実践! WEBビジュアルデザイン 第5回「デザインはなぜひっくり返るのか(前編)」

web creators/MdN Design Interactive共同企画 デザイン現場の目線で“リアルに語る”

実践! WEBビジュアルデザイン 第5回「デザインはなぜひっくり返るのか(前編)」


2011年1月21日
TEXT:文=田口 亮((株)フォーデジット)

Webデザインに必要な知識や考え方は、普遍的なものもあれば、案件やクライアントによって変化する部分もある。PCやネットの技術やトレンドの変化によっても変わっていく。そのような知識や考え方、取り組み方を学び、考えるうえで大事なことは、現場で役に立つ、実践的でリアルな知識を得ることだ。

そこで本連載では、Webデザインの現場で役に立つ、実践的なWebビジュアルデザインのトピックや考え方、取り組み方について考えていく。




■できる限り避けたい事態を考える

今回はデザイナーや制作会社にとって「できる限り避けたい事態」について考察したい。適切なプロセスで行ったプロジェクトではそのようなことはあまり起こらないが、どういうプロセスで行ったアウトプットであれ、クライアントにデザインを提出する瞬間がやってくる。今回のテーマである「できる限り避けたい事態」というのは、デザインを提出した際にクライアントからOKが出ない状態のことだ。

理由としては下記の5つの理由が考えられる。

【1】デザインの方向性が違う
【2】デザインが気に入らない
【3】伝えたいポイントの優先順位が違う
【4】わかりづらい・使いづらい
【5】クライアント内で別の判断が下った
※クライアントからのデザインに対する意見を経験的に集約し分類



以下、それぞれのケースを具体的に挙げて内容を説明していこう。


■【ケース1】デザインの方向性が違う→トンマナ・ディレクションの失敗

初期段階でデザインコンセプトや方向性の擦り合わせができていないまま、ある程度デザインを詰めてしまうケースも実際には存在する。その場合に起こりやすい失敗がこのケースだ。

例)
すでにあるパンフレットやチラシに合わせてWebサイトを構築。前提としてクライアント担当者ともパンフやチラシの情報、というコンセンサスも取れている。ディレクターA君は、パンフやチラシに派手な色が利用されているので、当然パンフのテイストやチラシのテイストを踏襲して、Webサイトのデザイン指示を行った。その結果、派手なチラシっぽい「踏襲したデザイン」が完成する。そこで、クライアントに提出すると……NG。

これはかなり基本的なことだが、こういったケースではなくても踏襲するものが参考サイトだったり、雑誌だったりすることもある。すでにある制作物を踏襲するとしても、“ほかの制作物でなぜこういうデザインがなされているのか”や、“「パンフやチラシを踏襲して」という言葉は何を意味するのか”を分解して理解する必要がある。そして、Webデザインとして無理がある場合は、解決策を早めに提示すべきだ。


【1】細分化して理解する



■【ケース2】デザインが気に入らない→クライアントの嗜好・ブランド理解の欠如

前回のコラムでも触れたが、戦略フェーズに含まれるブランドアイデンティティをふまえずに、コンテンツしか見えてない場合、コンテンツを最大化しすぎて、ブランドアイデンティティから外れてしまうことがある。それがこのケースだ。

例)
B社のサイトの魅力をアップするために、キャンペーンサイトとしてサテライトコンテンツをアップすることになった。
B社の魅力は、愛着・親しみ・顧客志向でありながら、キャンペーンサイトは高級感のあるコンテンツでありソリッドなデザインが求められた。制作サイドはキャンペーンコンテンツに最適なデザインを選択しソリッドなデザインで、一見すると人を選ぶぐらいの高級感を醸し出した。ここでクライアントに提出すると……NG。

トータルなブランドマネジメントは、コンテンツの見せ方よりも上位の判断基準だ。そのブランドアイデンティティを理解したビジュアルデザインをつくることが重要で、コンテンツとの差異があった場合は、最適な落としどころを見つけることが、ビジュアルデザインの解となる。


【2】CIやVIはコンテンツよりも上位の概念になる



■【ケース3】伝えたいポイントの優先順位が違う→戦略的プライオリティ理解不足

コンテンツの優先度は、ユーザーシナリオに大きく依存する。サイトの目的をどうやって達成するか、というプロセスを理解していないと短絡的なビジュアルになってしまうことがある。これがこのケースだ。

例)
C社は高級商材を扱う商品サイトを立ち上げた。当然値段が高いため、サイトを見た後に資料請求をしてもらい、見込み顧客として人的な営業をかけるというプロセスがある。サイトの役割は資料請求による見込み顧客の獲得であるため、内容よりもとにかく資料請求をわかりやすく大きくいつでも目立つように配置した。ここでクライアントに提出すると……NG。

サイトの目的が資料請求をしてもらうことだとしても、ユーザーにサイトを回遊してもらい、内容を吟味してもらったり十分な知識を得てもらったりしながら、最終的に資料請求に落とし込むというシナリオを想定していた場合、資料請求ボタンが内容に勝ってしまってはいけない。サイトの内容を魅力的に見せつつ顧客に満足を与えたうえで資料請求を行わないと、人的な営業コストがかさむだけでまったくいい影響を及ぼさない。むしろまちがえて押してしまい、フォームの達成率をひたすら下げる結果になる。


【3】サイトシナリオを理解する



次回、1月28日公開の第6回となる後編では、ケース4とケース5について考察する。



■デザイン現場の目線で“リアルに語る”実践! WEBビジュアルデザイン バックナンバー

第1回「デザインプロセスの落とし穴(前編)」
第2回「デザインプロセスの落とし穴(後編)」
第3回「戦略からビジュアルに落とし込む(前編)」
第4回「戦略からビジュアルに落とし込む(後編)」


FOURDIGIT Inc.

期待以上の結果を継続的にご提供することが FOURDIGIT Inc. のミッションです。数多くのプロジェクトで培った戦略への理解力、デザイン、技術力は多数の企業様に評価をいただいております。

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