「Google Me」はFacebookに対抗するための武器になるか(後編)



「Google Me」はFacebookに対抗するための武器になるか(後編)
2010年7月20日
TEXT:小川 浩(株式会社モディファイ CEO 兼クリエイティブディレクター)

本記事は「「Google Me」はFacebookに対抗するための武器になるか(前編)」の続きになります。

「Google Me」とは、Orkut、Bloggers、GoogleBuzzなど、幾多のソーシャルメディアサービスを繰り出しながらもFacebookやTwitterの後塵を拝し続けるGoogleがリリースを検討しているとされる、新しいソーシャルメディアだ。


ここでも何度か述べているが、GoogleとはWeb全体をインデックス化し、自社の検索エンジンでどんな情報でも発見できるように整理するというミッションを掲げている企業だ。

しかし、ソーシャルメディアが急速に普及し始めたおかげで、検索エンジンがネット利用の起点だった時代から、ソーシャルメディア上のクチコミ(具体的にはそこに掲載されたURL)を起点としたネット利用へと、消費者行動がシフトしてきており、結果としてFacebookやTwitterのプレゼンスが相対的に大きくなっている。これがGoogleをひどく苛立たせている。

実のところ、Googleはソーシャルメディア向きの会社ではない。体質的に研究家的オタクであり、数学的あるいは理論的にすべてを割り切れる世界が好きだ。だからソーシャルメディアのようにあいまいな数の集団によるあいまいな情報の羅列と伝搬(僕はそれを「ソーシャルストリーム」と呼ぶ)という、ひどく計算しづらい世界は苦手なのだ。

現在、Googleは、おもに3つのライバルと激烈な競合状態にある。それは、

・Microsoft ・Apple ・Facebook
だ。

Microsoftとは、Windowsに対してChrome OS、Internet Explorerに対してChromeブラウザー、Officeに対してGoogle Apps、そしてBingに対してメイン事業であるGoogleサーチというように、直接的に競合している。この分野の戦いでは、シェアそのものをみれば検索以外の分野ではMicrosoftがまだ優位であるが、包括的にみればGoogleはMicrosoftの影響力を削り続けており、勢いはGoogleにある。

Appleとの戦いについては、詳しくは拙書『アップルVS.グーグル』(ソフトバンク新書刊)をご覧いただきたいが、スマートフォンやタブレットなどの新しいコンピューティング領域と、クラウド型のコンテンツ配信事業、およびモバイル広告事業において激しい戦闘状態にある(ただし、やや出来レースぽいところがあるのだが)。

対AppleにおいてはGoogleは分が悪い。それでもAppleは一企業として戦略が明確であるがゆえに、対策がとりやすく、さまざまな有力企業との合従連衡をおこないながら、さらに続く戦いに備えている。

そして最後がFacebookなのだが、Facebook一社というよりも、ソーシャルメディア全体といったほうがわかりやすいかもしれない。現代のソーシャルメディアサービス群は、公開されたAPIやRSSフィードなどのWebサービスによって、ほとんど無条件に複数の異なるサービス間でデータやコンテンツおよび機能の共有が進んでいる。

だからGoogleにはFacebookが直接敵なのだが、相手にしなければならないのはソーシャルメディア全体だ。そこで彼らはいろいろなサービスをリリースして対策を講じてきたのだが、結果としてうまくいっていない。

そこで、Googleとしては、まずはサービスとしてのFacebookひとつに焦点を絞って、彼らのサービスモデルを徹底的にコピーし、ライバルに教えを乞うてでも、ソーシャルメディアに自己をフィットさせていく努力をしなければならない。

それがGoogle Meだ。

一世を風靡したMicrosoftもYahoo!もMySpaceもAOLも、ネット世界では、盛者必衰で、あっというまに勢いを失う。それをGoogleはよく知っている。

だからこそのGoogle Meであり、それがどのようなサービスになるかはまだだれにもわからないが、それは必ずFacebookクローンの体を成してくるはずだ。

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[筆者プロフィール]
おがわ・ひろし●株式会社モディファイ CEO兼クリエイティブディレクター。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)、『仕事で使える!「Twitter」超入門』(青春出版社)、『ソーシャルメディアマーケティング』(ソフトバンククリエイティブ/共著)などがある。

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