Mac OS X Lionの誕生で予測されるOS戦争の帰結(後編)

Mac OS X Lionの誕生で予測されるOS戦争の帰結(後編) 2011年8月1日
TEXT:小川 浩(株式会社モディファイ CEO 兼クリエイティブディレクター)

※本記事は「Mac OS X Lionの誕生で予測されるOS戦争の帰結(前編)」のつづきになります。前編をお読みでない方は、前編からお読みください。

Mac OS X Lionを二代目MacBook Airにインストールしてからしばらく経つが、PCの挙動が若干不安定になり、タイピングスピードに変換速度がついてこられなくなった。もともと非力な二代目MacBook AirにMac OS X Lionは重すぎるのかもしれない。

とはいえMac OS X Lionを使っていると、逆スクロールといった操作面でのインターフェイスだけでなく、データファイルの扱いそのものにiOSへの激しい接近があることがよくわかる。たとえば、Mac版のPowerPointともいえるKeynoteは数分おきに自動でファイルを保存している。これまでの挙動であれば、AというファイルをベースにBというファイルをつくろうとする際、Aのファイルを一定時間修正したのちBとリネームして保存すればよかったが、Mac OS X Lionベースでは先に複製をつくってからリネームしないとどんどん自動的に修正を上書き保存していく。Aというファイルを保全したまま、修正を加えたバージョンとしてBを作成したいという用途に反する挙動に、かなり戸惑った。

余談だがMac OS X Lionに変えてからKeynoteがクラッシュすることが多くなり、都度再起動しなければならないのには閉口する。とはいえ、そのたびにファイルがそのまま再現されることにも感動する。

また、Macの公式ブラウザであるSafariも同様で、Mac OS X Lion上ではとにかくOSとの密接な関係性を感じるようになった。さまざまなトラックパッドのジェスチャーに100%対応しているのは当然とはいえ、やはりデータの持ち方がきわめてiOSライクだ。たとえばトラックパッドを2本指でダブルタップすれば画面にクローズアップするので、メールなどを書いているときにとても便利だ。「PCを使う=Webを使う」、すなわちブラウザを使うのが現代のコンピューティングであり、Mac OS X Lionが採用したiOSライクのインターフェイスをフルに体感することができるのは、Safariを使っているときだ。

僕は最近はFirefoxを使うことが多かったが、Mac OS X LionベースになってからはSafariに戻っている。iOSがApp Store公認アプリしか入手できず、Appleに強くコントロールされたコンピューティング環境であると同じように、OSがバージョンアップするたびに大きく操作感に差を付けられてしまっては、ほかのブラウザやソフトウエアはたまったものではない。こうなると、新OSの機能対応の開発情報をあらかじめ受け取るためは、Mac上のApp Store経由での配布を交換条件とされてしまっても、アプリケーション開発者としてはノーと言えなくなるだろう。

つまり、ビジネスモデルもiOS化するのである。

この動きは、Windowsにも波及することはまちがいないし、GoogleもまたChrome OSにおいて同様の動きをしてくるだろう。ただしスマートフォンのシェアに引きずられて環境を激変させていく世界のコンピューティングは、徐々にAppleとGoogleの二強によって定義されていくことになるかもしれない。

Facebookがブラウザやスマートフォンをつくるという噂をつねに立てられているのも、こうした傾向を反映してのことなのだ。



Mac OS X Lion



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[筆者プロフィール]
おがわ・ひろし●株式会社モディファイ CEO兼クリエイティブディレクター。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)、『仕事で使える!「Twitter」超入門』(青春出版社)、『ソーシャルメディアマーケティング』(ソフトバンククリエイティブ/共著)などがある。
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