Facebookがmixiを追い抜くための“秘策”

Facebookがmixiを追い抜くための“秘策”
2011年1月17日
TEXT:小川 浩(株式会社モディファイ CEO 兼クリエイティブディレクター)

Facebookはmixiを追い抜き、2012年末には日本最大のSNSになる。これは予言と言っていい。

根拠としては、日本人には使いづらいと酷評されるUI(ユーザー・インターフェイス)も、実名制も、Twitterの普及によって受け入れられる素地ができていることにある。また、アーリーアダプターやイノベーター層がmixiからすでにFacebookに関心を完全に移していることなどがある。もっとも、Facebookの国内における成功予測をいちばん裏付けるのは実は(株)ミクシィ自身にある。Facebookの機能やサービスをそのまま取り込む、コピーキャット戦略をとっている(株)ミクシィの行動そのものが、彼らがFacebookが日本国内でも成功する考えている最大の証拠だろう。

実際、Facebookはこれまで日本人に受け入れられてこなかったのではなく、正式に日本に上陸していなかっただけだ。これまでは、国内の有志がボランティアで日本語化しただけであり、米Facebook社が本格的に日本市場に侵攻することを決定して以来(Twitterの成功が引き金になったことはまちがいないだろう)、彼らは順調にユーザー数を増やしてきた。米Facebook社は原則として、日本国内への特殊なローカライゼーションを行うことはないだろう。それはTwitterと同じだ。米Twitter社も、たとえばハッシュタグの日本語対応を怠っている。しかし日本人に受け入れられた。現在のFacebookの国内ユーザー数は300万人に若干欠けるところくらいのようだが、Twitterも100万ユーザーを突破したころから急拡大した。Facebookもこれから同じような成長カーブを描くだろう。

いずれにしても、米Facebook社はmixiに対抗するために特別な対応をすることはない。自分たちをmixiに合わせて変えることはないし、その必要も感じていない。グローバル戦略を推し進める中で、淡々とユーザー数を増やしていくだろう。mixiと違うのは、そして(株)ミクシィ自身が焦燥に駆られるのは、Facebookが企業のマーケティングに活用されるプラットフォームになる可能性があり、mixiには(匿名制を維持している限り)それは手に届きそうにない分野であることだ。米Facebook社が日本国内において強く押し進め、さらにそれがmixiを直接追いつめることになるのは、ビジネス分野のSNSとして成功するという戦略だ。mixiはいまのところFacebookの数倍のユーザー数というアドバンテージがあるが、ビジネス分野のSNSとしてFacebookに対抗するには実名制の採用しかない。しかし実名制を採用すれば匿名文化の中でふくれあがってきたユーザー規模を失う恐れもある。そのジレンマが(株)ミクシィを苦しめている。

もうひとつ。最近500億ドルもの企業価値をベースとして、新たな出資を受けて財務基盤をさらに強くした米Facebook社は、自分たちのプレゼンスが届かない国のローカルSNSを買収する戦略に出るかもしれない。いままで彼らは比較的小規模な買収しかしていないが、史上初の10億人規模のインターネットサービスの座を一刻も早く到達するために、今後はなりふりかまわない行動に出る可能性がある。

つまり、米Facebook社がmixiを買収する可能性がある。米Facebook社にとってmixiを買うことは安い買い物だ。もちろん上場企業である(株)ミクシィを買収するのは容易ではないが。

それでも、Facebookがmixiを飲み込めば、仮に現在のユーザー数2200万人が(匿名制から実名制に移ることで)1,100万人に半減してしまっても、現在のFacebookの国内ユーザー数300万人弱と足したら一気に1,400万人になる。そのうえで順当な成長を続けることで、国内で2年後には、テレビ東京系のニュース番組「WBS」(ワールド・ビジネス・サテライト)で公言したように、彼らの目標通り5,000万人のユーザーを獲得できる。

先述のように、Facebookはこれまで大規模な企業買収をほとんどしてこなかった。しかし、米Google社もそうだったが、ある時期から自社に足りないものは買うという大人の選択に手を出した。Facebookもその時期に来ている。

mixiを買うかどうかは、あくまで可能性を論じているだけだ。問題なのはFacebookは特にmixiと張り合うまでもなく日本国内でも成長する、そしてmixiをもし買うとしても、それは単にその成長を加速させるだけであり、不可欠要因ではないのだ。




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[筆者プロフィール]
おがわ・ひろし●株式会社モディファイ CEO兼クリエイティブディレクター。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)、『仕事で使える!「Twitter」超入門』(青春出版社)、『ソーシャルメディアマーケティング』(ソフトバンククリエイティブ/共著)などがある。
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