第1話 会社設立から「ユーザビリティ」との出会いまで | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-

第1話 会社設立から「ユーザビリティ」との出会いまで

2024.4.27 SAT

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現在のWebビジネス戦略において欠かすことができない「ユーザイビリティ」。ユーザー視点からWebサイトを設計・構築し、Webビジネス戦略を立案する「ユーザビリティ」の方法論をいち早く確立し、また、独自のユーザ個別行動観察「ユーザビリティテスト」といった観察手法を用いてWebビジネスの世界にイノベーションを吹き込んできたのがビービットである。今回はビービットの設立メンバーのひとりであり、取締役兼プロジェククトマネージャーでもある武井由紀子氏にビービットという会社について、そして「ユーザビリティ」という概念についてなどの話を伺った。

第1話 会社設立から「ユーザビリティ」との出会いまで



価値観を共有できることが重要だった



——武井さんはビービットの創立メンバーでもありますが、最初に現在の会社を設立したきっかけを教えてください。

武井●最初から現在のようにインターネットに直接関わるような仕事をしていたわけではないんです。大学を卒業して、外資系のコンサルティング会社アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)に入社したのですが、そこでは主に組織戦略立案やシステム開発といった仕事をしていました。当時はインターネットがとても盛り上がっていた頃で、私個人としてもインターネットを使った新しいサービスをやってみたいという興味があって、それを会社の同期でインターネットに詳しい人に相談していたら、彼も同じようなことを考えていて……じゃあいっしょにやろうということで、仲間と共に会社を辞めてビービットを設立しました。そのインターネットに詳しい同期というのが現在ビービット代表の遠藤になります。

——そのときに運命的な出会いがあったのですね。

武井●そうかもしれないですね。会社を辞めて起業したとき不安じゃなかったですか?と、よく聞かれたりもするのですが、そういった不安はまったくなかったです。当時はお互いに信頼関係があれば、仕事の中身は何でもいいと思っていました。マーケットが変われば、仕事内容も変わってくるわけですし。いっしょに会社を創ってやっていくためには、業務内容よりも個人個人の価値観が共有できるかどうかのほうが大切だと思うんです。遠藤をはじめ創業メンバーとはそれを共有できているので、互いに信頼し合えました。会社とはいえ、決して売り上げだけの話になるということもないですし。自分たちが思い入れることができて、人の役に立つ仕事がしたいという点が共通しています。

いっしょに仕事をしている人と価値観がずれてしまうと、どんな仕事であってもつらいなって感じますよね。友人などに話を聞いても、仕事内容自体で悩んでいるよりも人間関係で苦しんでいたり、表層的なところで悩んでいたりといったことが多いようで。それよりは仕事の哲学のほうが重要だと思います。特にいっしょに会社を経営していくためには、そこに共通の価値観がないと苦しいと思いますね。


ユーザーのことを考えたシステム開発



——大学卒業後、コンサルティング会社を選んだのはなぜでしょうか?

武井●理由は大きくふたつあって、ひとつは、モノをつくるメーカーなどよりも自分自身が商品価値になる仕事に興味があったからです。コンサルタントというのはそういった点において、自分自身が商品になるものだと当時は思ったからですね。あとひとつは、私はどちらかといえば “黒子的”な役割が好きで、自分が表に出るよりも、何かをやりたい人を助けるとか、抱えている課題を解決する裏方稼業が好きなのでコンサルティングの仕事が向いているのかなという思いがあったからです。あと、社風としては外資系の企業体質のほうが私には向いていたこともありますね。

——武井さんは現在ビービットではどのような役割をしていらっしゃるのですか?

武井●取締役という意味では、主に会社の業務開発や広報、総務を担当していますが、今は新サービスの立ち上げもひとつ手がけています。また、プロジェクトマネージャーとして複数のお客様を担当させていただいて、スタッフといっしょにプロジェクトを推進しています。

社員は現在40名程度いて、コンサルティング部門のコンサルタント、ソフトウェア部門のエンジニア、管理部門、経営陣という構成ですが、大半はコンサルタントになります。デザイナー、コーダー、フラシャーなどは外部で、案件に合わせて最適なところにお願いし、協業してプロジェクトを進めて行きます。提案した内容が絵に描いた餅に終わらないよう、コンサルティング会社の立場でありながらも制作まで責任を持って行うのが弊社の特徴です。

——設立当時から「ユーザビリティ」を意識していたのでしょうか?

武井●2000年に会社を設立して、最初は自分たちでWebを使った自社サービスを立ち上げようとしたのですが、正直なかなかうまくイメージがつかめないでいました。その反面、当時はインターネットバブルの絶頂でしたので、ベンチャーキャピタルから投資の話とかもたくさんありました。でも、インターネットビジネスがただ流行っているから、あるいは儲かるからといった中途半端な気持ちでは、会社としてはうまくいくわけがないとみんなが気づいていて、結果として出資の話はすべてお断りしました。

とはいえ、そのうちに会社の資本金はなくなってくるので、何とかしなければいけない。私たちの強みはインターネットの知識とコンサルティングの経験だけだったのですが、そんなときに代表の遠藤が「ユーザビリティ」という概念に出会ったのが契機でした。遠藤から「ユーザビリティ」について聞かされて、私たちもそれだったら情熱を持ってできるし、何よりそれは時代の要請だと思いました。今は皆、「より自分にあったもの」を求める時代ですよね。そうやって消費者ニーズが多様化・細分化し、ひとつのモノでは全員のニーズを満たすことができなくなる中で、「ユーザ中心」というパラダイムシフトは必ず来ますし、特にインターネットではその考えが重要になると思ったのです。

遡れば創業メンバーの大半は前の会社でシステム開発の仕事に関わっていて、そのときに使う側のことを考えずにシステムを作ってしまうと、どんなにいいシステムでもまったく使ってもらえないという経験がありました。そういった経験があって「ユーザビリティ」という概念に触れたことで、フラッシュバックしたように、Webが企業と個人を繋ぐ媒体になっていくときに、ユーザーのことを考えてシステム開発をしていくことは絶対必要だし、重要になってくると強く思ったのです。


——第2話に続く ——

(インタビュー/編集部 撮影/谷本夏 編集/蜂賀亨)






[プロフィール]
(株)ビービット取締役
武井由紀子(たけい・ゆきこ)


早稲田大学政治経済学部経済学科卒業後、アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)入社。金融機関の組織戦略立案や官公庁のシステム開発に従事した後、ビービット設立に参加。ビービットでは、金融機関や製造業、インターネット専業企業などのウェブサイトコンサルティングに携わる。主な関与先は、三井住友銀行、本田技研工業、Yahoo!JAPAN、マネックス証券など。著書に『ユーザ中心ウェブサイト戦略』(ソフトバンク・クリエイティブ、2006)、『ウェブ・ユーザビリティルールブック』(インプレス、2001)がある。



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