D2 05 レポート 【アクセスをアップさせるWeb制作現場の最新ノウハウ】

会場風景
Designer meets Designers 05 レポート

おもてなしの心と小さな工夫がアクセスアップを呼び起こす!
アクセスをアップさせるWeb制作現場の最新ノウハウ





第5回目を迎えるDesigner meets Designers(以下、D2) は、「アクセスをアップさせる Web制作現場の最新ノウハウ」をテーマとして、2009年3月2日(月)に開催された。ここでは、その模様をレポートする。
※本コンテンツ中の社名表記や肩書きなどは、イベント開催当時のまま表記されています。あらかじめご了承ください。

現場で活躍するWebデザイナーやWebディレクターはもちろんのこと、「アクセスアップ」という言葉に敏感なクライアント側のWeb担当者、広報スタッフなど、実に多彩なポジションの参加者が集まった。

会場はすっかりおなじみとなった、六本木アカデミーヒルズ49階。当日は遠方の山々まで見渡せるような快晴で、参加者たちは皆、窓際で談笑したり写真を撮ったりと、ゆっくりとその眺望を楽しんでいた。

ワークフローの導入で
効率のいいWeb制作を実現しよう


そしていよいよ、第5回目のD2がスタート。
小誌『web creators』編集長の佐藤弘基が開演のあいさつをすると、すぐにSESSION 1「Web担当者とWebデザイナーが知っておきたい上手な仕事の進め方」の講演者である(株)キノトロープ取締役の福井幸子氏が登壇した。

「実は私、5年ほど前までデパ地下のお惣菜屋さんで店長をしていたんですよ。ところがあるとき、『このまま一生デパ地下で終わるのはどうなのかな......』と思いまして。一念発起して入社しました」
異色の経歴を持つ福井氏は、入社後、秘書や総務などさまざまな職務を担当。現在は営業スタッフの中心的存在として、忙しくクライアントのもとを飛び回っているという。

そんな福井氏が、「スムーズに仕事を進めるためにもっとも重要」だと感じているのが、同社式のワークフローだ。
「皆さんも現場の仕事をしていて感じられていると思いますが、なぜかWebプロジェクトというものは混迷しがちで、なかなかスムーズに進まないケースが多いと思います。
そこで役立つのがキノトロープ式のワークフローです。弊社ではWebプロジェクトを『用件定義』から『効果測定』までの7つのフェイズに分けて、各フェイズで必ずクライアントの承認を取り、報告会を行うようにしています」こう語ると、各フェイズの内容、メリット、ポイントなどを細かく解説。営業スタッフならではの視点で、クライアントとスムーズにやりとりを進める方法を披露していった。

そのほか、無駄な作業を増やさないためのガイドライン策定法、効率のよい制作スケジュールの組み方など、同社が培ってきたノウハウが惜しげもなく公開され、参加者たちも熱心に聞き入っているようだった。
続いて、あとあとトラブルになりにくいスマートな見積もりの出し方をレクチャーした。
「制作一式いくら、という形で見積もりを出す方も多いと思いますが、これはトラブルにつながりやすいのでやめたほうがいい。TOPページデザインはいくら、画像加工1点につきいくら、といったように、できるだけ細かく見積りを出すことをお勧めします。こうすることによって、お客さんに各作業の細かな金額や手間をしっかりと意識してもらうことができますし、追加作業が出た場合にきっちりお金を出していただくこともできますよね」と解説した。

1時間という限られた時間の中でたっぷりと語られた、キノトロープ式のワークフロー。
明日から使えそうな具体的ノウハウ、まねしたいテクニックが満載で、会場の参加者たちも大いに満足した様子を見せていた。

ワークフロー図 講義の様子


爆発的なアクセスアップに欠かせない
ささいな工夫とは?


続くSESSION 2に登壇したのは、(株)プレイズム代表取締役の成川秀幸氏。「制作サイトに新規ユーザーを呼び込む新機軸」というテーマで、アクセスアップの秘密を解説していった。

「Webクリエイターはすぐに『どうすればアクセスがアップするのか?』ということを考えてしまいがちなんですが、今日はいったん、そういったことを考えるのをやめましょう。まずは単純にアクセスアップした事例を集めて比較・分析することから始めてみたいと思います」 このように切り出すと、早速事例を紹介。

メルマガの発行やキャンペーンの実施などで地道にアクセス数を上げていったゲーム系のWebサイト、タレントなどの起用がきっかけとなり、あるタイミングで急にアクセス数がアップしたコスメサイトを挙げ「アクセスアップのパターンとしては、このように地道型と爆発型がある。僕は、爆発型のほうに注目しました」と続けた。

突然、爆発的にアクセスをアップさせるためには、先ほど紹介したコスメサイトのように、タレントや有名なブロガーなどといったキーパーソンの存在が欠かせません。彼らはとても強力なネットワークを持っており、しかも情報を発信し広めていく能力がズバ抜けて高い。そういう人がひとりでもいると、いきなりドーンとアクセスが上がることがあります。ただ、予算や納期の問題でキーパーソンをうまく立てられないこともある。

