続・思考するWEBディレクション 第2回「Webディレクターが意識すべき目線(2)」

web creators/MdN Design Interactive共同企画 サイト制作のための実践マネジメント

続・思考するWebディレクション 第2回
「Webディレクターが意識すべき目線(2) ヒアリング」


2011年5月18日
TEXT:文=田口 真行(株式会社デスクトップワークス)


※本記事は「続・思考するWebディレクション 第1回「Webディレクターが意識すべき目線(1)」の続きになります。第1回をお読みでない方は第1回からお読みください。

Webサイトを制作するうえで欠かせないのが、Webディレクターの存在だ。クライアントへのヒアリングや提案、スケジュール設定、制作物のクオリティ管理など、業務領域は多岐にわたる。ここでは、すぐれたクオリティを発揮するWebディレクターとなるために必要な知識や考え方などを紹介していく。


今回は、Webディレクターがヒアリング段階で意識すべき目線について取り上げる。

ヒアリングとは、Webサイト制作案件における工程の中で、発注者サイド(クライアント)の要件を定義をするために行う。「クライアントは何を望んでいるか」「クライアントが抱える課題は何か」「課題をクリアするための施策は何か」「施策として相応しいコンテンツは何か」といった点に留意して進めるのが、一般的なフローだ。

ヒアリングとは、相手に「聞く行為」自体を指すのではなく、相手が言葉として表現できない部分を含めて情報を「引き出す行為」である。まずはこの点を理解しよう【図1】。


【図1】ヒアリングは相手が言葉として表現できない部分を含めて情報を引き出すように心がける


■ヒアリングの精度

たとえば「商品を売りたい」というクライアントの要望は、言葉としてみれば一見整理された要件に感じられるかもしれない。打ち合わせの席であれば思わずメモを取り、それですべてを把握した気になってしまいそうな内容だ。しかし、実際のところ、この情報だけでは可能性の幅を絞り込むことができない。要件定義を前提としたヒアリングの精度としては低く、この情報だけではクライアントを満足させるベストマッチな企画を立案することは難しい。

ヒアリングの際に相手が一方的に発する情報は、最初のきっかけ(エントランスワード)でしかない。精度の高いヒアリングとは、それをひとつの切り口として様々な角度から質問を投げかけて、会話のキャッチボールを行いながら、より深いところにある情報を引き出す必要がある。

これは情報のもたらす可能性の幅を狭めることで精査して、より明確な定義付けをするための手法であると同時に、クライアント側に企画提案する際のブレをなくすための情報帯域の制限ともいえるだろう。ヒアリングの際にぜひ意識してほしい重要なポイントである【図2】。


【図2】ヒアリングで得られる情報を絞り込むことで可能性の帯域幅を狭め、クライアントに企画提案する際のブレをなくす


■工程の垣根を越えた、柔軟なヒアリング

さらに高度なヒアリング手法としてご紹介したいのが、ヒアリング~要件定義~企画立案までの工程をワンストップで進めるテクニックだ。

Webディレクターの中には、ヒアリング段階はヒアリング行為のみに徹底し、要件定義段階では要件定義のみに注力するといった、ある種“生真面目”なパート分けを優先してしまう人も多い。パート分けによって案件進行はスムーズにいくと誤解するかもしれないが、逆にヒアリング時の情報共有が不十分になることもあるため注意が必要だ。

工程の垣根を超えた柔軟なディレクションを心がけることで、「それは思いも付かなかった!」「その方法もいいね!」「それだったら、こんなこともできるよね!」といった気づきを、ヒアリング段階からクライアントに与えることもできる。それにより、見落としがちな些細な話題なども拾えるようになり、結果的にヒアリングで引き出せる情報の量も精度も多角的な側面から高まっていくのだ。

次回は、クライアントが思わず手を伸ばしたくなる企画を生み出す「勝つプレゼン!」を意識したヒアリングの考え方について取り上げる。



■サイト制作のための実践マネジメント「続・思考するWebディレクション」 バックナンバー

第1回「Webディレクターが意識すべき目線(1)」



田口 真行(株式会社デスクトップワークス 代表取締役)

アルバイト先でWebデザインを経験、1999年にフリーランスクリエイターとして独立。2006年に法人化。株式会社デスクトップワークス(http://d-w.jp/)を設立。企業Webサイトの企画、設計、制作、運用まで含めた全面的なプロデュースを行う。


株式会社デスクトップワークス http://d-w.jp/
田口 真行氏のtwitter http://twitter.com/webdirection/
※本連載に関するご質問はお気軽にどうぞ


■デスクトップワークスが手掛けた案件のご紹介

【So-net 旅行サイト「桜特集」】

2011年3月に公開されたキャンペーンサイト。全国の桜開花情報と天気情報のデータベース、さらにTwitter上で話題の桜情報と連動。Twitterを通じてオンライン上のお花見に参加できるコンテンツとして話題に。既存の広告媒体や宣伝手法に頼ることなく、通常の特集ページと比較してコンバージョン効果が高く評価されました。
http://www.so-net.ne.jp/

・クライアント:ソネットエンターテイメント株式会社
・企画設計制作:株式会社デスクトップワークス
・プランニング&Webディレクター:田口 真行
・Webデザイナー:金子 夕紀
・Flashアニメーション:清水 勇輝
・マークアップ:木村 香織
・システム:高井 歩




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