あらためてiPhone 4のデザインを考える(後編)



あらためてiPhone 4のデザインを考える(後編)
2010年8月23日
TEXT:小川 浩(株式会社モディファイ CEO 兼クリエイティブディレクター)

本記事は「あらためてiPhone 4のデザインを考える(前編)」の続きです。


iPhoneが日本国内に上陸してから、早くも2年が経過したわけだが、日本の携帯電話と比べて足りない、もしくは劣っているとされたさまざまな機能が、iPhone 4にいたって相当に改善されていることがわかる。


たとえば、カメラ機能はつねに日本のケータイの”自慢”の機能であり、数百万画素の高画質撮影やビデオ撮影機能、テレビ電話機能などを早くから搭載してきた。しかし、iPhone 4のカメラも500万画素にまで追いついてきているし、ズーム機能や自分撮りのための正面カメラ機能、動画撮影機能を備え、さらにフラッシュまでもサポートしてきた。

日本のケータイメーカーはカメラの起動速度の速さや、光学ズームの倍数などの機能で自社製品を差別化することに躍起だが、もはやカメラ機能の差でiPhone購入を見送るユーザーは絶対にいないといってよい。

あとは電子マネー対応がないことを問題視する向きはあるだろう。日本では電車やコンビニにおける携帯電話による非接触決済システムがインフラ化しているからだ。

今回のiPhone 4ではこのサポートは見送られている。OSのアップデートでなんとかなる機能ではないので、電話本体の次のメジャーアップグレードで対応されることを期待するほかはないだろう。実際、Appleはつい最近近距離無線通信規格「NFC」(Near Field Communication)の専門家を雇い入れた。モバイル決済システムを導入するのは時間の問題である。

「iモード」や「EZ Web」などの、いわゆる公式サイトや勝手サイトというような携帯電話網専用のサイトを見ることはiPhoneにはできないが、これは僕の自説であるデスマグネット(消費者が購買活動をすることをためらう理由となる負の先入観)のうちの、外す必要のない種類になる。なぜならiPhoneを選ぶということは閉ざされた湖のようなケータイネットの世界から、PCと同じ自由で広い海のようなインターネットの世界を選ぶということだし、iモードよりもはるかに豊富な楽しみがあるAppStoreを選ぶことができるからだ。

iPhoneの進化はまちがいなく数年単位で計算されており、日本の携帯電話メーカーにはそうした体系だった開発目標はまったく見られない。メーカーにはあるのかもしれないが、日本のキャリアがキャリア間の正しくガラパゴス的な狭い世界での競争での、単眼的な戦いに終始していることで、結局世界市場に向けての開発はほぼ不可能だ。

携帯電話メーカーとしては、キャリア呪縛から離れて、低価格でほどよくカッコいいケータイをつくるか(SAMSUNG流)、世界をリードできるだれにもすぐには真似できない革新的なケータイをつくるか(Apple流)のどちらかを選ばねば、数年以内に市場撤退を余儀なくされることを早く理解するべきだ。


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[筆者プロフィール]
おがわ・ひろし●株式会社モディファイ CEO兼クリエイティブディレクター。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)、『仕事で使える!「Twitter」超入門』(青春出版社)、『ソーシャルメディアマーケティング』(ソフトバンククリエイティブ/共著)などがある。

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