続・思考するWEBディレクション 第1回「Webディレクターが意識すべき目線(1)」

web creators/MdN Design Interactive共同企画 サイト制作のための実践マネジメント

続・思考するWebディレクション 第1回「Webディレクターが意識すべき目線(1)」


2011年4月19日
TEXT:文=田口 真行(株式会社デスクトップワークス)

Webサイトを制作するうえで欠かせないのが、Webディレクターの存在だ。クライアントへのヒアリングや提案、スケジュール設定、制作物のクオリティ管理など、業務領域は多岐にわたる。ここでは、すぐれたクオリティを発揮するWebディレクターとなるために必要な知識や考え方などを紹介していく。


今回はWebディレクターにおけるディレクションクオリティを左右する「目線」について取り上げる。クライアントの依頼に対して、Webサイト制作のプロとして接するWebディレクター。その立場において「目線」の持ち方ひとつで、進行上発生する問題が回避され、最終的なWebサイトのクオリティを変えることを理解してほしい。


■「目線」の持ち方ひとつで、Webサイトのクオリティが左右される

Webディレクターが意識すべき目線は、クライアント側と制作側のふたつに大きく分けられる【図1】。制作側への目線は、あらかじめ決定した仕様に基づき、制作パートそれぞれへの指示とクオリティ管理が主となるため、結果的に大きな影響を与えることは少ない。しかしクライアント側への目線は、形に見えない段階から創造していく工程に影響するため、Webサイトを大きく左右する。

そもそもWebサイトはキックオフ段階では形がみえていないケースがほとんどだ。漠然としたイメージをクライアントが持っていることはあるが、具体的なコンセプトや仕様設計が明確になっているわけではない。だからこそWebディレクターは、それを具現化するためにヒアリングを行い、要件定義をしたうえで企画を立案しプレゼン提案を行う。そこでの指針はすべて、Webディレクターの目線の持ち方に依存してくる。

この認識をまちがうと、Webサイト自体が異なる方向に進んでしまう。クライアント側の担当者との関係がうまくいっていればOKというわけではなく、もっと別次元で案件進行をとらえていくことがWebディレクターには必要だ。


【図1】Webサイト制作案件におけるWebディレクターの立場


■Webディレクターが意識すべき「目線」

そもそもクライアントがWebサイトを手段として選ぶ理由の背景に「目的」が存在している。たとえば商品やサービスの販売、企業の広報活動やブランディングなど。クライアントが掲げる「Webサイトを手段として達成したい目的への目線」――ここが最初に意識すべき目線になる。

次に重要なのが「Webサイトにアクセスする利用者(ユーザー)の目線」。どのようなWebサイトにも共通していえることだが、ユーザーに利用されることでWebサイトははじめて成果を生む。言い換えれば、クライアントの目的を達成するのは、ユーザーだということだ【図2】。

Webサイトを手段として達成したい目的への目線と、Webサイトにアクセスする利用者(ユーザー)の目線。言葉で整理すればごく基本的なことで、当然のことのように思うかもしれない。しかし、このふたつの目線は案件が進行すればするほどブレてしまいがちになポイントといえる。Webディレクターが意識すべき目線として取り組むことが必要だ。


【図2】クライアント側に対して意識すべき目線


■クライアント側担当者への配慮にも注意が必要
どんなに経験を積んだWebディレクターでも、このポイントを外しやすい理由として、クライアント側の担当者への目線ばかりを配慮してしまう「担当者への誤った気遣い」がある。本来主張すべきポイントを誤ったり、制作進行を導くことができなくなってしまうことは、Webディレクターの責務から外れる。担当者への配慮の目線と、Webサイトを正しい方向にもっていくための目線を混在してはならない。

もちろん、クライアント側の担当者がWebサイト制作案件をディレクションするプロであるならば、問題は起きないかもしれない。しかしたいていの担当者はその企業が行う事業のプロであって、Webサイト制作案件をディレクションするプロではない。案件進行においてはプロであるWebディレクターが正しい方向を示し、ブレない目線をもたない限り、案件の進行は濁ってしまうのだ。

次回はクライアント側に向けたふたつの目線について、具体的な取り組み方について解説を行う。





田口 真行(株式会社デスクトップワークス 代表)

アルバイト先でWebデザインを経験、1999年に独立。フリーランスのWebディレクター・プロデューサーとして、企業Webサイトの企画、デザイン、構築、運用まで全面的なプロデュースを行う。

株式会社デスクトップワークス




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