そこで、次に注目したいのが『記憶にとどまるささいな工夫』を施すことで爆発型のアクセスアップを実現した事例です」こう語ると、続いて雑貨販売サイトの事例を紹介。
とある商品を期間限定で販売するために、販売前の2週間、告知ページを公開したという。
「2回ほど期間限定の商品販売を行いました。1回目は2週間ほど告知ページを公開し、その後2週間販売ページを公開するというパターン。実はこれが大失敗で、まったく購買に結びつきませんでした。そこでリベンジとばかりに2回目は、2週間の告知ページ公開期間に、予約を取るようにしたんです。予約といっても予算がなかったので、ただメールで予約番号を送っただけ。さらに、予約して購入した人にはちょっとしたオマケをつけるという工夫も加えました。これだけの工夫で、2回目の販売数が飛躍的にアップしたのです」
予約番号が送られてきたことによって、告知サイトで見た情報が記憶に残り、そしてオマケがもらえるという特典が購買を後押しする--。たったこれだけの工夫で劇的な変化が起こったのだ。

「この事例でわかるように『記憶にとどまるささいな工夫』というのはとても使えるテクニックだと思います。予算と手間をかけずにアクセスアップにつなげることができるので、ぜひ皆さんにも使いこなしてほしいですね」成川氏はこうまとめると、続いて「新規ユーザーを惹きつけるWebサイトを制作するにはコンテンツのモジュール化が欠かせないこと」や「LPOが有効であること」を説明した。

ほかにもクライアントとユーザー双方を納得させるWebサイト制作の方法などについて言及。「アクセスアップのテクニックはいろいろあるけれど、そこばかりに目を向けていると本当にいいWebサイトがつくれなくなってしまう。今日紹介した技を生かしながら、最終的にはクライアント、ユーザーが満足するWebサイトをつくってほしいな、と思います」と締めくくった。

成川氏 聴衆


ユーザー心理から考える
アクセスアップのための基本対策


15分の休憩を挟んで行われたSESSION 3には、“ウェブ商人”の川島康平氏が登壇。
おもに起業家や士業(弁護士、税理士など)の顧客向けのWebコンサルティングを手がけており、全国各地で行われているWebセミナーでも頻繁に講師を務めている。またWeb関連の著書も豊富で、中小企業の経営者や自営業者などからの信頼も厚いという。そんな川島氏が今回語ったテーマは「リピーター率を向上させる現場のノウハウ」。

まずは心理学的な観点から、リピーターになる顧客の心理をじっくりと解説していった。
「今回はあまりWebだけにこだわらず、リアル店舗を含めたいろんな事例・事象から、顧客心理を探っていきましょう。早速ですが、コンビニのお客さんは、なんと80%がリピート客だそう。理由は立地がいいから。自宅や会社のすぐ目の前にコンビニがあったら、そりゃ毎日のように利用しますよね。
ではWebの中の立地のいい場所とは、どういうところだと思いますか? そう、検索結果の上位やお気に入り、RSSということになりますよね」数々のセミナーで講師を務めているだけあり、川島氏の講演は実に軽やか。「登山部よりワンダーフォーゲル部がはやった理由に、『バンドワゴン効果』(多数に人気のあるもの、支持されているものに心ひかれる現象)が見られること」、「28年間、人気旅館ランキングで1位を取り続けている老舗旅館・加賀屋に、『親近効果』(最後に提示された情報が強く心に残る心理現象)が見られること」などを、巧みな話術でテンポよく、次々と紹介していった。参加者たちは川島氏の説明に耳を傾けながら、「これをWeb制作に置き換えたらどうなるか」を真剣に考えている様子だった。講演を聴きながら自らの頭をフル回転させ、なにか思案しているような表情や、うなずいたり、ハッとするような表情を見せていた。

続いて川島氏は、「訪問者を常連さんに変えるライティング術」を披露。多くのWebクリエイターが苦手とする文章について、ポイントを解説していった。
「ライティングをするうえでもっとも重要なのが、『ターゲットをできるだけリアルに、ありありとイメージすること』。できればタレントでも知り合いでもいいので、『特定のひとり』をイメージして書くといいですね。
万人向けの文章を書いているようでは、アクセスアップは望めません。『あの人に、このメッセージを、しっかりと伝えるんだ』という気持ちでライティングを進めていきましょう」こう切り出すと、「ツァイガルニック効果」と呼ばれる心理効果を利用して、ユーザーの心をつかむキャッチコピーをつくる方法などを解説した。

最後に、「お客さまを虜にするコンテンツ」「お客さまに特別感を与える『えこひいきマーケティング』の極意」についても言及。セールスのセオリーにのっとった工夫をWebサイトに施すことで、いかにリピート客が増えるかを、実例を挙げながらていねいにレクチャーしていった。

こうして、1時間のSESSIONが終了。多くの参加者から盛大な拍手が送られ、熱気の冷めやらぬ中、川島氏の講演は幕を閉じた。

川島氏 


ユーザーを大切にしたデザインが
アクセスアップへの道を切り開く


第5回目のD2を締めくくるSESSION 4の講演者は、(有)アズ・シーツー代表取締役の堀内敬子氏。女性らしいこまやかな工夫で、ユーザビリティの高いWebサイトを数多く制作しているという。

