プロジェクトは「コミュニケーション計画」で決まる(前編)



Webディレクターのためのプロジェクトマネジメント
プロジェクトは「コミュニケーション計画」で決まる(前編)
2010年8月25日
TEXT:滝澤 耕平(株式会社ロフトワーク シニアディレクター)

コミュニケーションを「設計」できているか

Webの重要度が高まるにつれ、Web制作は「ページ制作」から「開発プロジェクト」へと規模が拡大し、工程もより複雑化している。ロフトワークではWeb業界内でもいち早くプロジェクトマネジメントの考え方に着目し、その世界標準の知識体系“PMBOK”(Project Management Body of Knowledge)を制作現場へと積極的にとりいれてきた。

今回は、プロジェクトマネジメントの中でも特に重要な「コミュニケーション計画」について紹介しよう。



関わる人数が増えれば増えるほど、コミュニケーションは複雑になる


クライアントやWeb制作チーム、ユーザーといった多数のステークホルダーと効率的かつ確実にコミュニケーションをとるために定めるのが、「コミュニケーション計画」だ。これを疎かにするとコミュニケーションロスが発生し、プロジェクトの進行に深い影響を及ぼしてしまう。プロジェクト開始時にまず定めておくべきなのが、「コミュニケーション計画」なのである。

ちなみに、今回のポイントはコミュニケーションの「取り方」ではない。コミュニケーションの取り方は人それぞれ。話術に長けた人、淡々と物事を取り決めていく人など、プロジェクトマネージャー自身の個性が発揮される部分だ。今回は、その個性を最大限発揮するために、使用するツールや枠組みをどのように設計していくかという部分に焦点を絞っていく。

各コミュニケーションツールのメリットとデメリット

まずは、プロジェクトでよく使われるコミュニケーションツールについて一度整理してみよう。


ミーティング

【メリット】
○直接顔をあわせて話ができるので、細かいニュアンスが把握しやすい
○ブレスト、議論、交渉に向いている
○心理的に「きちんとコミュニケーションがとれている」という実感・安心感が得やすい

【デメリット】
○移動時間など、必要以上に長時間になることが多い




電話・Skypeなど

【メリット】
○相手の声が聞けるので、感触を把握しやすい
○簡単な連絡、相談、交渉に向いている
○心理的に「きちんとコミュニケーションがとれている」という実感・安心感が得やすい

【デメリット】
○問題が起こった際に「言った・言わない」の議論になりやすい




メール・メーリングリスト

【メリット】
○一度に多人数と情報共有ができる
○重要な連絡・相談・交渉に向いている
○履歴が文章で残るため、誤解を生みにくい

【デメリット】
○ニュアンスや雰囲気が伝えにくい
○話題が多いと管理が煩雑になる、または放置される可能性がある




PowerPointやExcelなどのドキュメント

【メリット】
○図や表などで視覚的に情報が伝えられる
○提案などに向いている

【デメリット】
○バージョン管理が煩雑になる




オンライン共有ツール(Wikiやオンラインストレージなど)

【メリット】
○一度に多人数と情報共有ができる
○デザインやドキュメントなどの確認、ステータス把握などに向いている
○情報が一元管理できる

【デメリット】
○ステークホルダーのリテラシーを考慮する必要がある
○ステークホルダーのセキュリティポリシーなどによっては利用が制限される




以上、ざっと特徴をまとめてみた。次回はこれらの特徴を把握した上で、具体的にどうコミュニケーションを設計し、計画に落とし込むべきか紹介していく。

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[筆者プロフィール]
たきざわ・こうへい●株式会社ロフトワーク クリエイティブdiv. シニアディレクター。大手出版社を経て2007年にロフトワーク(http://www.loftwork.jp/)入社。おもに中規模から大規模のCMSサイトの構築を得意とし、アバター制作などコンテンツディレクションも手がける。2010年10月にはプロジェクトマネジメントのイベント「PMI日本フォーラム」で登壇予定。

○loftwork.com:http://www.loftwork.com/
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