業種や取扱商品によって、いろいろな選択肢があり、それぞれに異なるリスクやメリットがある。安易な二者択一や思い込みだけで取捨選択をしてしまうと、集客の可能性を自ら狭めてしまうことにもなりかねない【3】。
【3】検索連動型広告のリスクとメリットを正しく理解することが大切だ
column REPORT- SEM世界紀行
「検索キーワードに見るお国柄」
Yahoo!やGoogleは世界各国で検索サービスを提供しているが、ユーザーの「検索行動」にはお国柄が映し出されていてなかなか興味深い。
たとえば、日本では「ギフト」「誕生日 プレゼント」など、1-2語のキーワードで検索されることが多いが、アメリカでは「gift idea corporate」「unique gift for women」など、3-4語のキーワードを組み合わせて、検索の対象をできるだけ絞り込もうとする傾向が強い。
実際、アメリカのYahoo!は日本よりも検索窓が長くなっており、サイトの横幅も950ピクセルと、Yahoo! JAPANの710ピクセルより33%も横長になっている。検索キーワードのロングテール化は、こんなところにも影響を及ぼしているのだ。
本記事は『Web STRATEGY』2007年7-8 vol.10からの転載です
賢く集客するためのセオリーを学ぼう
集客のための検索連動型広告活用術
(株)ルグラン 代表取締役
泉 浩人
2002年オーバーチュアの日本進出に参画、同社の経営全般に携わったのち、2006年4月、検索連動型広告ユーザーへのサポートを目的に(株)ルグランを設立。結果を出すことにこだわりながら、コンサルテーションを中心に、検索連動型広告に関連するサービスを幅広く提供している
url. www.LeGrand.jp/
第1回
検索連動型広告にまつわる「迷信」から脱却しよう!
日本上陸からわずか4年で1,000億円市場にまで急成長した検索連動型広告。だが、サイト運営の現場では、さまざまな「迷信」に振り回され、集客の可能性を自ら狭めてしまっているケースも多い。セオリーを学ぶ前に、まずは検索連動型広告を正しく理解しよう。
■迷信1 SEOならタダですむ?
これは「検索連動型広告を利用しない理由」として、よく言われることだが本当にそうなのだろうか? ちなみに、SEOとはSearch Engine Optimizationの頭文字を取ったもので、Webサイトがアルゴリズム検索の結果、上位に表示されるようサイトを最適化する手法のことである。
確かにSEOを行うのにYahoo!やGoogleなどの検索エンジンに料金を支払う必要はない。だが、サイトが検索されやすいように「最適化」するための作業はすべて自分で行う必要がある。しかも、どのようにすれば検索結果の上位に表示されるかというルールは公表されていないので、成果を上げるためには、本などを読みながら試行錯誤を重ねることになる。
その場合、本来であれば営業活動や商品開発に使える時間をSEOに取られているという点で、見えない「コスト」がかかっていることを忘れてはならない。もちろん、外部の専門業者を頼むということも考えられるが、その場合には、一定の料金を取られるので「タダ」ではすまない。
■迷信2 SEOと検索連動型広告を両方やるのはムダ?
SEOとはプレスリリースなどを出してメディアに取り上げられるのを待つ「広報」に似ている。広報部を維持するのに一定の経費はかかるし、記事として掲載される保証もない。だが、もし全国紙に会社や商品が大きく取り上げられれば、広告に換算した効果は計り知れない。
これに対して「広告」というのはお金を出して掲載される場所や時間を「買う」ものである。一定のクリック単価を支払えば、Yahoo!やGoogleの検索結果の上部に広告を掲載することができる検索連動型広告も、仕組みは同じである。
SEOをやっているから検索連動型広告は必要ないという考え方は、広報部があるので広告宣伝は不要といっているのと同じだとすれば、その「危うさ」が理解できるのではないだろうか?【1】。
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【1】SEOと検索連動型広告は、集客活動におけるいわば車の両輪。二者択一でどちらかを選ぶのではなく、ふたつをバランスよく使うことが成功への近道となる
■迷信3 費用対効果がハッキリしない?