そんな堀内氏が今回打ち出したテーマは「アクセスを向上させるプロのデザイン手法」。
アクセスを上げるためにデザイナーとしてできる工夫とはいったいどんなものなのか。どのような考えを持ってデザインを進めればアクセスが上がり、なおかつ良質なサイトを生み出せるのか......。多くのWebデザイナーが抱える疑問に応えるような内容で、講演が進められていった。

「お客さまから『アクセスをもっと増やしたいんだけど、何かできない?』と相談されるケースは、とても多いと思います。でもそこで『だったらSEOですね』と即答してはいけない。なぜならお客さまは、『アクセスを増やして、さらに売上げを伸ばしたい』と考えているからです。ただアクセスを上げるだけでなく、そのもっと奥深くにある目的やお客様のニーズを、的確に把握しないといけません。なによりも大切なことは、真剣にお客様とユーザーのことを考えること。この気持ちなくして、良質なWebサイトを生み出すことはできないのです」こうきっぱりと言い切ると、次に「アクセスアップのためにデザインjでできること」を解説していった。
「デザインでできることはいろいろありますが、なんだかんだ言ってもやっぱり欠かせないのがSEO。サイトをつくってからSEOのことを考えたり、SEO専門の会社に丸投げするのではなく、つくりながらSEO対策を施していくことが重要です。よって、デザイナーにもSEOの基礎知識は必須。また、構造を意識したデザインとコーディングを行うことが欠かせません」こう説明したあと、そのほかにクライアントとデザインについてのやりとりをする際のコツや、今後の検索結果ページの傾向などについても言及。デザイナーなら知っておきたい必須テクニックや、最新の情報、業界動向が公開された。

また、ユーザーの心をつかむバナー広告も多数紹介され、そのアイデアと工夫には多くの参加者たちが驚いた様子。静かな会場から「このバナーはまねしたいね」、「すごいこと考えるなぁ」というささやき声が聞こえるほどだった。さらに、リピート率を高めるため離脱率を下げるデザイン手法も紹介。
「デザインでできる解決策は大きく分けてふたつ。ひとつはユーザーのストレスを軽減する対策を行うこと、もうひとつはユーザーのことを考えたおもてなしを盛り込むことです」こう語ると、合計で7つの「ストレス軽減テクニック」と「おもてなし手法」を解説した。

そして最後に、ユーザーの再訪問を誘導する方法を説明。人間の記憶構造や心理の面から導き出しされた、堀内氏ならではのノウハウが披露され、盛りだくさんの内容でSESSION 4が終了し、第5回目のD2が終了した。

 


■ゲストプロフィール

福井幸子氏(株式会社キノトロープ)

福井幸子氏 (株式会社キノトロープ)
SESSION 1「Web担当者とWebデザイナーが知っておきたい上手な仕事の進め方」
1981年生まれ、北海道出身。東京経済大 学現代法学部卒業後、デパ地下のコロッケ屋の店長を経験。2005年(株)キノトロープ入社。ノンプロフィットの畑で経験を積み、営業/広報担当取締役に就任。現在は、社内セミナーなどの講師を務め、キノトロープのWebソリューションの布教活動を実践中。監修『Web年鑑2007』


成川秀幸氏 (株式会社プレイズム)

成川秀幸氏 (株式会社プレイズム)
SESSION 2「制作サイトに新規ユーザーを呼び込む新機軸」
(株)プレイズム代表取締役。立命館大学理工学部卒業後、1996年からフリーランスのグラフィック&サウンドデザイナーとして活動開始。Corneliusのリミックス作品を手掛けるなど多角的視点からデザインやWebサイトをプロデュースし数々の賞を受賞。
2003年プレイズム設立。Webサイト構築から楽曲制作まで幅広く活躍中。


ウェブ商人 川島康平氏

ウェブ商人 川島康平氏
SESSION3 「リピーター率を向上させる現場のノウハウ」
大学卒業後、(株)朝日ネットに入社。テクニカルサポート、Webサポート部の部門長を歴任。Webディレクターとして人材派遣会社、コンサルティング会社(現職) を渡り歩き、ダイレクトマーケティングをベースとした独自の理論を構築する。
著書『お客をつかむウェブ心理学』、『1000人のマーケットで1億稼ぐ!』


堀内敬子(有限会社アズ・シーツー)

堀内敬子(有限会社アズ・シーツー)
SESSION4 「アクセスを向上させるプロのデザイン手法」
(有)アズ・シーツー、代表取締役/ディレクター/デザイナー。雑誌編集、Web制作会社勤務、フリーランス等を経て、2005年11月にWeb制作会社を設立。結果を出すことにフォーカスしたコンサルティング・ 制作・運営を請け負う。
書籍『現場のプロから学ぶXHTML+CSS』を共著で執筆。雑誌連載・執筆、講演等。

 


文=秋山由香((株)Playce)
撮影=飯田昌之



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