Apple vs Googleの“次”の市場



Apple vs Googleの“次”の市場
2010年7月26日
TEXT:小川 浩(株式会社モディファイ CEO 兼クリエイティブディレクター)

米Google社は、「PC」、「モバイル」、「テレビ」、「自動車」の4つの市場へ侵攻する。これはAndroidの開発責任者であるアンディ・ルービン氏が公式に話している事実だ。このうちPCとモバイルについてはすでにAndroidによるさまざまなサービス開発に取り組んでおり、さらにGoogleTVをソニー等の家電メーカーとの提携によって一気に普及させようとしていることから、Googleの狙いは明らかだ。

しかし、4つめの市場である自動車業界への取組みに関しては、いまのところ大きな進展がないようにみえる。ただ、最近GoogleMapsを基本データシステムとして採用したカーナビが登場したように、地図・位置情報を介して自動車業界に入り込むことは、ある程度推測がつく(拙書『アップルとグーグル 日本に迫るネット革命の覇者』(インプレスR&D刊)P179でも紹介)。

さらに、僕は実は同書のP156にて、トヨタ自動車(株)とGoogleが組む可能性について触れている。

ソニー(株)を始めとする日本の家電メーカーは、正直すでに世界のトップメーカーというには脆弱な存在に成り下がってしまっており、日本の全家電メーカーの営業利益を足しても韓Samsung社一社に遥かに劣るようになってしまった。だから、日本の家電メーカーがGoogleと組んだとしても、Samsungが同じくGoogleと組んでしまえば、現時点では勝ち目がない。つまりテレビの市場では日本の将来は暗い。

ところがクルマであれば話は別だ。

自動車業界はいま、ガソリンやディーゼル燃料のエンジン(内燃機関)から電気モーターによる電気自動車(EV=Electric Vehcle)もしくは燃料電池自動車(FCV=Fuel Cell Vehcle)などの非内燃機関をベースとした自動車へと大きくシフトしつつある。自動車はネットとは異なり、物理的かつ動的なプラットフォームであり社会の交通手段としてのインフラに属する存在だから、一気に変革は進まない。だからエンジンからモーターへのシフトには明確にその契機が明確になってからも、少なくとも10~20年を要する。トヨタはその過渡期に、ハイブリッドカー(HV)で君臨している。

つまり、大きく変化していく激動の自動車業界にあって、トヨタはまだ次の時代の王者でもあり続けられる可能性を有している。だからGoogleと早く組めば、それだけほかの自動車メーカーとの競争に優位に立てる。

自動車はいまやCPUの固まりだ。動くコンピュータといってよい。
コンピュータはクラウド化する。それがGoogleの描く未来であり、だからこそ自動車もクラウド化させたい。
そのためのパートナーの選び方に優先順位をつけるとすれば、トヨタ、VW(フォルクスワーゲン)、メルセデス、BMWといった順番になるだろう。

いや、順番は関係ない。日産と組もうがホンダと組もうが、Googleはいずれすべての自動車メーカーのクラウド化にとりかかる。今年、そのきっかけが見えてくることはまちがいないだろう。


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[筆者プロフィール]
おがわ・ひろし●株式会社モディファイ CEO兼クリエイティブディレクター。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)、『仕事で使える!「Twitter」超入門』(青春出版社)、『ソーシャルメディアマーケティング』(ソフトバンククリエイティブ/共著)などがある。

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