ユーザーの“慣れ”を巧みに利用したFacebookの新機能

ユーザーの“慣れ”を巧みに利用したFacebookの新機能 2011年10月03日
TEXT:小川 浩(株式会社モディファイ CEO 兼クリエイティブディレクター)

F8はFacebookの開発者向けのカンファレンスであり、Facebookが新たな戦略を発表するときにだけ開催される、不定期なイベントである。2011年は米国時間9月22日に催された。

前回のコラムで紹介したが、今回のF8の発表の目玉は「タイムライン」と呼ばれる、新しいプロフィール公開機能だった。これは自分の過去・現在・未来にわたる画像や行動を共有していくと同時に、好みの音楽やゲームなどをリアルタイムでシェアしていくソーシャルアプリを備える新しいアプリケーションだ。Tumblrに酷似した外観をもつ。

さらに、「いいね!」ボタンに本を読む、映画を観るなど行動に応じた意味付けを行えるような機能向上が図られた。従前の「いいね!」ボタンには、押す/押さないという二元的な意味付けしかなかった。つまり興味があるかないか、という反応をユーザーは行う。今回の「いいね!」の機能拡張は、ユーザーがWeb上で行う積極的な行動に対して、多元的な意味付けを行うことを許すものだ。

この機能拡張は、一見複雑である。「いいね!」ボタンをクリックするだけの簡単な作業であるから、これまでユーザーはこの機能を受け入れてきたのだが、その行為に複数の意味が加わるということは、作業ステップが増えるということであり、ユーザーにとっては煩わしい作業になりかねない。ただし、「いいね!」がここまで世界的に普及し、かつmixiチェックやGoogle +1ボタンのような類似サービスが登場したことによって、ユーザーは相当にこうした機能に“慣れた”のだ。

AppleもiPhoneやiPad、あるいはMacBookのフリック操作や指による直接的な操作(=NUI)を導入するにあたり、最初は2~3の操作しか実装しなかった。ユーザーがそれらに慣れてきたころに、次々と新しい操作手順を追加した。Facebookの試みはこれに倣うものだろう。

実際、F8は世界中の8億人が利用するサービスの新機能や未来に関わる情報をいち早く知ることができる場であり、開発者のみならず、多くの一般ユーザーの注目を集めるイベントになっている。AppleやGoogleも同様のイベントを不定期に行っており、世界中の耳目を集めているが、F8はいまや、ソーシャル化が加速するインターネット全体のトレンドを知る、Web業界では最大のイベントになりつつある。



F8開催時のMark Zuckerberg氏



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[筆者プロフィール]
おがわ・ひろし●株式会社モディファイ CEO兼クリエイティブディレクター。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)、『仕事で使える!「Twitter」超入門』(青春出版社)、『ソーシャルメディアマーケティング』(ソフトバンククリエイティブ/共著)などがある。
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