ON HTML5 FIELD 第7回(後編)

連載
ON HTML5 FIELD 【第7回】(後編)Webディレクターの現場とHTML5
2011年12月22日
TEXT:村岡正和

HTML5は発展途上技術であるが故に安定性不足、開発者不足、それに伴う開発コスト増といった問題も抱えている。Webディレクターは、こういった事情を踏まえて採算に合うHTML5制作案件を受注していかなければならない。そのためには「HTML5で何ができるか」を正しく認識する必要がある。

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■HTML5制作は下手をすると「できない」
ニュースで語られるHTML5は、いいことずくめだ。発展途上技術であるが故の安定性不足、開発者・ノウハウ不足、それに伴う開発コスト増など現状の問題についてはほとんど語られていない。そのためクライアントは「Flashと同じことができる」「PCもスマートフォンも同じことができる」「ホームページと同じだから簡単で安価」そんな意識でHTML5を捉えている。

そんな中で、Webディレクターは採算に合うHTML5制作案件を受注していかなければならない。そのためには「HTML5で何ができるか・できないか」についての正しい認識と、開発中、開発後に発生する可能性があるリスクについての認識が必要だろう。それに基づく開発コストの積み上げももちろん必須だ。

まず、HTML5を「なんでもできる最新インターネット技術」と訳すのに何が間違っているかを即答できなければ話にならないだろう。あえて筆者の持つ答えは言わないでおく。Webディレクター、技術営業担当などディレクションに関わる諸氏には、HTML5のアウトラインを理解していく中で答えを導きだしてほしい。HTMLとは何か、Webとは何か、について基礎的な知識が身に付いていれば難しいことではないだろう。

HTML5では、技術の深部にクリティカルな問題が潜んでいる場合がある。提案時点で安易に「できます」と即答したことが、どうあがいても「できない」ということもあり得るのが現状だ。具体的には以下のようなケースをいくつか聞いている。

「Android標準のWebブラウザを(連載第4回で紹介した)HTML5チェッカーで評価してOKと出たので、その機能を使いたいというクライアントの要望に応えた。しかし実際に制作してみるとその機能が非常に不安定で、とても使い物になるレベルではなかった」

このようなケースに対応するためには、クライアントの依頼内容・提案内容を回答する前に技術レベルまで落とし込み、実際の環境で安定動作するかを検証してみるのが一番良い。筆者はそうしている。Androidの場合は機種・バージョンによる標準Webブラウザの動作の違いがあるので、検証した端末、OSバージョン、Webブラウザでのみ動作を保証するという条件も合わせて提示する。さらに、提案段階で具体的な検証作業が発生するコストについての説明も重要だろう。

現時点でのHTML5制作はFlashに比べてリスキーだ。HTML5自体が発展途上で実装が安定していないこと、Flashに比べて開発ノウハウが少ないことが原因として挙げられる。リスキーな案件で採算をとろうと思ったら、高く見積ることも必要だろう。その場合、見積根拠を技術的なバックグラウンドを含めてクライアントに説明できるかどうかが、ディレクターの腕のみせどころとなるだろう。正しいHTML5の理解とバズワードとしてのHTML5を活用しつつ、案件に臨んでいただきたいところだ。

Webディレクターにとって、制作技術に対する深い理解は必要ないと筆者は考えている。もちろんあればそれに越したことはないが、他にやるべき仕事が沢山あるのでそちらに専念したほうが良い。しかしHTML5時代には上記のようなことがあるので、Webデザイナー、Webプログラマーとより密に連携をとり、技術的な観点から案件を分析することが必要だと考えている。

次回は今までの連載の話題に関連したオススメのツールやサイトを特集するつもりだ。




[筆者プロフィール]
村岡正和(むらおかまざかず)●神戸でITシステム開発、コンサルティングを手掛けている。HTML5-WEST.jpの代表として関西でHTML5関連の話題を盛り上げる活動を行っているほか、さまざまなコミュニティ活動に関わっている。
HTML5-WEST.jp:http://www.html5-west.jp/
Twitter:http://twitter.com/#!/bathtimefish



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