「第13回文化庁メディア芸術祭受賞」発表会レポート

「第13回文化庁メディア芸術祭受賞」発表会レポート

メディア芸術の創造とその発展を図ることを目的に、1997年から毎年開催されている文化庁メディア芸術祭の受賞作品発表会が、2009年12月3日東京・CG-ARTS協会において行われた。年々注目度が高まっている本イベント。13回目となる今回はアート部門、エンターテインメント部門、アニメーション部門、マンガ部門の4部門に世界54カ国・地域から2592点という過去最多の応募点数に。会場には約50名のマスコミが詰めかけ、期待が高まる中での発表会となった。

(取材・文=川俣綾加)


今回の受賞傾向は“スケールの壮大さ”

最初に、本年の受賞傾向や審査の総評について述べられた。「モバイル系プラットフォームやオリジナルデバイスを自分でつくれるようになったことも応募点数増加の要因だ」と語るのは、審査委員として初参加というアート部門審査委員・関口敦仁氏。問題提起を意欲的に行った作品や“新しい技術をどのような見え方にできるか”に力を入れた作品を意欲的に評価したという。また、マンガ部門審査委員・細萱敦氏は「歴史の中で人間性というものを客観的にとらえた作品が選ばれたと思う」と振り返った。これまでにも数多く生み出された“歴史もの”の中でも新しい視点が評価されたという。

結果としては、「自然と人間の関係」や「メディアと身体性」などをテーマにしたスケールの大きな作品が多数受賞した。



アート部門受賞作品


(c)David BOWEN

大賞『growth modeling device』
David BOWEN(アメリカ)
3Dスキャンで玉ねぎの芽の形をスキャンし、樹脂でその成長過程を再現していく動的インスタレーション。成長する姿が段階的に形づくられるが、もとの玉ねぎはすでに成長し変化したあと。実際の形を照らし合わせようとしても永遠に追いつけないという点は、情報化の限界にも通じる。


David BOWEN氏からは「大賞を受賞しとても光栄で、興奮しています。最新作とともに東京に行けることを楽しみにしています」とビデオメッセージが寄せられた



(c)Junghwan Sung

優秀賞『Mr. Lee Experiment』
Mr. Lee Experiment 制作チーム代表 Junghwan SUNG(韓国)
対象となっている人物をスポイドで吸い上げ実験装置の中に移動させ、まるでモルモットのように観察できるインタラクティブ・インスタレーション。人間を実験対象にするという視点が評価された。



(c)Lawrence MALSTAF

優秀賞『Nemo Observatorium』
Lawrence MALSTAF(ベルギー)
巨大な透明シリンダーの中に嵐を起こして、その中心から観察できるインスタレーション。観察者は台風の目のような渦の中心にいるため、影響を受けずにすむ。体験者の「静」とその周辺の「動」が、鮮やかな対比を繰り広げている。



(c)SHIMURABROS.

優秀賞『SEKILALA』
志村諭佳/志村健太郎(SHIMURABROS.)(日本)
ある家族に起こる非条理劇を3面スクリーンに映し出すことで、高度で演劇的な仕上がりになっている。ひとつの映像をみるのではなく立体感のある音と映像で表現する手法が注目を集めた。



(c)2009 和田永. All rights reserved.

優秀賞『Braun Tube Jazz Band』
和田永(日本)
「iPodを間違えてテレビの音声入力に接続したら、砂嵐が映ったんです。その砂嵐を撮影してアンプのジャックの先端をテレビに近づけると、なんと音が出てきた」と語る和田氏。画面に手を触れ体をアンテナ代わりにして、打楽器のように演奏するという斬新さは群を抜いていた。



エンターテインメント部門受賞作品


(c)2009 Zealot Co.,ltd / Neutral Nine Records

大賞『日々の音色』
ナカムラマギコ/中村将良/川村真司/Hal KIRKLAND(日本/オーストラリア)
YouTubeを介して世界中に存在するファンの協力のもと、Webカメラで撮影された映像を編集してつくられたMV。グリッド間でインタラクションが発生したり、グリッドを超えてやり取りが行われたりと膨大で綿密な計算のもとつくられたことがわかる。MVとしても曲のテーマに非常に沿っており、圧倒的な評価を得た。


「すばらしい賞をいただけて光栄です。受賞を機に、作品のメッセージがより多くの人に伝わってくれれば嬉しい」と、MVと同じようにWebカメラで撮影されたメンバーからのビデオメッセージが届いた



(c)岸本斉史 スコット/集英社・テレビ東京・ぴえろ (c)2008 NBGI

優秀賞『NARUTO-ナルト- ナルティメットストーム』
NARUTO-ナルト- ナルティメットストーム 開発チーム代表 松山洋(日本)
アニメ化されている少年ジャンプの人気漫画「NARUTO -ナルト-」をゲーム化したもの。タイトルムービーとゲームの間に差がないハイクオリティなCG表現で、アニメを自分で動かしているような感覚を味わえる。高度なCGを開発しゲームとして定着させたことで受賞にいたった。



(c)2008 Ki/oon Records Inc.

