実践! WEBビジュアルデザイン 第2回「デザインプロセスの落とし穴(後編)」

web creators/MdN Design Interactive共同企画 デザイン現場の目線で“リアルに語る”

実践! WEBビジュアルデザイン 第2回「デザインプロセスの落とし穴(後編)」


2010年12月24日
TEXT:文=田口 亮((株)フォーデジット)

※本記事は「実践! WEBビジュアルデザイン 第1回「デザインプロセスの落とし穴(前編)」」の続きになります。前編をお読みでない方は前編からお読みください。

Webデザインに必要な知識や考え方は、普遍的なものもあれば、案件やクライアントによって変化する部分もある。PCやネットの技術やトレンドの変化によっても変わっていく。そのような知識や考え方、取り組み方を学び、考えるうえで大事なことは、現場で役に立つ、実践的でリアルな知識を得ることだ。

そこで本連載では、Webデザインの現場で役に立つ、実践的なWebビジュアルデザインのトピックや考え方、取り組み方について考えていく。




ふだんWebをデザインしていて、デザインがうまく決まらなかったり、なんとなく全体的に良くない、デザインが迷走してしまうことがある。そこで今回は、そのような“デザインでハマるツボ”をいかに回避するかについて、Web制作のビジュアルデザインの現場の目線で解説する。


■デザインのプロセス

米Adaptive Path社のJames Garrett氏がWebデザインやソフトウェエアのユーザーエクスペリエンス(UX)を構築するための5段階モデルを提唱している。それは「戦略」「要件」「構造」「骨格」「表層」という5つのステップを段階的に交差しながらプロジェクトは進行して行く、というものだ。かなり昔に発表された考え方だが、非常に理にかなっていて今でも有効な理論としてとらえられている。


Jesse Garrett氏の「5階層構造」


ただ、この理論を綿密に実践するのはものすごくたいへんで、ビジネス、消費者、デザインなど各分野への知識に加え、高度なプロジェクトマネジメントが必要になってくる。戦略フェーズにおけるユーザーニーズ把握だけでもマーケティングリサーチのノウハウが必要なほか、サイトの目的を定義するのにビジネスの理解も必要だ。クライアントにもリテラシーや忍耐を要求するし、専門のスタッフを各工程にアサインできるほど予算の大きいプロジェクトではないことも多い。そのようなときは、「戦略」から「骨格」までをひとまとまりにまとめ、企画書とサイトマップ、ワイヤーフレームに落としこんで、後はデザインベースでクライアントと詳細を詰めていくことが多い。





■ビジュアルデザインはいつ行われるか

表層で行われるビジュアルデザインは、成果を左右するインパクトをもっている。視覚化の作業は振れ幅が非常に大きく、すべてを凌駕する魅力をもったデザインとなる場合もある一方で、下手をするとすべてを壊してしまうようなデザインや、まったく的外れなデザイン、ブランドイメージが担保できていない、といったことも起こりうる。

認知心理学者Donald Norman氏の「エモーショナル・デザイン―微笑を誘うモノたちのために」(新曜社刊)では、「魅力的なもののほうがうまく行く」と定義しているが、その理由として「ポジティブな情動はストレスに対処しやすくなる」と語っている。つまり、魅力的に見えることで、そのほかの機能を凌駕することもあり得るほど、ビジュアルのインパクトは大きいということだ。

この言葉はデザイナーに対してはポジティブに受け入れられる一方、構造設計やワイヤーフレームを設計する人に対してはネガティブに受け入れられる可能性がある。James Garrett氏の5階層構造で最終工程に行われていたビジュアルデザインが、情報設計やインタラクションデザインといった「構造」や「骨格」フェーズにも関連してくるからだ。

上記のデザインプロセスを踏襲している通常のプロジェクトでは、インタラクション設計やユーザビリティ、ナビゲーション設計は専門家が行っていて、そこにはデザイナーが入り込むプロセスはそれほど多くない。むしろ専門領域として線が引かれていることすらある。“デザインで解決する”という言葉が使われ、表層フェーズにまで問題を先送りにするケースすらあるのだ。

個人的な意見だが、IDEOやAppleなどのプロダクトデザイン領域で、“プロトタイプをどうとらえるか”によってこの問題を解決しているように感じられる。このように具現化されたアウトプットに対してアプローチをかけていく手法は、デザインプロセスを改善できるヒントとなる。



■ポイントはコミュニケーションの質を上げること

前編でも触れた通り、スタッフ間の効果的なコミュニケーションが重要になってくる。ディレクターとデザイナーだけでなく、マーケッターやクライアントも含めたプロジェクトスタッフが同じ方向を向いて同じ達成物をイメージできていれば、大きな方向性の違いは起こらない。デザインへのプロセスはディレクターを経由することが多いので、ディレクターからデザイナーへの伝達をどれだけ効果的にできるか、ゴールの指標や達成物の意味などをデザインの言葉に変換してコミュニケーションできるかが重要だ。

この「デザインの言葉に変換」するのがなかなか難しい、日々試行錯誤している段階ではあるが、いくつかのフレームワークも登場している。次回からはこれに関連したディレクションの話題を取り上げたい。




FOURDIGIT Inc.

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