たとえば、アフィリエイトの場合、成約して初めて所定の費用が発生するので、費用対効果の把握は極めて簡単である。それに対し、検索連動型広告では、どれだけの集客や売り上げが実現できるかは、広告を出してみなければわからない。
したがって、支出が先行するという点では、TVや新聞などのオフライン広告と同様のリスクはあるが、費用対効果については、アフィリエイトと同様、数値による測定が可能なシステムなのである。
だが、筆者の経験では、検索連動型広告を利用している広告主で、効果測定のための「タグ」をサイト上にきちんと設定しているのは全体の半数程度である。つまり、残り半分は効果を測定していないのだから、検索連動型広告の費用対効果がハッキリしないのは当然である。
ちなみに、欧米では「あらゆる広告媒体の効果は測定可能であるべきだ」という考え方が広まりつつあり、その結果、多くの広告主は、効果測定が容易だという理由で、検索連動型広告に積極的に予算をシフトさせている。
また、効果測定を行うことで、効果の低い広告の出稿をリアルタイムで見直すことも可能となる。したがって、支出が先行することに伴うリスクについても、従来のオフライン広告に比べれば十二分にコントロールが可能なのである。
■迷信4 リスク管理のために予算設定は不可欠?
検索連動型広告において効果を測定するということは、新規顧客を1件獲得するのに要したコストを知ることにほかならない。だが、効果測定をしていなければ、支出した総額しかわからない。
これでは、獲得できた新規顧客数の計測が技術的にほとんど不可能な従来のオフライン広告と変わらない。つまり、効果の悪い広告に費用を垂れ流すリスクを管理するためには、あらかじめ決めた予算で広告を打ち止めにする以外に方法はない。
この方法を検索連動型広告に適用した場合、実は優れた費用対効果を上げているにもかかわらず広告が停止され、多大な機会損失を生んでしまうというリスクを冒すことになる。これは、たとえて言うならば、売り上げの5%と決まっているカード会社に支払う手数料が、商品の売れ行きが好調で、当初想定した支払額を超えてしまいそうなので、それ以上注文が来ないように店を閉めようとしているのと同じくらいばかげたことなのだが【2】。
【2】オフライン広告では、費用対効果の測定ができないので、全体の売り上げに対して利益を確保できる水準に広告予算を設定することが必要となる。つまり人件費や家賃などと同じ固定費として管理するしかない
まとめ
以上、検索連動型広告について語られる際に出てくる、ありがちな「誤解」についてまとめてみた。
特にオンライン広告については、体系的な知識や情報を入手する機会が限られているため、身近にいる「経験者」に教えを請うこともあるだろう。だが「経験者」が語る成功体験が、だれにでも普遍的に通用するノウハウとは限らないので、あまりうのみにしてしまうのは問題だ。実際、SEOの「信者」に教えを受けた人には、検索連動型広告を初めから「喰わず嫌い」しているケースが多かったりするものである。
オフラインであれオンラインであれ、集客の手段には、業種や取扱商品によって、いろいろな選択肢があり、それぞれに異なるリスクやメリットがある。安易な二者択一や思い込みだけで取捨選択をしてしまうと、集客の可能性を自ら狭めてしまうことにもなりかねない【3】。
【3】検索連動型広告のリスクとメリットを正しく理解することが大切だ
column REPORT- SEM世界紀行
「検索キーワードに見るお国柄」
Yahoo!やGoogleは世界各国で検索サービスを提供しているが、ユーザーの「検索行動」にはお国柄が映し出されていてなかなか興味深い。
たとえば、日本では「ギフト」「誕生日 プレゼント」など、1-2語のキーワードで検索されることが多いが、アメリカでは「gift idea corporate」「unique gift for women」など、3-4語のキーワードを組み合わせて、検索の対象をできるだけ絞り込もうとする傾向が強い。
実際、アメリカのYahoo!は日本よりも検索窓が長くなっており、サイトの横幅も950ピクセルと、Yahoo! JAPANの710ピクセルより33%も横長になっている。検索キーワードのロングテール化は、こんなところにも影響を及ぼしているのだ。
本記事は『Web STRATEGY』2007年7-8 vol.10からの転載です