優秀賞『電気グルーヴ/Fake It!』
田中秀幸(日本)
2008年にリリースのアルバム「YELLOW」収録曲「Fake it!」のMV。果てしなく続いていくかのような高飛び込みの映像がテクノサウンドと融合し、曲の世界観を巧妙に表現している。



(c)相模ゴム工業株式会社

優秀賞『LOVE DISTANCE(http://www.lovedistance.jp/)』
伊藤直樹(日本)
公募で選ばれた遠距離恋愛中のカップルが、お互いに走って会いに行く様子をWebを通してリアルタイムに伝えるドキュメンタリー広告。1カ月にわたって東京―福岡間1000kmの距離を徐々に縮めていく2人を、多くの人々が固唾をのんで見守った。大きな反響を呼んだこと、2人のゴール直後に広告だと明かされる意外性が受賞に繋がった。



(c)Alvaro CASSINELLI / MANABE Daito

優秀賞『scoreLight』
Alvaro CASSINELLI/真鍋大度/栗原優作/Alexis ZERROUG(ウルグアイ・イタリア/日本/フランス)
線や三次元物体の輪郭を捉えて音を生成する楽器作品。光がさまざまな形をなぞって軽快に踊っているかのようなビジュアルや、技術的な側面が評価された。



アニメーション部門受賞作品


(c)2009 SUMMERWARS FILM PARTNERS

大賞『サマーウォーズ』
作者:細田守(日本)
2006年メディア芸術祭の大賞に輝いた『時をかける少女』を手がけた細田監督による劇場公開作品。世界に誇る日本の手描きアニメーションとしてトップに君臨している作品だ。


「この作品はインターネット上の巨大な敵と戦う家族アクション映画。親戚がアクション映画の主人公になる、というのは映画史上類を見ないものだと自負してます。一方、制作当初は田舎の家族が出てくるなんて誰が見るのか、という不安もありました」と細田監督。オリジナル脚本をもとにアニメーション映画を制作するチャンスは現在では少ない。そんな中で挑戦した映画として評価を受けたことに対して喜びを語った。また、「アニメーション業界も不況の中で元気をなくしている」と保守的な企画の乱立や企画そのものの減少に対して懸念を示した。「そんな状況の中、チャレンジ精神や心意気を認められたことは励みになる」と締めくくった



マンガ部門受賞作品


(c)幸村誠/講談社

大賞『ヴィンランド・サガ』
作者:幸村誠(日本)
月刊アフタヌーンで連載中の、中世ヨーロッパ・ヴァイキングの生きざまを描いた歴史漫画。戦場の中で生きる主人公が、幼い頃に聞かされた安息と豊穣の地「ヴィンランド」を目指して旅をするというストーリーで、多彩な登場人物を見事に描き分けている。また、構図や映画的展開などあらゆる側面で高い評価を獲得した。


作者の幸村氏。「すばらしい賞をいただいて恐縮しています。私のためにお時間をいただきましたが、緊張のあまり何を話していいのかわかりません(笑)。得意のモノマネでもしようか……」と照れる一面も。ディテールを描くため、作品に臨む前に取材旅行へ出向いたという幸村氏だが、資料になりそうなものをスーツケースに詰め込んでいたら膨大な量になったり、現地の子どもとのやりとりなど制作にあたってのエピソードを語った


今年度の受賞作で特に注目なのは、初めて外国人による漫画が受賞したことだ。日本の漫画表現のレベルは非常に高く、その目線で評価を受けた『ヒーシーイット アクア』は今後の漫画業界に革新をもたらしそうだ。フェイスティバルは2010年2月3日(水)~14日(日)に、東京・六本木の国立新美術館で開催される。ぜひ、足を運んで直に触れてほしい。


問い合わせ:
CG-ARTS 協会内「文化庁メディア芸術祭事務局」
URL:http://plaza.bunka.go.jp/

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