mixiがFacebookに対抗するために必要なたったひとつのこと

mixiがFacebookに対抗するために必要なたったひとつのこと
2011年2月7日
TEXT:小川 浩(株式会社モディファイ CEO 兼クリエイティブディレクター)

mixiとFacebookは、その成り立ちも、サービスそのものもよく似ている。

(株)ミクシィは日本の最高学府である東京大学出身の笠原社長が創業、米Facebook社は米国の最高学府であるハーバード大学出身のマーク・ザッカーバーグCEOが創業、と、どちらも学生ベンチャーだ。サービスも、原則としてクローズドなコミュニティサービスであり、設立当初はmixiは完全登録制、Facebookは大学のメールアドレス(.edu)を必要とする登録制と、強力な排他性を武器として成長してきた。

両者のもっとも大きな違いは、mixiは匿名もしくは実名での登録を必ずしも必要としないが、Facebookは実名以外は許さない、ということだ。これはたとえていえば日本人が信仰心においてあいまいで、神仏は信じるかもしれないが、どの神というように特定しなくて済み、多くの米国人が(あるいは世界中のたいていの国がそうであるように)キリスト教という唯一絶対の神を信仰しているという違いにも似ているかもしれない。

mixiに対する居心地の良さは、クリスマスを楽しんだ後で神社にお参りしても許される、あいまいな状態にあることの良さにも通じているような気がする。

しかし、Facebookはそうした二面性を許さない。実名での登録は必須であり、オンラインとオフラインでの異なるペルソナの存在を原則として排除しようとしている。リアルな人間関係をネットに持ち込む、という理念は同一なmixiとFacebookだが、mixiはあいまいさを残すことで居心地の良さを担保したものの、そのおかげでリアルとバーチャルの一体化はできない。一方Facebookはあいまいさを許さないことで、これまでは日本人には敷居が高いように思われてきたが、逆にリアルの人間関係を完全な形でネットにも反映させることに成功しつつある。

mixiは、匿名か実名かは関係なく、そのネットワークの中にある人間関係、すなわちソーシャルグラフの密度にこそ意味がある、という。それは一理あるが、mixiの2200万人のユーザーの中にあるソーシャルグラフは、ひとつひとつがあまりにも小さすぎる。僕は元々mixiのようなSNSはカラオケルームで仲のよい友人と歌うこと、Blogは駅前などで歌うストリートミュージシャンのようなもの、と表現してきた。mixiは小さなカラオケルームを無数に抱えた巨大なカラオケチェーンと同じだ。居心地はいいが、どんなに歌がうまくても聞いてくれるのは少人数の友人だけだ。

しかし、Facebookは大きなパーティーに参加することに似ている。パーティー会場でカラオケをすれば、それを多少迷惑に思う人もいるかもしれないが、もしかするとあなたを歌手としてデビューさせる力を持つ人もいるかもしれない。そこがFacebookとmixiの違いだ。

mixiが今後Facebookと対抗するには、実名制にシフトするか、匿名制を長く維持するかのどちらかに覚悟を決めねばならない。実名制にシフトしなければ、Facebookが世界中の企業を引きつけ始めているように、マーケティング用のプラットフォームというセクシーな魅力を備えることはできない。逆に匿名制を維持することで、Facebookにはない新たなビジネスモデルを開発することができるかもしれない。

いずれにしても、現状のようにどっち付かずでいることは非常に危険だ。

話は変わるが、日本のインターネットビジネスの創成期を支えた立役者のひとりである、元ネットエイジ(株)(現ngi group(株))の創業者、西川潔氏が、新たにスタートアップベンチャーを支援するビジネスとして、新生ネットエイジ(株)を立ち上げた。Twitter上でも話題になっているが、日本の若い起業家の卵たちの励みになることだろう。



mixi




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[筆者プロフィール]
おがわ・ひろし●株式会社モディファイ CEO兼クリエイティブディレクター。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)、『仕事で使える!「Twitter」超入門』(青春出版社)、『ソーシャルメディアマーケティング』(ソフトバンククリエイティブ/共著)などがある。
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