プロジェクトは「コミュニケーション計画」で決まる(後編)



Webディレクターのためのプロジェクトマネジメント
プロジェクトは「コミュニケーション計画」で決まる(後編)
2010年8月27日
TEXT:滝澤 耕平(株式会社ロフトワーク シニアディレクター)

本記事は「プロジェクトは「コミュニケーション計画」で決まる(中編)」の続きです。


はじめに

前回までは、プロジェクトにおけるコミュニケーション計画とフェーズごとのツール選定について解説してきた。最終回となる今回は、実装フェーズと終結フェーズについて取り上げたい。

▼プロジェクトフェーズ
 1. 要件定義フェーズ
 2. 設計フェーズ
 3. 実装フェーズ
 4. 終結フェーズ


3. 実装フェーズ

実装フェーズで重要になるのは「変更点の共有方法」だ。設計フェーズで決めたことが実装フェーズで変更になるのは、プロジェクトを進めていくうえで時々起こることである。変更が入ること自体は悪いことではなく、変更がプロジェクトをより成功に導く内容であれば、むしろ積極的に変更すべきだろう。

とはいえ、すべて変更するわけにもいかない。変更要望が発生した際は事前に以下のフローをめ設定しておくことが必要である。

1. 変更要望の受理 2. 変更を適用した際のインパクト分析(工数/技術的な制約など)
3. 変更要望を容れるべきか否かの判定
4-a. 【OKの場合】変更の適用/実行
4-b. 【NGの場合】変更要望の差し戻し

【ポイント】
事前にどのようなコミュニケーションツールとフローで変更の判定を行うかを設定しておき、ステークホルダー間で認識をそろえておく。ロフトワークでは通常その変更要望が一覧でき、しかもその要望への対応ステータスが管理できるオンラインスペースを使っている。Excelなどで管理することも可能だが、バージョン管理やステータス管理が煩雑になるため、一元管理できる方法で情報共有を行うとよい。

【このフェーズで有効なコミュニケーションツール】
●定例会(隔週 ○曜日 ○時から1時間程度)
●メーリングリスト(情報共有用)
●オンラインスペース(変更管理用/ドキュメント共有用)




4. 終結フェーズ

いよいよ終結フェーズだ。ここではきちんとプロジェクトを終結させるためのフローを設計しておこう。そのためには、納品成果物として必要なドキュメントの準備と納品方法、残タスクの確認方法とステークホルダー間でのその共有方法を決めることが必要だ。

【このフェーズで有効なコミュニケーションツール】
●オンラインスペース(変更管理用/残タスク管理用)
●納品報告用ミーティング
●納品成果物の送付


重要なのはコミュニケーション計画を共有すること

なお、このようにして立てたコミュニケーション計画は、必ずアウトプットとしてステークホルダー間で共有しよう。ちなみに筆者の場合は、プロジェクト発足時に作成する「プロジェクトマネジメント計画書」の中でコミュニケーション計画を定義し、ステークホルダー間で共有するようにしている。



コミュニケーション計画については、途中で変更が入ってもかまわないし、むしろその時々の状況にあわせて柔軟に設計を変えていくべき点でもある。ただしその場合には、必ずコミュニケーション計画を規定したドキュメントをアップデートし、ステークホルダー間で共有することが重要だ。

今回解説したコミュニケーション計画はあくまで一例にすぎない。実際はもっと複雑な要因が絡んでくる場合もあるだろうし、一度決めたとおりにそのまま進むこともめったにない。ただ、コミュニケーションにも計画/設計が必要だということを意識してプロジェクトを進め、ドキュメント化して共有することでその後のコミュニケーションロスを減らせる、ということはぜひ覚えておいてほしい。

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プロジェクトは「コミュニケーション計画」で決まる(前編)
プロジェクトは「コミュニケーション計画」で決まる(中編)





[筆者プロフィール]
たきざわ・こうへい●株式会社ロフトワーク クリエイティブdiv. シニアディレクター。大手出版社を経て2007年にロフトワーク(http://www.loftwork.jp/)入社。おもに中規模から大規模のCMSサイトの構築を得意とし、アバター制作などコンテンツディレクションも手がける。2010年10月にはプロジェクトマネジメントのイベント「PMI日本フォーラム」で登壇予定。

○loftwork.com:http://www.loftwork.com/
○loftwork.com リニューアルβ版:http://beta.loftwork.com/



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